ナタリー PowerPush - lynch.

新境地へと導く意欲作「LIGHTNING」

lynch.のニューシングル「LIGHTNING」が10月24日にリリースされる。“lynch.史上最速かつ最もエモーショナル”と評されたアルバム「INFERIORITY COMPLEX」から4カ月というインターバルで届けられた今作は、キャッチーなメロディとメッセージ性の強い歌詞を併せ持つストレートなロックナンバー。明らかに前作までとは異なるモードで制作された今作で、バンドは何を表現しようとしたのか。全楽曲の作詞作曲を手掛ける葉月(Vo)に話を訊いた。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 上山陽介

「激しい激しい言ってたけど、今までで一番聴きやすくない?」

──アルバム「INFERIORITY COMPLEX」が発売されてから4カ月経ちましたが、今の葉月さんから見てどういう作品に映りますか?

インタビュー写真

自分の中ではかなり激しくしたつもりだったんですけど、割とそう取られなかったっていう印象がありますね。

──それは周りからの反響が?

そうです。「激しい激しい言ってたけど、今までで一番聴きやすくない?」みたいな反応を結構いただいて。なるほどなと思いつつも、ちょっと悔しい気持ちもあります。もっと激しくやらなきゃダメなのかと思って(笑)。

──なるほど。そしてそのアルバムを引っさげて、28本にわたる全国ツアー「THE FATAL EXPERIENCE」も行ったわけですが。

ああいう激しさに重きを置いたアルバムなので、ライブはいかにもロックなものにしたかったし、無条件にグチャグチャになれるような小さいハコばかりチョイスして回ったんです。で、会場の冷房が全く効かないとか救急車が来たりとか、まさにそのとおりグチャグチャになりまして。まあメジャーに移ってから会場のキャパがどんどん広くなっていく中で、もう一度初心に返るわけじゃないですけど、あえて1会場のキャパを狭めてがっつり数を回るっていうのはやって良かったなと思います。

──例えばキャパの大きい会場を中心に本数を抑えて回るツアーと、前回のように小会場を数多く回るツアーとでは、どちらがやりやすいですか?

大きい会場を中心に本数を抑えれば、そこに向けてコンディションを整えていけるので、ボーカリストとしてはやりやすいですね。ただ前回みたいなツアーだとコンディション的にはボロボロになるけど(笑)、バンドのテンションは持続できるのでその良さはあります。

──それぞれに一長一短あると。

そうですね。両方の良さがあるのでどちらかを選ぶのは難しいかな。

「LIGHTNING」はシングルを意識して書いた曲

──そして今回発売されるニューシングル「LIGHTNING」ですが、表題曲「LIGHTNING」とカップリング「THE MORNING GLOW」の2曲ともかなりストレートでキャッチーだと思います。この2曲はタイトルや歌詞に共通点が多くて、2曲揃ってひとつの作品として成立していると感じました。

ああ、それは今日取材した記者の皆さん全員に言われました。

──あ、そうなんですね。

その度に僕が「あ、本当ですね」と言って感動してるんです。全然そのつもりはなかったんですよ。

──本当にたまたまなんですか。

インタビュー写真

「LIGHTNING」はシングルを意識して書いた曲なんですけど、「THE MORNING GLOW」との歌詞の関連性は全くなくて。でも言われてみれば歌詞の方向は一緒なんで、自分が今そういうモードだったんだろうなっていう。

──「LIGHTNING」(=稲妻)と「THE MORNING GLOW」(=朝焼け)というタイトルもすごく象徴的ですし。シングルのアートワークも光をテーマにしているというか、曲タイトルとの関連性を強く感じさせるものだと思いました。例えば稲光や朝日の光で何かを照らすということに意味があるのかなと勝手に想像していたんですが。

「LIGHTNING」に関しては光というより、「今」というこの瞬間を常に感じながら生きてほしいという思いが歌詞に込められていて。人はいつ死ぬかわからないし、人生は一度きりだということを歌いたかったので、スピード感があって力強い言葉の象徴として稲妻を選んだんです。最初は「稲妻となれ」っていう歌詞もあったんですけど、それは最終的にメロディが変わったことで削ってしまって、結局タイトルだけがそのまま残ることになって。

lynch.(りんち)

葉月(Vo)、玲央(G)、悠介(G)、明徳(B)、晁直(Dr)の5人からなるロックバンド。2004年8月に葉月、玲央、晁直の3人にサポートベーシストの4人を加えた形で始動。2005年4月に1stアルバム「greedy dead souls」をリリースし、並行して精力的なライブ活動を行うことで、地元・名古屋で話題を集める。

2006年に悠介が加入し、年内に4枚のシングルをリリース。続いて2007年には名盤と名高いアルバム「THE AVOIDED SUN」を発表し、レコ発ツアーファイナルを東京・Shibuya O-WESTで飾る。その後もライブを行う会場の規模を徐々に拡大させ、耳目を集める存在に。2010年に明徳が正式メンバーとなり、あわせてメジャーレーベルであるキングレコードへの移籍が発表された。2011年6月、前作から約2年ぶりとなるアルバム「I BELIEVE IN ME」でメジャーデビュー。2012年10月、ニューシングル「LIGHTNING」を発表する。