ナタリー PowerPush - HER NAME IN BLOOD

よりエグく!よりエモく! ラウドシーンの新スタンダード完成

HER NAME IN BLOODにとって通算2枚目のフルアルバム「HER NAME IN BLOOD」がついにリリースされる。3年ぶりの新作となった「THE BEAST EP」を昨年発売して以降、急速に注目を集めている彼ら。今回のアルバムは単にブルータルなだけではなく、よりメロウでエモーショナルな要素が加わった、聴き応えのある1枚に仕上がっている。

今回ナタリーではメンバーのIkepy(Vo)、Daiki(G)にインタビューを実施。セルフタイトルとなった今作に対する思いやこだわりをじっくり聴いた。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類

バンド名をタイトルにするのはピッタリの1枚

──前作「THE BEAST EP」から1年ぶりの新作となりますが、今作の制作はいつ頃から始まったんですか?

左からDaiki(G)、Ikepy(Vo)。

Daiki(G) 「THE BEAST EP」の制作が終わったくらい?

Ikepy(Vo) そうだね。「THE BEAST EP」を携えたツアーが終わる前から、曲自体はいくつかできていて。本格的に動き出したのは去年の夏ぐらいからですかね。

──その時点では新作の方向性は見えてましたか?

Daiki 「THE BEAST EP」はわりと正統派のラウドロックというような作品だったので、今回はもっとメロディアスさを強めに打ち出したいなと思ってたくらいで。前作でファンの期待に応えることができたはずなので、そういう点では今回はまたちょっと違う感じで聴き手を裏切りたいという思いはありました。

──なるほど。アルバムタイトルにバンド名を冠するということで、何か強い意思や覚悟を感じるんですが、そのへんの思いは強く込められている?

Daiki 実は……ぶっちゃけそこまで深くは考えてなかったよね。

Ikepy うん。

Daiki 曲がそろっていよいよタイトルを付けようとしたときに、ピッタリなタイトルがちょっと思い付かなかったんです。で、言い出したのは俺なんですけど、今回は本当にメンバー5人のルーツとか好きな音楽とかがうまくまとまっていて、俺たちじゃなきゃ作れない音になったなと。5人それぞれの血が混ざったみたいな……そこでバンド名でもある「HER NAME IN BLOOD」をアルバムタイトルにするのはどうだろう?ってメンバーに提案したら、みんな「確かに」って同意してくれたんです。

Ikepy 名刺代わりの1枚に仕上がったから、バンド名をタイトルにするのはピッタリだと思ってます。

シンプルなんだけど実はやってることは難しい

──アルバムは「HERE WE COME」という2分に満たないショートチューンからスタートします。象徴的なタイトルと曲の短さから、アルバムは勢いよくアッパーな曲で始まるのかと思いきや、めちゃめちゃヘビーなミドルチューンだったのでビックリしました(笑)。

Daiki ははは(笑)。まさにいい意味で裏切られた感じでしょ?

──そうですね。で、2曲目「HALO」以降のアッパーとミドルで緩急を付けていく感じが聴いていてすごく気持ちいいですし、中にはメロディアスなスローナンバーやインストもある。本当にいろんな要素を詰め込みましたね。曲作りはスムーズに行ったんでしょうか?

Daiki そうですね。今回は曲がたくさんできたぶん、逆にボツにした曲も多くて。全体を通してわりと楽しくやれたんじゃないかな。

Ikepy 曲作り自体はたぶん今までの制作の中で一番スムーズだったんじゃないかと思います。

Daiki 「THE BEAST EP」を出してから長いことツアーをしていて、例えばセットリストのここにこういう曲が欲しいとか、そういう次の展開が少しずつ見えてきたんです。今回はその欲求をそのまま形にしたので、スムーズだったのかもしれないですね。

──それこそ「IF I MELT AWAY」みたいにバラードと呼んでもおかしくない楽曲もあって、ちょっとビックリしました。

Ikepy(Vo)

Ikepy ここまで大胆にメロディを歌ってる曲は初めてかもしれないけど、1stアルバム(2010年発売の「DECADENCE」)の頃から楽曲のテイスト的に近いタイプのものはあったんじゃないかな。

Daiki Ikepyのボーカルレンジが「THE BEAST EP」の頃にかなり広がったと感じていて、俺自身メロディアスに歌う曲も好きだからこのタイミングでIkepyならやれるんじゃないかと思って提案したら、Ikepyもやってみたいとすんなり受け入れてくれたんです。

──アレンジで苦労したところはありましたか?

Ikepy やっぱりボーカルをどういうふうに乗せていくかはけっこう考えたかな。

Daiki どの曲もシンプルなパートが増えたので、そこをどうカッコよく聴かせるかはセンスが問われると思っていろいろ考えましたね。過去の曲はわりとテクニカルで複雑な演奏の曲が多かったし、あまりそういう悩みはなかったんですけど、今回はシンプルなのに実はやってることは難しいみたいな。

Ikepy どっちかって言うと、前はボーカルよりも演奏のほうがメインみたいな感じもあったと思うんで。

Daiki でも今回はボーカルも楽器隊も一丸になっていて、一体感がより強まったと思う。そこが今まではあまり出せてなかったので、うまくまとまったかなと思います。

ニューアルバム「HER NAME IN BLOOD」 / 2014年4月23日発売 / 2160円 / TRIPLE VISION / TRVE-0102
HER NAME IN BLOOD「HER NAME IN BLOOD」 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. HERE WE COME
  2. HALO
  3. ZERO (FUCKED UP WORLD)
  4. THIS IS RETRIBUTION
  5. IMPULSES WITHIN
  6. ALL THAT LIVING INSIDE OUR HEAD
  7. DUSTING
  8. CITY OF DESPERATION
  9. VOID
  10. IF I MELT AWAY
  11. THE CLOWN
  12. PRAY TO THE SUN
HER NAME IN BLOOD(はーねいむいんぶらっど)

Ikepy(Vo)、Daiki(G)、TJ(G)、Makoto(B)、Umebo(Dr)からなるメタルコア / ラウドロックバンド。2008年から活動を開始し、BEFORE MY LIFE FAILSとスプリットCDをリリース。同年開催された「Taste Of Chaos 2008 in Japan」への出演を経て、全国各地でライブ活動を展開していく。2010年には1stフルアルバム「DECADENCE」を発表。以降、A Day To Remember、As I Lay Dying、August Burns Red、Heaven Shall Burn、Story Of The Year、Unearthなど数多くの海外アーティストの来日公演でサポートを務めるほか、「SCREAM OUT FEST」など大型イベントにも積極的に出演する。また東南アジアや中国などでの海外公演も敢行。2013年3月には3年ぶりの単独音源となる「THE BEAST EP」をリリースし、初のヘッドライナーツアーを全国15カ所で開催した。2013年末から2014年初頭にかけては、中国でのフェス出演を含むアジアツアーを実施。2014年4月にフルアルバムとしては約4年ぶりとなる「HER NAME IN BLOOD」をリリースする。