ナタリー PowerPush - 氣志團
伝説の対バンGIGシリーズ30公演の軌跡
今年9月に、初の主催フェスティバル「氣志團万博2012 房総ロックンロール・オリンピック」を開催することを発表した氣志團。このフェスティバルは、彼らが2011年に行った対バン企画「極東ロックンロール・ハイスクール」の集大成として開催される。計30組のアーティストを迎えて、1対1のタイマンGIGを行うという、ロック史上類を見ない異種格闘技戦として、約半年間にわたって大きな注目を集めた企画だ。
この企画に密着し、全30公演の模様をライブレポートとして掲載してきたナタリーは、長く熱い戦いを終えたメンバーを直撃。綾小路 翔(Dragon Voice)、早乙女 光(Dance & Scream)、西園寺 瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Drums & Drunk)の6人に、30公演の軌跡を振り返ってもらった。
取材・文 / 大山卓也
綾小路 翔インタビュー
対バンを通して自分たちのスタンスを取り戻した
──まずは「極東ロックンロール・ハイスクール」30公演、完走おめでとうございます。
ありがとうございます。ナタリーのライブレポートいつも楽しみにしてました。
──今はどんな気持ちですか?
すごくほっとしているというか、「終わったんだなあ」っていう達成感というか、心地良い恍惚感もありますし。なんだか自分たちのスタンスをやっと取り戻した感がありますね。
──「取り戻した」というのは?
ロックバンドの基本的なスタートは対バンなので。我々も1997年に結成して、そこからもう数え切れないくらいのイベントに出演したんです。演奏能力は全くなくて、ルックスとトークのみで目立ってたんですけど、変な面白いバンドがいるっていうことでたまに呼んでもらって。とにかくライブをやるのが楽しくて仕方なかったんですね。
──それが今回の対バンシリーズにつながっていくんですね。
そう、そのときも今もスタンスは同じなんです。とにかくその相手のバンドさんたちの音源を聴いて、ライブをこっそり先に観にいって、ファンの人たちだけがわかるエピソードや合言葉とかっていうものを徹底的に研究して。
──じゃあ対決というよりは……。
もう「LOVE」ですよね。「あいつらぶっ潰してやろう」とかじゃなく、もう愛し抜いて、対バン相手のファンの人たちにも受け入れてもらう。それで氣志團という存在を皆さんに知ってもらえるようになって、それは本当にうれしかったですね。
──なるほど。でもデビュー以降の氣志團は、ワンマンライブ中心のバンドというイメージが強いんですが。
そうですね。そこは僕にとってホールツアーがまずひとつの憧れだったっていうのがあって。もちろんライブハウスも嫌いじゃないですけど、やっぱりホールで足元まで見てもらいたい、我々がやってる細かいネタとかディテールまで気付いてもらいたい、っていう思いがあったんですよね。
2011年の氣志團は中途半端な位置にいた
──そうした狙いどおりに氣志團はファンを増やし、念願叶ってホールやアリーナでワンマンライブができるようになったわけですよね。このタイミングでまた対バンライブを企画したのはどういう意図だったんですか?
あの、今年僕らはメイジャーデビュー10周年を迎えるわけですけど、今、実際僕たちのことを世の中の人たちは今どう思っているんだろうって。そう考えたとき、僕はもう氣志團はシーンの中心にはいないなと思ったんです。
──どういうことですか?
