クミコ with 風街レビュー「デラシネ déraciné」PR

クミコ with 風街レビュー|“根無し草”の3人が多彩アーティストと作り上げた恋歌

クミコ with 風街レビューがニューアルバム「デラシネ déraciné」をリリースした。

今回のアルバムでは全曲の作詞を松本が担当し、秦基博やつんく♂、吉澤嘉代子、横山剣(クレイジーケンバンド)、菊地成孔といったさまざまなアーティストが作曲を手がけた。本作のリリースを記念して、音楽ナタリーではクミコ、松本、そして全曲のサウンドプロデュースを担当した冨田恵一による鼎談を実施。バラエティ豊かな作曲者陣との楽曲制作について、たっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 辛島いづみ 撮影 / 塚原孝顕

3人は“根無し草の大御所”

─タイトルの「デラシネ」とはフランス語で“放浪”あるいは“根無し草”という意味ですよね。

左から松本隆、クミコ、冨田恵一。

松本隆 これは僕の晩年の生き方。

クミコ 晩年! 晩年と来たかあ。

松本 とっくに晩年だよ(笑)。晩年は1つの場所に定住するのではなく、ゆらゆらと漂泊していたい、それが僕の夢だった。だから今、現在進行形で漂泊中。クミコもそんな感じでしょ(笑)。

クミコ ふふふ(笑)。

松本 僕らにはそういう共通項があるんじゃないかと思うんだ。ただ冨田くんは漂泊していない。僕らより若い世代だし、ちゃんと家庭を築いて幸せに暮らしてる。

冨田恵一 でもある意味、僕も根無し草なんです。と言うのも、僕の音楽は“デラシネ”であると言えるんじゃないかなと。感覚としてジャズ、ポップス、ロック、どのジャンルに属している、どのジャンルがメインである、そういうことを考えたことがないので。僭越ながら、そこに一緒にくくらせてもらってもいいのかなと。

クミコ 音楽的に言えば私もそう。私は昔から“スキマ歌手”なので(笑)、どのジャンルでも大御所にはなれない、という感じがずっとあって。だからデラシネというのは、なんと私にピッタリなタイトルかしらと。もしかすると、これが私にとって最後のオリジナルアルバムになるかもしれない。最後に“根無し草”だなんて、最高だなって。

松本 と言うことは、僕ら3人は“根無し草の大御所”ということになるのかな(笑)。

近藤ようこ作のジャケット

──じゃあ「デラシネ」というタイトルは最初から考えていたものですか?

松本隆

松本 いや。最初に考えていたのは、最初から最後までラブソングだけのアルバムにしたいということ。アルバム「AURA」でクミコは「生と死」にこだわった曲ばかり歌っていたから、そういうイメージから自由にしてあげたかった。僕が関わるのは「AURA」(2000年発売のクミコのアルバム)以来17年ぶりだし、歌の基本はラブソングだから、初心に戻ってラブソングだけをやってみるといいんじゃないかなって。とにかく、そんなに深いことを考えずに作り始めて。ただ、僕ら2人共還暦を過ぎているし、恋愛したのが遠い昔のことなのでね(笑)、それをなんとか思い出しつつ、「さみしいときは恋歌を歌って」や「恋に落ちる」という曲から書き始めて。でも結局最後に「輪廻」という曲ができあがった。やっぱり“生と死”に戻るんだなって。

クミコ そういうことかあ(笑)。

──ジャケットはマンガ家の近藤ようこさんが手がけています。ジャケットをマンガ家にオファーするのは「はっぴいえんど」時代から続く、もはや“伝統”ですね。

「デラシネ déraciné」ジャケット

松本 なぜかそうなっちゃうんだ。林静一さんから始まって、松本大洋くん、高野文子さん、羽海野チカさん、今日マチ子さん、ほしよりこさん……。今回もふと「近藤さんの絵がいいな」と思った。近藤さんは神代(神話の時代)の話……いにしえの奈良や京都のことをよく描く人だけど、作詞作業をしていたとき、折口信夫の「死者の書」をチラチラと読みながら書いていたということもあって、それがすごく響いたんだ。「ああ近藤さんの絵がいいなあ」って。近藤さんとはSNSでもつながってるんだけど、一筋縄でいかないような難しそうな人。そういうところも好きなんだ。

