音楽ナタリー Power Push - ラブリーサマーちゃん
目指せネットのカリスマ! 話題の宅録女子メジャーへ
現役女子大生アーティスト・ラブリーサマーちゃんが、ビクターエンタテインメント内のレーベルSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューアルバム「LSC」をリリースした。
2013年に宅録を始め、音源をSoundCloudで発表する中で徐々に知名度を獲得してきた彼女。満を持してのメジャーデビュー作となる本作は、「あなたは煙草 私はシャボン」「私の好きなもの」「青い瞬きの途中で」といった人気曲のほか、ラブリーサマーちゃんとして初めてリリースした楽曲「ベッドルームの夢」やtofubeats「水星」のカバーなど、現時点での彼女の集大成とも言える1作に仕上がっている。
メジャーデビューという大きな門出を迎えたラブリーサマーちゃんは、今どんな思いを抱いているのか。デビューの経緯や「LSC」の制作エピソード、顔出しをしない理由など多岐にわたって語ってもらった。
取材・文 / 秦野邦彦
Twitter検索からつながったメジャーへの道
──まずはメジャーデビューおめでとうございます!
わっ、ありがとうございます。「おめでとう」って言ってくれる方、なかなかいないんですよ。褒められないとがんばれないタイプなので、もっと言ってほしいです(笑)。
──でも、お世辞抜きに洋邦問わずこれまで吸収してきたものが咀嚼されていて、音楽が心の底から好きなことが伝わってくる素晴らしいアルバムだなと思いました。メジャーのお誘いがあったときはどんな気持ちでした?
最初に連絡をいただいたのがTwitterのDMだったんです。しかも社名を明かしてくれなくて。文章がすごくフランクだったので、「うさんくさっ!」と思っちゃって。会いましょうってなったときに会社の住所を聞いて、「ええーっ、ビクターだったの?」みたいな。そのとき「どうして私に声をかけたんですか?」って聞いたんです。そしたらTwitter検索で「アーティスト」「新人」とかで調べて、音源を聴いてよかった人にDMを送ってると。「そんなやり方でいいのか?」って思いつつ、「この人めっちゃ面白い!」って(笑)。
──それはいつ頃の話ですか?
2年前の春頃です。本当は去年デビューする予定だったんですけど、思いのほか時間がかかっちゃって。最初に30曲ぐらい作って、その中から収録曲を選ぼうという話になったんですけど、いろいろ考えていたら作れなくなっちゃった時期があって。……難しいですよね。曲作るのって。
──メジャーデビューが決定して、自分の中で世に出せる楽曲のボーダーラインも上がってきたんでしょうね。
私、量産型じゃなく、「この1曲に魂を全部込める!」みたいな作り方をしちゃうんです。なので、どんなにがんばっても1カ月に1曲しかできなくて。編曲も全部やってたので、自分が見積もっていたよりかなり遅いペースでしか曲が作れないことに気付きました。
──その分選りすぐりの12曲がそろったと考えれば。月1曲ですから、ちょうど1年分ですね。
確かに! そう考えれば1年に1枚は出せるってことですから、いいことですね(笑)。
メジャーデビューしなくてもいいかなと思ってた
──デビュー作「LSC」は、どの曲も日常の息遣いが聴こえてくるような歌詞の世界、曲のクオリティの高さに圧倒されました。やはり新たに曲を書くとき、メジャーデビューアルバムということを意識しながら?
作っているときはそういう気持ちはなかったです。今までSoundCloudに上げてきた曲の中から「次に出すアルバムにはこれとこれを入れよう」みたいなことは考えましたけど、狙ってこういう曲を作ろうとかはあまり考えず、そのときの気分で作ったものを詰め合わせた感じになりました。
──「LSC」の中で一番古い曲はどれでしょう?
「月の光り方」です。これはラブリーサマーちゃんをやる前に高校の軽音部にちょっとだけ在籍してて、そこで作ったんですけど……あっ、すごい恥ずかしいな。私、今まで最初に作った曲はずっと「『My Sweet Chocolate Baby!!』です」って答えてたんですけど、こっちのほうが古かったです。「月の光り方」の歌詞があまりにも恥ずかしすぎて自分の中でナシにしようと封印してました(笑)。実は本当はこれが人生で初めて作った曲です。今まで真剣にインタビューしてくださった方に失礼ですよね。ごめんなさい!
