音楽ナタリー PowerPush - KREVA

47都道府県ツアーで閉塞感を打破 緊急リリース「Under The Moon」

KREVAがニューシングル「Under The Moon」をリリースした。この曲で彼は「必ず また Under The Moon / だからその日が来るまで働く」という力強いメッセージを提示。そして2月27日からはこの新曲を携えて、自身初となる47都道府県ツアーをスタートさせる。

誰もが認めるトップアーティストであるKREVAがシングルを緊急発売し、全国各地を細かく回る動機はどこにあるのか。そしてこの一連のアクションを通して伝えたいことはなんなのか。KREVA本人に話を聞いた。

取材・文 / 大山卓也

 
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「聞こえてるけど書けない」歌詞

──シングル「Under The Moon」は発売告知から2週間弱での緊急リリースとなりました。これはどういう意図だったんでしょうか?

今までやってないことをやりたいっていう気持ちがいつもあるんです。今回は長々宣伝しないで、「出るよ」って言ってからすぐに聴けるっていう形をやってみたいなと思って。

──世界的にも告知、即リリースみたいな形が最近多いですよね。

ディアンジェロのアルバムも急に出ましたもんね。そういう動きをめちゃめちゃ意識してたかっていったらそうでもないですけど。

──作品自体は以前から作っていたものなんですか?

トラックはずっとあったんですよ。ただ歌詞を書けない時期がけっこう長くて。言葉が全然出てこなかった。トラックから例えば「必ず また Under The Moon」とかって言葉は聞こえてくるんです。でも「聞こえてるけど書けないなあ」みたいな。

──トラックはできるけど歌詞が書けない?

そうですね。トラックはバンバン作るし表現したいっていう気持ちはあるんですけど、別にそんなに言いたいことがあるわけじゃないから。音を鳴らして表現したいっていう気持ちのほうが強いんですよね。

言いたいことはなくてもいい

──前回のインタビュー(参照:KREVA「KX」インタビュー)のときに、自分の哲学を言葉にしていくと同じテーマの繰り返しになってしまう、という話があったと思うんですが。

それを抜けたきっかけがあるとしたら、1つはKICK THE CAN CREWをやったこと、もう1つは小林賢太郎さん(ラーメンズ)に「KREVAは本当にミスター向上心だよね」って言われたことですね。そのあとライブのリハーサルしてたときに歌詞が完全に飛んだんですよ、いつも絶対間違えないのに。もっと正確に言うと飛んだっていうかそこにキックの歌詞が入ってきちゃったんです。「NA NA NA」のトラックにキックの「タカオニ2000」の歌詞がポンってハマって。

KREVA

──その2つの曲が似ていた?

2曲とも「どこまでも高く上ろう」っていう歌で、言ったらどっちも向上心の歌なんですよね。そのときに「あ、俺変わってないんだな」「同じことを歌い続けるのも別に悪いことじゃないな」って思えたんです。だから言うことを新しく探そうみたいなのはなくなったし、あとはまあトラックから聞こえてくる言葉を生かしてもいいんだなって思えた。それで書けない時期を抜けたんです。

──書きたいテーマを新たに見つけたのではなく、発想自体を変えたわけですね。

そうですね。気付きっていうんですかね。これでいいんだと思えた。そのあとに中納良恵さん(EGO-WRAPPIN')と坂本慎太郎さんの対談記事を読んだんですけど。

──ナタリーの企画ですね(参照:中納良恵「窓景」特集)。

そしたらお2人が「別に言いたいことはなくて、仮歌とかの音を生かして歌詞にしていくんだ」みたいな話をしてて。それがきっかけで中納さんのアルバムを買ったりして「あ、やっぱりそれでいいんだ」と思えたところもありますね。

──自分のスタンスを再認識したと。

言いたいことがないって変な意味じゃなくてね。もちろん音は作りたいし表現はしたい。だから、絵は描くけどタイトル付けたくない人みたいな感じなのかな。ほら、よく「ラッパーだったらもっと社会に文句言え」みたいな意味わかんないこと言ってる人いるけど、俺はもっとおだやかな感じでできればって思ってるんで(笑)。

──だからといって言葉のノリがよければいいや、というわけじゃないですよね。

うん、そういうことじゃない。鼻歌を全部生かして歌詞にするって意味じゃないです。例えば(シングルのカップリングの)「これでよければいくらでも」とかもそうなんですけど「これでよければいくらでも」って言葉がまず聞こえてきて、そこから「……何でよければかな?」みたいなのを考えはじめる。そのやり方が見えてからだいぶ楽になりましたね。

──ところでKREVAさんは「ラッパーはもっと社会に文句言え」といった意見については一貫してNOですか? 今の世の中に対して言いたいことがないわけではないと思うんですが。

いや、世の中の状況については言いたいことはないです。なんにも感じないとかではなくて、それはみんなが感じてることだから。そう簡単に整理できないし、それは歌にするようなことじゃない。

──プロテストソングを歌うのは自分の役割ではない?

俺は欲しくないから作らないですね。誰かにトラックを提供するときでも、そういうのは俺の曲ではやらないでほしいと思ってます。

ニューシングル「Under The Moon」 / 2015年2月25日発売 / 1296円 / ポニーキャニオン / PCCA-04151
「Under The Moon」
収録曲
  1. Under The Moon
  2. これでよければいくらでも
  3. 47都道府県ラップ
  4. Under The Moon(Inst.)
  5. これでよければいくらでも(Inst.)
  6. 47都道府県ラップ(Inst.)
ライブDVD / Blu-ray「『908 FESTIVAL』2014.9.07 & 9.08at 日本武道館」 / 2015年3月18日発売 / ポニーキャニオン
Blu-ray Disc2枚組 12960円 / PCXP-52908
DVD2枚組 10800円 / PCBP-58908
KREVA(クレバ)

1976年、東京都江戸川区育ち。BY PHAR THE DOPEST、KICK THE CAN CREWでの活動を経て2004年にソロデビュー。2006年2月リリースの2ndアルバム「愛・自分博」はヒップホップソロアーティストとしては初のオリコンアルバム週間ランキング初登場1位を記録。同アルバムのリリースツアー最終日では初の東京・日本武道館公演も開催した。2011年にはヒップホップ音楽劇「最高はひとつじゃない」の音楽監督も担当。2014年6月に10周年記念ベストアルバム「KX」をリリースした。その確かな実力でアンダーグラウンドシーンからのリスペクトを集める一方、久保田利伸、草野マサムネ、布袋寅泰、古内東子、三浦大知、MIYAVI、鈴木雅之らメジャーアーティストとのコラボも多数。ラッパーとしてのみならずビートメーカー、リミキサー、プロデューサーとしても内外から高い評価を受けている。