ナタリー PowerPush - MOONBUG
神と呼ばれたマッシュアップ集団、まさかのメジャーリリース
Novoiski、Nylonizm、Matsumoto Hisataakaa、Dub Master XからなるサウンドクリエイターチームMOONBUG(ムーンバグ)が、国内アーティストのリミックスを収めた公式アルバム「REMIX ASSAULT」をソニー・ミュージックダイレクトからリリース。この作品ではユニコーン、木村カエラ、the HIATUS、ストレイテナー、チャットモンチー、Base Ball Bear、m-flo、ムック、BEAT CRUSADERS、スーパーカーの人気曲がロッキンでエレクトロなダンスミュージックに生まれ変わっている。
これまでニコニコ動画などの動画サイトやSoundCloudで公開してきたさまざまなリミックスやマッシュアップにより、ネットユーザーの間で「マッシュアップ神」とも呼ばれ多大な知名度を持つに至ったMOONBUG。しかしまだ彼らについての情報は少なく、多くの部分が謎に包まれたままだ。ナタリーでは今回、その中心人物であるNovoiski(ノボイスキ)への取材を敢行し、音楽的なルーツから今後のことまでさまざまな疑問をぶつけてみた。
取材・文 / 橋本尚平
BEASTIE BOYSのアカペラMP3がすべての始まり
──これまでどんな音楽を聴いてきたんですか?
1980年代にKISSに出会って、そこから高校3年生ぐらいまでずっとメタルとハードロックオンリーでした。最初はBON JOVIとかポップなところから入って、どんどん過激になっていってスラッシュメタルにハマって。ほら、今日もSLAYERのTシャツ着てるんですけど(笑)。大学生になったら視野が広がって、オルタナ、グランジ、メロコアとかいろんな音楽をまんべんなく聴くようになりましたね。その中で僕が一番影響を受けたのはシューゲイザーとポストロック。MY BLOODY VALENTINEとSTEREOLABを2大神として崇めてて。で、同じ頃にコンピュータを使って遊びで曲作りを始めました。
──大学生の頃に作っていた音楽はSTEREOLABに影響されたものだったんですか?
ああ、モロです。あとはTORTOISEみたいな音響派とか、BOREDOMSとかみたいなのを。
──MOONBUGの作風からはかなり遠い音楽ですね。
ぜんぜん違いますね。もちろんリミックスというものがなんなのかは中学生の頃から知ってはいたんですが。いろんなシングルのB面に入ってたし。それ聴いて、子供心にグッときてましたよ。でも作ろうとは一切思わなかったです。
──リミックスやマッシュアップを始めたきっかけは?
以前BEASTIE BOYSのホームページで、アカペラのMP3を期間限定で配布してたんですよ。BEASTIE BOYSが大好きだったから「なんて素晴らしい企画なんだ!」って言ってそれを漁りまくって。同時期にPerfumeも好きだったから「Perfumeの上にラップを乗っけたら面白いかも」って思いついたのが始まりです。そのとき僕はアパレル業界で働いてたんですけど、しばらくして仕事辞めて暇になったから、実際にそれを作り始めたという。
Perfumeやcapsuleにロックの息吹を感じた
──2 MANY DJSに端を発した海外でのマッシュアップブームとは関係なく、自分でその手法にたどり着いたんですか。
まあ、マッシュアップっていう言葉自体はLINKIN PARKとJAY-Zのアルバム(「Collision Course」)で知ってたんですけどね。2 MANY DJSって名前はだいぶ後になって知りました。だから実際に曲聴いたことないんですよ。
──じゃあ、もしBEASTIE BOYSのサイトでアカペラをダウンロードしていなかったら、今のような音楽自体を……。
うん、作ってなかったんじゃないかな。
──ダンスミュージックはそれほど聴いていなかったんですか?
あ、当然THE CHEMICAL BROTHERSとかUNDERWORLD、THE PRODIGYはデビュー以来ずっと大好きですよ。今こういう音楽をやってるのはそこからの影響だと思います。遊びでメタルのバンドをやったこともあるんですけど、でもイチからメンバーを集めてやるよりも、自分1人で成立するのであれば全部自分でやりたいなって思いが僕の中にあったんやと思うんですよ。昔からEMFとかPOP WILL EAT ITSELFとかを聴いて打ち込みやサンプリングを使った音楽は吸収してるから、それを自分がすることに抵抗はなかったし。
──マッシュアップ制作のきっかけになったというPerfume×BEASTIE BOYSのマッシュアップを聴くと、これが最初の作品だということにビックリするんですけど。
まあ、こういうのは原曲ありきですからね。中田(ヤスタカ)さんの作る曲がすごすぎますよ。
──いやいや、初めからこんなに完成度が高いものを作れるのはすごいと思いますよ(笑)。
中田さんの作る曲はエレクトロに見せかけて実は展開がすごくロックなんじゃないかと。それがロックやメタルのファンにPerfume好きがたくさんいる理由だと思ってるんですけど。最初にマッシュアップをやってみたとき、Perfumeやcapsuleにロックの息吹を感じたから、これをよりロックにしたいなって気持ちになったんですよね。
収録曲(曲名 / アーティスト)
- INTRO
- HIT IN THE U.S.A.(MOONBUG Remix) / BEAT CRUSADERS
- Ring a Ding Dong(MOONBUG Remix) / 木村カエラ
- Melodic Storm(MOONBUG Remix) / ストレイテナー
- come again(MOONBUG Remix) / m-flo
- superblock(MOONBUG Remix) / the HIATUS
- pierrot +(INTERLUDE)
- シャングリラ(MOONBUG Remix) / チャットモンチー
- Strobolights(MOONBUG Remix) / スーパーカー
- ELECTRIC SUMMER(MOONBUG Remix) / Base Ball Bear
- ニルヴァーナ(MOONBUG Remix) / ムック
- ヒゲとボイン(MOONBUG Remix) / ユニコーン
- OUTRO
MOONBUG“REMIX ASSAULT”リリースパーティ Supported by brix
2013年4月6日(土)東京都 秋葉原MOGRA
START 15:00
<出演者>
DJ:MOONBUG / OMKT / RAM RIDER / クボタマサヒコ / ニッチ / WILDPARTY / PandaBoY /USYN / killdisco / D-YAMA / 班長 / and more
LIVE:fu_mou
VJ:GraphersRock / 丸橋圭太郎 / セーラーチェンソー
TALK:DJ 急行
一般発売日:2013年3月1日(金)
※「REMIX ASSAULT」を持参すると1ドリンク付き
MOONBUG(むーんばぐ)
Novoiski、Nylonizm、Matsumoto Hisataakaaにより結成されたリミックス&マッシュアップ制作ユニット。2008年にニコニコ動画に投稿されたcapsule×BEASTIE BOYS×DAFT PUNKの非公式マッシュアップ「Starry Sky YEAH! Remix」が爆発的なアクセスを集め、一躍ネットユーザーから注目される存在となる。同マッシュアップは日本最大のファッションショー「東京ガールズコレクション」のオープニング曲として使用されるなど、ネットの世界を超えて話題に。2010年には初のオリジナルアルバム「BEATS & SPIKES」がインディーズから発売された。同年、日本におけるリミックスのパイオニアであるDub Master Xが正式メンバーとして加入。2013年2月には、さまざまな国内アーティストのリミックスを収めた公式アルバム「REMIX ASSAULT」をソニー・ミュージックダイレクトからリリースする。