確かに氣志團は今も大きなフェスに出ると、そのフェスでの観客動員数がトップだったりするんですよ。「タダで観れるんなら観ておこう」みたいな(笑)、そういう期待感を持ってもらってるのはすごく感じるんです。だけど単独公演に行くかって言ったらそうじゃなかったり、CD買うかって言ったらそうじゃなかったりする。だから今の僕たちがこの時代にチャートアクションで上位に食い込むのはなかなか難しいことだろうなっていうのはわかっていたし。2011年の我々は中途半端な位置にいたなって思うんですよね。
──厳しい自己分析ですね。
でもだからこそ、じゃあデビュー当時の僕たちはなぜ注目されたのかっていう、そこを自分の中でひとつずつ検証していこうと思ったんです。今やるべきことはなんなのか、自分たちの一番得意なことはなんだろうって。求められてることに応えていくのか、それともそれを裏切って自分たちの新たなる場所を追及していくのか。そういうことを考えた結果、やっぱり俺たちがやるべきなのはGIGじゃねえかと。ライブだったら誰にも負けないっていうところに行き着いたんですよね。
今のロックバンドには戦う場がない
──対バンライブこそが今、氣志團がやるべきことだということですね。
僕ら格闘技がすごく好きなんですけど、今のロックバンドには戦う場がないんですよね。アイドルたちにはあるんです。アイドルは今まさに戦国時代でそこでみんな堂々と戦い、競い合ってる。同じイベントでしのぎを削ってる。そういうところにもファンはドキドキするんです。でもロックの世界は、初めっから音楽に勝ち負けなんかないとか、そういうことを言ってる。
──ロックバンド同士が戦う場が必要だったということですか?
そう、今は大御所と若手が交わろうとしないんですよ。例えばお笑いの世界でダウンタウンが天下を取る前のあの頃っていうのは、彼らが大御所の方々を王座から引きずり下ろしてやるっていう精神でやってたんだと思うんです。とんねるずにしてもそう。若手のやつらが「ジジイ、てめえもう古いんだよ」って、愛を持ってその人たちをどかしてきた。ロックの世界でもそういうことができるのかどうか、僕らは試してみたかったんです。「礼儀を持って、遠慮はするな」が合言葉でした。本当に俺たちは今必要とされているのか。今の時代に通用するのか。これをやってみて全然ダメだったらもう本当に辞めようかなって気持ちが自分の中でありました。この対バンシリーズが、どこかのイベンターさんが企画した普通のイベントみたいになってしまうんだったら、なんとなく挨拶してなんとなくお互いのことにMCで触れて、なんとなく終わって、おつかれさまでしたって挨拶して帰るみたいな、そんなイベントになってしまったら俺たちはもうダメだろうと思ってたんです。
──強い覚悟ですね。
対バンライブ自体は決して珍しいものではないですけど、このバラエティに富んだメンツと、ありえない組み合わせ。それによってこの音楽シーンというのが少しでも活性化しないかなという思いがありました。もちろん向こうのお客さんをぶんどってやるって気持ちもなくはないです。それも全然ありますけど、どっちかっていうと勝手な使命感っていうのがすごく強くて、自分を試したいという気持ちですよね。あとロックシーンってこれでいいの?っていう疑問。例えばロックフェスの裏側ってすごくつまらなくて、バンドにとって“真夏の営業”っていう感じになってるんですね。バンドの人たちはただ会場に来て自分の出番終わったらサッと帰っていくし。長くいてずっと酒飲んでるのなんて俺たちぐらいですよ。そこでバンド同士の交流なんてほとんど生まれないですからね。
彼らは超人で俺たちはジェロニモ
──ただ、勝ち負けを意識してバンド同士が戦う場を作るという、そのコンセプトは素晴らしいと思うんですが、これだけすごい対バン相手を揃えてしまうと、失礼ですが氣志團が常に勝てるとは限らないですよね。メンバー自身もお客さんも「今日は氣志團の負けだったね」と感じる日もあると思うんです。「やめておけばよかった」という気持ちになることはなかったですか?
それはありました。どの人とやるのも前日までは怖くて怖くて、十二指腸潰瘍が再発してしまったくらい(笑)。怖いから練習したり、怖いから研究したりしてました。でもどうしてもやりたかったんです。
──勝てないとしてもやりたかった?