──はははは(笑)。封印されていた曲が日の目を見ることができてよかったですね。
はい。歌詞を変えてなんとか。前の歌詞は初めて作った曲なのでしょうがないんですけど、小学生が書いたみたいな稚拙さだったので。まだ「My Sweet Chocolate Baby!!」だったら、「おふざけで作りました、ゲラゲラ」みたいな感じですみますけど、「月の光り方」ぐらい直球勝負な曲だと恥ずかしくて、何真面目に作っちゃってんの?みたいな気持ちがあったんです。この頃はそんなに曲を作りたいという気持ちはなく、バンドで自分の曲を作ってみたらどうなるんだろう、ぐらいにしか考えてなかったので1曲しか作らなかったんです。
──そのバンドではカバーを中心にやっていたんですか?
そうです。よくある高校の軽音部で、チャットモンチーのカバーとかやってました。
──では、アルバムの中で一番新しい曲は?
最後に入っている「僕らなら」という曲です。これは今年の7月、1週間後にレコーディングを控えているときに作りました。私、どうしてもこのアルバムに12曲入れたかったんですけど、「今更そんなこと言われても遅いよ。時間的にもう1曲歌詞と編曲考えるの無理でしょ?」みたいなことを言われてしまって。それで、どうにかして期日までに1曲いいの作るしかないと思って、何年も前に録ったボイスメモを聴き直したらいい感じのメロディがあったので、そこから作った曲です。
──1曲ずつに物語がありますね。
ありますねー。私、最初はメジャーデビューしなくてもいいかなと思ってたんです。利益とか出なくてもいいから働きながら自分の好きな曲を作れればいいやって。でも、最初に話したスピードスターのディレクターがすごくいい人で。この人とはめっちゃケンカしたり、いろいろあったんですけど、メジャーデビューの話がだんだん固まってきたとき、彼とならがんばってみようかなって気持ちになったことがすごくうれしくて。それを曲にしようと思ったんです。
──それでこの歌詞の内容になったというわけですか。
はい。これを書いたときはWWWでのワンマンライブの日がけっこう近付いていて、ライブの最後にアンコールで「今日は本当にありがとうございました、ラブリーサマーちゃんでしたー」って言ったあと、ミドルテンポで壮大なブリットポップ風の曲をやったら絶対映えるなと思って。しかもそこでメジャーデビューしますって発表することに決めていたので、決意表明みたいな曲になればいいなと思って作りました。
──今、Oasisの「Whatever」とか「Don't Look Back In Anger」を観客が大合唱しているイメージが頭の中に浮かびました。
最高ですね! そういう曲に聞こえてたらありがたいです。
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- メジャーデビューアルバム「LSC」 / 2016年11月2日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
- 初回限定盤 [CD2枚組] / 2500円 / VIZL-1023
- 通常盤 [CD] / 2300円 / VICL-64617
CD収録曲
- あなたは煙草 私はシャボン
- PART-TIME ROBOT
- 青い瞬きの途中で
- 202 feat. 泉まくら(New Mix)
- 私の好きなもの(New Mix)
- 月の光り方
- 水星
- わたしのうた
- 魚の目シンパシー
- ベッドルームの夢(New Recording)
- 天国はまだ遠い
- 僕らなら
初回限定盤ボーナスディスク「ETC」収録曲
- LOVE♡でしょ?(Pro.by 無敵DEAD SNAKE) / ラブリーサマーちゃん
- Song 4 U / nagomu tamaki feat. ラブリーサマーちゃん
- First Regrets / For Tracy Hyde
- Another Sunny Daze / For Tracy Hyde
- 最高の夜だぜ(歌:ラブリーサマーちゃん) / 画家
- Divine Hammer / 宇宙ネコ子 feat. ラブリーサマーちゃん
- 私の好きなもの(Yunomi Remix) / ラブリーサマーちゃん
- 笑い話(Lovely Club Mix)Remixed by USYN / ラブリーサマーちゃん
- あなたは煙草 わたしはシャボン(Herrokkin Remix) / ラブリーサマーちゃん
ラブリーサマーちゃん
1995年生まれ。2013年の夏に自宅での音楽制作を開始し、インターネット上に音源を公開していく。ポップでキャッチーなサウンド、チャーミングな歌声が話題を集め、ネットを中心に人気を獲得。2015年11月に1stアルバム「#ラブリーミュージック」を、2016年4月から3カ月連続でシングルをリリースする。2016年8月に東京・WWWで開催したワンマンライブにてSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューすることを発表。11月にメジャーデビューアルバム「LSC」をリリースした。