ナタリー PowerPush - the mornings
ヒャッハー! 狂ったオルタナシンデレラ 1stアルバム「SAVE THE MORNINGS!」
自分たちの音楽がメシ食えるもんじゃないってのはわかってた
──the morningsの場合、ものすごく精力的に活動しているのでそういうイメージからは遠いですが、会社勤めをしながらのバンド活動っていうのは、一般的には“趣味”と呼ばれるものですよね。
ポンタ うーん?
ジュンヤ いや、世の中的にはそういう捉え方をされちゃうと思うんですけど、自分たち的にはそうじゃないです。
ラリー 趣味だったらやってないかも。
ポンタ なんか、バンドがないとどうにもなんない。ライブがないと土日とかどうしていいかわかんなくて、結局ライブハウスに行っちゃったりするし。
ジュンヤ なんか使命みたいな。僕はそういうのあるかもしれない。カッコいい曲作らなきゃとか、そういう強迫観念みたいのあります。
──じゃあ皆さんの人生の中では、the morningsがメインで、仕事はそれを支えるためのもの?
ラリー 完全にそうですね。バンドを続けるためにみんな就職したと、俺は勝手に思ってる。
けいか いや、私はそうじゃないけど……。
ポンタ 俺もそういうわけではなかったな。
──ははは、意見が分かれてますけど(笑)。でも4人にとっては就職もするしバンドもやるしっていうのは別に普通のことなんですね。
ポンタ まあバンドを辞めなきゃいけない理由もないし。だからって大学卒業してプータローになる理由もないし。少なくともバンドはずっと続けるだろうなって確信があったけど、まあ自分たちの音楽がメシ食えるもんじゃないだろうなってのはわかってたんで。
ジュンヤ あの、売れようと思ってるバンドって、多少曲がるじゃないですか、音が。売れるために自分たちを曲げたりとかもっとウケるようにとか考えなきゃいけないなら、そんなのクソくらえだし、やっぱり俺は自分が本当に好きなカッコいいと思うものをやりたい。メジャーの売れてるバンドとかがロッキング・オンとかで「世界観が……」とか言ってる傍らで、そんなこと考えずに野生でドラムをぶっ叩いてるみたいな、そういうのがいいなって思って。
──なるほど。バンド一本でやってる人は売れなかったら音楽を辞めなきゃいけないから、売れることを考えるようになって音楽が曲がっていく。それがないのがthe morningsの強みだと。
ジュンヤ そうそう、そういうことです。
──お話を伺っていると、いい環境で活動できているし、自分たちの音楽にはすごく自信を持っているように見えますね。
ジュンヤ まあ完璧じゃないけど、ほかの誰かにできないことをやってるっていう意識はあります。
けいか でも自信っていうのも最初からあったわけじゃなくて。働きだして、ライブたくさんやるようになって、求められてる感じがだんだんすごい出てきて。そうやってバンドのキャラが立ってくると、いろんな人からライブに出てと誘われるようになったんですよね。ノルマがなくてギャラが出るものも増えてきて、義理で誘ってるんじゃないんだな、穴埋めじゃないんだな、ライブが観たいから声をかけてくれてるんだなっていうのも伝わるし。こんな好き勝手にやってても支持してくれる人がいるっていうのが、自信につながった気がします。
──学生のときはそういう感じじゃなかった?
ラリー 自信はなかったよね。ライブも超内向きだったし。俺すごい覚えてる。ステージに背を向けてて。
ジュンヤ MCなんてもう葬式ですよ。低い声でぼそっと「ありがとうございました……」って。今みたいに「フーー!!!」なんて言ってなかったからね。
けいか でも今日言われるまで、確かにこんなに自信満々なバンドって珍しいのかもって思った。気付いてなかった。当たり前だと思ってた(笑)。
昔から叫ぶのが好きだったんです
──音楽自体の話も訊いていきたいんですけど、the morningsの曲は変拍子を多用していて構成も複雑で、しかもとことんアッパーで。人は、何がどうなると、こういう音楽をやるようになるんでしょうか?
ジュンヤ なんなんですかね。夜中のテンションとかじゃないっすか(笑)。
全員 ふははは(爆笑)。
ポンタ 曲の根幹を作って全体の舵取りをするのはジュンヤなんですよ。
──曲を作るときのイメージみたいなものはありますか?
ジュンヤ 昔から叫ぶのが好きだったんですけど、あるときに僕とポンタの歌が絡む、ちょっと重めのささくれた速いやつ、みたいな感じの流れができてから「こういうの俺らハマるんじゃん?」「これ新しい音楽できたやんけ!」ってなって。今はとにかく新しいことをやらなきゃって思ってて、曲作りのときはやってない方向をいつも探してる。
──でも新しければいいというものでもないですよね。
ジュンヤ そうですね。いろんな曲のネタはあるんですけど、the morningsでやれる曲ってのは実はすごく少ないんです。このバンドにハマるものはすごい狭くて、でもその向こうに、すごい広い世界があるっていうか。
ポンタ ジュンヤが持ってくるのはいつも意外なネタが多くて。で、それに合わせて僕は歌うんですけど、そこではやっぱりどうすればたくさんの人がいいと思ってくれるかってことを考えますね。シンセも弾くし歌も歌うし。直感的に、こうフックみたいなものを探しつつメロディ考えてみたりとか。そこの掛け合わせが僕らのバランスのいいところじゃないのかなって思う。まあ得てしてうまくいかないですけど(笑)。
──ジュンヤさんが作ってくる楽曲は天才的すぎて普通の人には伝わりにくいから、ポンタさんがポップな要素を追加していくということですかね。
ジュンヤ いや、いや、違います。僕は絶対みんながカッコいいと言うだろうと思って作ってます!
ポンタ 僕はそれを後押しするために、フックを作るっていう意識で。ジュンヤが出してくるものがthe morningsの核になってるのは間違いないので、それをどれだけ彩れるかですね。
──その結果として、あの異常なほどのテンションが生まれるわけですね。
ポンタ もともと個人的にはパンクとかハードコアが好きだった少年時代を過ごしてたので、the morningsでもライブでバーって暴れたりとかできるようになったのはうれしかった。やたらジャンプしたり、ギターぶん投げてみたりとか、ドラムにダイブしたりとか。お客さんでもそういうの観てテンション上がる人もたくさんいるだろうから。
CD収録曲
- opening act
- 冤罪テンプテーション
- amazon surf
- マッドチアガール
- 悪いお兄さん
- 秋芳洞
- マッドダンサー
- drug me
- chief
- 冤罪マッドサーフ remixed by Fragment(術ノ穴)
the mornings(もーにんぐす)
2003年結成。ワタナベシンペイ a.k.a. ポンタ(Vo, G, Syn)、キシノジュンヤ(Vo, G)、ナカガワ"ラリー"シンゴ(B)、けものけいか(Dr)から成る4人組。全国狭しとところかまわずライブを行い、自主企画を連発している東京オルタナティヴ界期待の若手。2008年にARTLESS NOTEとのスプリット「ARTLESS NOTE×the mornings」、2009年には「earth.ep」を自主制作音源としてリリース。VOID COMMUNITYからリリースされたDEAD KENNEDYS公認トリビュートアルバム「GET DRUNK MORE FUCK」、SEBASTIAN X、SuiseiNoboAzら東京の若手新世代バンドが集結した「Tokyo New Wave 2010」などのコンピレーションにも参加している。2011年1月、待望の1stアルバム「SAVE THE MORNINGS!」をリリース。