このアルバムが新しい恋歌のスタンダードナンバーに

──そして今回、冨田さんはバラエティ豊かな作曲家陣をとりまとめるサウンドプロデューサーという役割です。

松本 冨田くんと最初にタッグを組んだのは、冨田ラボ(feat. ハナレグミ)の「眠りの森」(2003年発売)だった。

冨田 そうですね。

松本 あの頃から僕の詞と冨田くんの曲は完璧な相性。今回、アルバム全体のサウンドプロデュースを引き受けてくれてとてもうれしかった。ただ、最初は3人共「これをどうやって着地させるんだろう?」と思ったと思う。「ちゃんと融合できるのかな?」って。そういうところから出発してるからね。

冨田恵一

冨田 クミコさんは普段シャンソンを中心にやっていらっしゃるけれど、「これぞポップスというものを歌いたい」とおっしゃられて。僕は「それはいいなあ」と思いつつ「じゃあどうすればいいかなあ」と。とにかく、いろんなことが手探りの状態から始まったんです。作曲家の方もいろんな方がいらっしゃる。どうまとめていけばいいのかなあと。そんな中、最初にレコーディングしたのが、秦基博さんの「さみしいときは恋歌を歌って」だったんです。

クミコ 「最初なのに一番難しい曲じゃん!」っていう(笑)。

冨田 クミコさんが「難しい、難しい」とおっしゃって。

クミコ はい。今でも一番難しいと思う曲。なぜこれが最初だったんだろう。よくくじけなかったなと。自分を褒めてあげたい(笑)。

松本 あはははは(笑)。

冨田 歌い方をいろいろ試されましたよね。普段とは違う歌唱法に挑戦してみようと。そういった作業を1曲1曲と重ねていくうちに、曲にぴったりなアプローチを自然にされるようになった、と感じました。最後のほうで、これは僕の印象ですけれども、クミコさんがポップスを歌うというのはこういうことなのかなって。おぼろげながらではありますが、その姿をつかんだ気がします。

松本 結局「大人のポップス」であり「大人のラブソング」なんだよね。昔はこういう曲を歌う人はわりといたんだ。でも今は全然いない。現実にはこういう歌を欲しがってる人は多いはずなんだ。でも誰も歌わなくなっちゃった。そういう意味では、懐かしくもあり新しい。新しい恋歌のスタンダードナンバー。それがこのアルバムの特徴だと思うんだ。

クミコ with 風街レビュー「デラシネ déraciné」
2017年9月27日発売 / 日本コロムビア
クミコ with 風街レビュー「デラシネ déraciné」CD

[CD]
3000円 / COCP-40092

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クミコ with 風街レビュー「デラシネ déraciné」アナログ

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4320円 / COJA-9328

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収録曲
  1. 不協和音[作詞:松本隆 / 作曲:七尾旅人 / 編曲:冨田恵一]
  2. 消しゴム[作詞:松本隆 / 作曲:吉澤嘉代子 / 編曲:冨田恵一]
  3. フローズン・ダイキリ[作詞:松本隆 / 作曲:横山剣 / 編曲:冨田恵一]
  4. しゃくり泣き[作詞:松本隆 / 作曲:村松崇継 / 編曲:冨田恵一]
  5. さみしいときは恋歌を歌って[作詞:松本隆 / 作曲:秦基博 / 編曲:冨田恵一]
  6. 枝垂桜[作詞:松本隆 / 作曲:亀田誠治 / 編曲:冨田恵一]
  7. セレナーデ[作詞:松本隆 / 作曲:シューベルト / 編曲:冨田恵一]
  8. 恋に落ちる[作詞:松本隆 / 作曲:永積崇 / 編曲:冨田恵一]
  9. 砂時計[作詞:松本隆 / 作曲:つんく♂ / 編曲:冨田恵一]
  10. 輪廻[作詞:松本隆 / 作曲:菊地成孔 / 編曲:冨田恵一]
クミコ with 風街レビュー『デラシネ déraciné』リリース記念 トーク&サイン会

