pal@pop高野健一との“恋愛トーク”から生まれた「ふわふわ♪」

──ニューシングルの「ふわふわ♪」はEPIC移籍第1弾ということになりますが、レーベル移籍にあたって「こういう感じでいこう」という話し合いはありましたか？

今回は「何においてもとにかく“ガラス張り”で見通しよく」というのが根本のスタンスです。今までは曲を作るにあたって、与えてもらうことがすごく多かったというのがあって。でもやっぱり表現って自発的なものじゃないと伝わらない、伝わりきれない部分ってあると思うんです。環境を変えるだけじゃなくって、自分自身も変わらないと。今までは、いろいろ準備を進めていただいたものに自分の歌をどこまで寄せられるか、という感じだったんですけど、今回はまず曲を作って作家さんと相談して、というところから始めているので、感覚的にはすごく違いますね。

──本作ではpal@popの高野健一さんをプロデューサーに迎えられていますが、これも牧野さんのほうから？

はい。曲を聴かせていただいたらすごく面白くて、今までに歌ったことのないベクトルの曲だったので、新しいところに踏み出してみるという楽しさを考えて「ぜひお願いします」と。歌詞に関しては、高野さんとたくさんお話させていただいた中でできあがっていったものです。

──歌詞の世界はサウンド以上に、今までとはガラリと変わっていますよね。これまでのちょっと妖精っぽいイメージというか、ふわっと浮世離れした雰囲気から一転して、すごく生々しい恋の気持ちが歌われていて。

この曲は1年ぐらいかけて作ってるんですね。等身大で、普通の女の子に共感を得てもらえるような、そういう歌を歌っていきたいなと思ったんです。そんな新しい扉を開けてもいいんじゃないかな、それが許してもらえる年齢になってきたんじゃないかな、というところもあって。それで、高野さんはかなりフランクにお話をしてくださる方で、歌詞について「“叶わぬ恋”ってどうですか？」って打ち合わせで2、3時間ずっと話をしたりもしてたし、あとはメールのやりとりで「土台はこんな感じで」みたいな連絡を取らせていただいたり。結果的に行きついたのが「好きな男の子がいて、どうやらその子は私のことが好きじゃないらしいんだけど、あなたのその行動は私に気があるとしか思えないわ」みたいな、はたから見てるとその子の一人相撲？ っていう感じの（笑）叶わぬ恋の話。

──ちょっと強がってはいるものの、思いはより強くなくなっているという。

周りを見てみると友達にいませんか？ こういう子。かく言う私もそういう経験はあったりして、結構身近な話かなーと。

──自分の経験も加えつつ、どちらかと言えば高野さんと2人で同じ小説を書くように、想像上のストーリーを作り込んでいったという感じですか？

そうですね。でも高野さんのメロディは音数が多いから、文字をはめるのは私は無理です！ と最初に伝えて。やっぱり“高野さん節”があると思うので、そこはお任せしました。こんなに長い歌詞カードは私にとって初めてですね（笑）。

──高野さんの曲は、グッと詰まった音符に言葉がキレイに乗っかって不思議な弧を描いているという、独特のメロディ感覚がありますよね。あれは実際歌ってみるとやっぱり難しいものですか？

歌い方は結構模索していて、ボイストレーニングに行って発声をちょっと変えたりもしてたんですけど、結局このままでいいんだって思わせてくれたのがこの曲だったりもするんですよね。ラフに歌ったほうがうまく乗っかって、自然に高野節を感じることができたというか。

──それは面白いですね。

ただ……早口だから「大好きなんだ…なんだかかんだか」ってすごく噛んじゃう（笑）。

──ライブで歌うときが勝負ですね（笑）。明らかに新しいベクトルを感じさせつつも、浮遊感のあるメロディと音作りには今までの牧野由依の持ち味も感じられる、練り上げられた曲だなと感じました。

そう言ってもらえるとうれしいです。

──レコーディングする上で、高野さんからはどういった指示がありましたか？

自由に！ アハハハ（笑）。縦ラインを強調するリズムというか、この曲ならではの注意点を、技術的な面でアドバイスいただいたりはしましたけど。あとは「小難しいことをしなくても、元々の声や話し方そのまんまを表現してくれればいいから」みたいな感じで。