音楽ナタリー Power Push - 川田まみ

キャリア10年で魅せた新たな真髄「E.M.R」の正体

今年メジャーデビュー10周年を迎えた川田まみが、5thアルバム「PARABLEPSIA」を9月16日にリリースする。「E.M.R(Electric. Mami Kawada. Rock)の集大成」と銘打たれた今作は、その言葉が示す通り、アニメ「ヨルムンガンド」のオープニングテーマ「Borderland」や「東京レイヴンズ」の新エンディングテーマ「Break a spell」を含む全13曲すべてがハードでエレクトロニックなナンバーで統一されている。

まさに“川田らしさ”全開の快心作といえるが、バラエティ豊かな楽曲群で新たな川田サウンドを打ち出した4thアルバム「SQUARE THE CIRCLE」から一転、この10周年という節目の年に、ひたすらストイックな音作りを追求したその意図は? 本人に話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝

 
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ニューアルバムの軸は「Borderland」

──今作「PARABLEPSIA」は「E.M.Rの集大成」の看板に偽りなし、全編エレクトロニックな楽曲で占められていますね。

はい。皆さんにしてみたら「突如『E.M.R』なる造語が現れ」って感じかもしれないですけどね(笑)。

──でも確かに最新シングルの「Gardens」や、過去の「風と君を抱いて」「赤い涙」のようなナマ感のある爽やかなミディアムチューンも“川田まみサウンド”の1つのはずで。あるいは前作「SQUARE THE CIRCLE」には「らせん階段」のような青春ポップソングがありました。なぜ今回ここまでエレクトロニックな方向に振り切ったのでしょうか?

サウンド面でいうと、おっしゃる通り「川田まみ」にはいろいろな側面があり、それを今まで表現してきたんですけど、今年はメジャーデビュー10周年ということもあり、改めて自分の音楽の核となる部分を見つめ直してみようと。つまり「川田まみの中心はこれだ!」と宣言できるような作品にしようと、I've(川田が所属する音楽制作集団。本拠地は北海道札幌市)のみんなで決めたんです。で、今回のアルバムの軸に「Borderland」を据えようって話になったんです。

──アニメ「ヨルムンガンド」のオープニングテーマですね。

2012年にシングルで「Borderland」をリリースしたとき、皆さんに「これも川田まみのサウンドだよね」って認知してもらえたことで、また1つ“川田まみらしさ”を更新できたような手応えがあったんです。それ以前なら「川田まみといえば『灼眼のシャナ』の楽曲」、あるいは「『とある魔術の禁書目録』の楽曲」というサウンドイメージがあったと思うんですけど、まさに“E.M.R”な「Borderland」で新しい一面を見せることができた。じゃあ、この路線を極めたものを目指そうと。

──確かに今作には「Borderland」のような、ひたすらストイックでハードな印象を受けました。ただ、それでいて必ずしもダークだったり息苦しかったりしないのも、またひとつの“川田まみらしさ”なのかなと。

たぶん皆さんの思う“川田まみ自身”のイメージって、ディープで重たいものではないと思うんですよ。それはアー写や私の性格や声色なんかも含めて。じゃあどんなイメージか?っていうとうまく言語化できないんですけど、その漠然とした“川田まみ像”が制作陣の間でも共有されていたから、最終的に出てきた音がこういう色味になったのかなって思ってます。

週1回、必ず全員でディスカッション

──今作には「E.M.R」という明確なコンセプト、言い換えればある種の“縛り”があるわけですが、その枠内でエモロック風味な「fly blind」あり、インダストリアルな「HOWL」あり、あるいは「Eager Eye」や「Replica_nt」のようなダンスチューンありと、各楽曲は非常にバラエティに富んでいます。川田さんからI'veの作曲家チームに対して、具体的なオーダーなどはあったんですか?

川田まみ

まずですね、今回はまさにチーム一丸となってアルバム制作に臨んだんですよ。というのも、今までは最初にみんなで打ち合わせをして、あとはプロデューサー兼作曲家の中沢伴行さんを中心とする作曲家チーム(高瀬一矢、C.G mix、尾崎武士、井内舞子)にお任せするというか、各自がバラバラに曲を書いて、それらを最終的に中沢さんがまとめるみたいな流れだったんです。でも今回は、やはり中沢さんがプロデューサーとして仕切っている部分はあるんですけど、1週間に1回、必ず全員で集まって意思疎通を図り、目的を共有できるようにしたんです。東京にいる井内さんにはSkypeで参加してもらって。

──毎週みんなでディスカッションしていく中で作品ができあがっていったと。

そうですね。まず第1回目の会議で「ニューアルバムは『Borderland』を主軸とした“E.M.R”で行くぞ!」と決まったんですけど、そのあと意思疎通を図る意味も込めて、1人1曲ずつアルバム用のデモを作ってきてもらったんですけど、そうしたらみんな似たタイプの曲を上げてきたんですよ。

──意思疎通バッチリじゃないですか!

でも当然「みんなして曲が一緒じゃダメじゃん!」って話になって(笑)。とりあえずコンセプトを共有できていることが確認できたのはよしとして、問題はそこから先の楽曲の手直しですよね。しかも今回は「歌」を聴かせるというよりは「音」を聴かせるような制作意図もあったんです。もちろん歌を軽視するという意味ではない。私が全曲作詞している以上、そのメッセージが伝わるように楽曲を作ってもらっていますけど、ただ、そういうサウンドを目指すとバックトラックにメロディを乗せるのが難しいってことにもなりがちで。そこは毎週の打ち合わせのときみんなで試行錯誤しながら少しずつ練り上げていきました。

ニューアルバム「PARABLEPSIA」 / 2015年9月16日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
[CD] 3240円 / GNCV-1038
収録曲
  1. parablepsia
  2. Borderland
  3. I...civilization
  4. fly blind
  5. Eager Eyes
  6. PIST
  7. Enchantress
  8. here.
  9. HOWL
  10. Replica_nt
  11. It's no big deal
  12. Break a spell
  13. Dendritic Quartz
川田まみ(カワダマミ)

2月13日生まれ、北海道出身の女性シンガー。2001年に島みやえい子の推薦でI'veのオーディションに参加し合格。同年11月に発表された「風と君を抱いて」で歌手デビューを果たす。2004年6月にリリースされた「I've Girls Compilation 6『COLLECTIVE』」収録曲「IMMORAL」「eclipse」で高評価を受け、2005年2月にテレビアニメ「スターシップ・オペレーターズ」の主題歌に採用されたシングル「radiance / 地に還る~on the Earth~」でソロデビューした。以降、さまざまなアニメのテーマソングを手掛け、独特の繊細なビブラート、透き通るように伸びやか、かつ力強い歌声で幅広い層からの支持を獲得。2012年8月に通算4枚目のアルバム「SQUARE THE CIRCLE」をリリースし、2013年2月には初のベストアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」、ニューシングル「FIXED STAR」を立て続けに発表した。2014年にはアニメ「東京レイヴンズ」後期エンディングテーマ「Break a spell」を、2015年にはアニメ「To LOVEる -とらぶる- ダークネス2nd」のエンディングテーマ「Gardens」を発表。そして9月16日には3年ぶり5枚目のオリジナルフルアルバム「PARABLEPSIA」をリリースする。