はい。スキルやポテンシャルを考えたら、俺たちが勝てる相手なんか1組もいないですよ。だけど俺たち6人の結束力と、6人がひとつになったときのエネルギーをぶつければ、もしかしたらやり合える可能性も出てくるって思った。やっぱり彼らはみんな超人で、俺たちはジェロニモ(※マンガ「キン肉マン」に登場する人間の戦士)なんです。その自覚はすごく持ってますね。俺たちはロックの女神に一切振り向いてもらったことがない人間たちの集まりだけど、でもあきらめないでやってみようって。何歳までやれるかわからないけど、それでもいいじゃねえか。80歳、90歳になって、もう勃ちやしねえけど、でもロックの女神が癒してくれるようになればいいじゃねえかって。そうならない可能性のほうが高いけど、でも人生賭けてやってみようって思ってるんです。
氣志團現象2012 激的バーニングライブハウスツアー「STANDING NIPPON!! ~爆音列島最前線~」
- 2012年5月8日(火)
- 千葉県 千葉LOOK
- 2012年5月10日(木)
- 宮城県 仙台Rensa
- 2012年5月11日(金)
- 宮城県 仙台Rensa
- 2012年5月15日(火)
- 埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
- 2012年5月18日(金)
- 香川県 高松オリーブホール
- 2012年5月19日(土)
- 高知県 高知BAY5 SQUARE
- 2012年5月21日(月)
- 兵庫県 神戸WYNTERLAND
- 2012年5月22日(火)
- 京都府 京都磔磔
- 2012年5月25日(金)
- 栃木県 HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
- 2012年5月26日(土)
- 埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2012年5月29日(火)
- 群馬県 高崎club FLEEZ
- 2012年6月1日(金)
- 福島県 郡山HIPSHOT
- 2012年6月2日(土)
- 茨城県 水戸ライトハウス
- 2012年6月8日(金)
- 福岡県 福岡DRUM LOGOS
- 2012年6月9日(土)
- 鹿児島県 鹿児島CAPARVO HALL
- 2012年6月16日(土)
- 静岡県 浜松窓枠
- 2012年6月17日(日)
- 岐阜県 岐阜club-G
- 2012年6月19日(火)
- 富山県 富山MAIRO
- 2012年6月23日(土)
- 岡山県 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
- 2012年6月24日(日)
- 広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2012年6月29日(金)
- 新潟県 新潟LOTS
- 2012年6月30日(土)
- 石川県 金沢EIGHT HALL
- 2012年7月6日(金)
- 大阪府 なんばHatch
- 2012年7月8日(日)
- 長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2012年7月12日(木)
- 北海道 帯広MEGA STONE
- 2012年7月13日(金)
- 北海道 Zepp Sapporo
- 2012年7月16日(月・祝)
- 愛知県 名古屋DIAMOND HALL
- 2012年7月21日(土)
- 青森県 青森Quarter
- 2012年7月22日(日)
- 岩手県 盛岡club change Wave
- 2012年7月28日(土)
- 沖縄県 ナムラホール
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氣志團(きしだん)
千葉県木更津市でカリスマ的人気を得ていた綾小路 翔を中心に1997年に結成。メンバーは綾小路 翔(Dragon Voice)、早乙女 光(Dance & Scream)、西園寺 瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Drums & Drunk)の6名。「ヤンクロック」をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでライブを行い、2001年12月から3カ月連続で発売されたVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。その後「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発。2004年には東京ドームでワンマンライブを行い、2004年、2005年にはNHK紅白歌合戦にも出演。2006年には結成10年目を記念して、富士急ハイランドにてイベント「氣志團万博2006“極東NEVER LAND”」を開催し大成功に収めた。2011年には計30公演におよぶ対バンギグシリーズ「極東ロックンロール・ハイスクール」を実施するなど精力的なライブ活動を継続。結成15周年を迎える2012年は「氣志團 完璧年間行事(パーフェクトイヤーズ)」と銘打ち、さらに幅広い活動を展開中。