2017年11月2日(木)東京都 二子玉川 蔦屋家電 2F ラウンジスペース
<出演者>
クミコ / 松本隆
スペシャルゲスト:クリス松村

デビュー35周年記念 クミコ・ザ・ベスト・コンサート 1982-2017

2017年11月18日(土)大阪府 森ノ宮ピロティホール

クミコ
クミコ
女性シンガー。1982年にシャンソニエの老舗・銀座「銀巴里」でプロ活動をスタートさせた。2000年に松本隆が手がけたアルバム「AURA」で一気にその名を広める。2010年「INORI~祈り~」がヒットし、同年「第61回NHK紅白歌合戦」に初出演を果たした。2015年9月、つんく♂がプロデュースを手がけた楽曲「うまれてきてくれて ありがとう」をシングルリリース。レコード大賞作曲賞を受賞する。2016年9月、松本隆と16年ぶりにタッグを組み、「クミコ with 風街レビュー」として両A面シングル「さみしいときは恋歌を歌って / 恋に落ちる」を発売。2017年9月にクミコ with 風街レビュー名義のアルバム「デラシネ déraciné」をリリースした。
松本隆(マツモトタカシ)
松本隆
1949年生まれの作詞家。ドラマーとして所属していたはっぴいえんどでは、多くの楽曲の作詞を手がけていた。1972年のバンド解散後は、作詞家として本格始動。太田裕美「木綿のハンカチーフ」、寺尾聰「ルビーの指環」といった数々の名曲の作詞を手がけ「日本レコード大賞」などを受賞する。作詞家生活45周年記念として2015年に開催されたコンサート「風街レジェンド2015」が伝説的なライブとなり、記念アルバム「風街であひませう」はその年の「日本レコード大賞」アルバム賞を受賞した。また同年、昭和から現在まで第一線で日本の音楽史を支えてきた功績が認められ「第66回芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞。2016年、クミコとタッグを組み、新プロジェクト「クミコ with 風街レビュー」を発足。9月に両A面シングル「さみしいときは恋歌を歌って / 恋に落ちる」、2017年9月にアルバム「デラシネ déraciné」をリリースした。
冨田恵一(トミタケイイチ)
冨田恵一
音楽家、プロデューサー。 キリンジ、MISIA、平井堅、中島美嘉、ももいろクローバーZ、矢野顕子、RIP SLYME、椎名 林檎、木村カエラ、bird、清木場俊介、Crystal Kay、AI、BONNIE PINK、畠山美由紀、JUJU、 坂本真綾、篠崎愛、Uru、他数多くのアーティストにそれぞれの新境地となるような楽曲を提供する。“アーティストありき”で楽曲制作を行うプロデュース活動に対し、"楽曲ありき" でその楽曲イメージに合うボーカリストをフィーチャリングしていくことを前提として立ち上げたセルフプロジェクト「冨田ラボ」として今までに5枚のアルバムを発売している。自身初の音楽書「ナイトフライ -録音芸術の作法と鑑賞法-」を2014年7月に発売。2016年度横浜国立大学の入学試験問題には著書一部が採用された。1つの曲が出来ていく工程をオーディエンスの前で披露する「作編曲SHOW」の開催や、世界中から著名アーティストが講師として招かれることで話題のRed Bull Music Academyでのレクチャーなども行いつつ、音楽業界を中心に耳の肥えた音楽ファンに圧倒的な支持を得ている。