ナタリー PowerPush - ゴスペラーズ
“ハモリ”を追求した音楽の旅 5人が振り返るそれぞれの旅行記
楽しくても自己満足で終わらないようにしなきゃいけない
──そして、アルバムのラストを飾るのは村上さんと妹尾武さんが作曲した「Dreamin'」。こちらはアメリカンなロックですね。
村上 ポップアップしたヒューイ・ルイスみたいな、ああいうサウンドで。ちょっとゆったり乗ってる感じ。文字にするとまったく伝わんないけどね(笑)。あとさ、「愛のシューティング・スター」なんかも、去年亡くなったテディ・ペンダーグラスへのトリビュート的な意味を込めて、テディっぽいフレーズとか歌い込みを意識して作ったところもあったしね。作ってるときのそういう感じっていうのは楽しいんですよ。それが自己満足で終わらないようにはしなきゃいけないんだけど。
黒沢 モノマネショーじゃないからね。そのさじ加減はちゃんと考えないと。
村上 ましてや今回はジャンルごとそういうふうな感覚で向き合ってるわけなんで、やっぱりいろいろ危ないわけよ(笑)。
北山 観光客が行ってはいけない区域がたくさんありますからね。
構造的に暴走できなくなってる
──それぞれに歴史のある音楽ですからね。知識もなく興味本位だけで手を出すと痛い目に合いますよね。
村上 そういうこと。たださ、俺たち性格がいいじゃない?
──え? あ、はい(笑)。
村上 だから大丈夫なんですよ。土足では踏み込まないから。
黒沢 最後は性格の話になったっていう驚きの展開(笑)。
北山 いちおう不法入国はしませんからねっていう。
村上 そうそう。さっき酒井が言ってたミクスチャーの話のとおりなんだよね、やっぱり。俺たちは頭下げて入っていくから、丁寧に。で、それはそもそもボーカルグループとして長くやるためにはある程度、必要なところなんだよね、キャラクターとして。
北山 グループでやってる時点でそうなんですよ。僕らは1人ひとりが1つの国というか。そこで何か作るってなったときでも、とりあえず5人で決めましょうっていう。構造的に暴走できなくなってるんですよね。ソロでも歌える人たちがなんで集まるかって言われたときに、やっぱりグループに意義を見出してる人たちじゃないとダメだから。とは言え、逆にグループであることばかりにとらわれてる人たちでは突破力がなかったりするんだけど。
安岡 ある程度のフロントマンシップがないとダメだもんね。
黒沢 でも個性が強すぎる人たちばかりが集まったら分解するだろうし。
性格はいいけど、人は悪いんだよ(笑)
──そういう意味では、ゴスペラーズは奇跡のような5人が集まったってことなんでしょうね。デビューから17年目に突入しているという事実を考えれば。
村上 やっぱ協調性と勤勉さが絶対条件ってことだよ。あと性格の良さね(笑)。ただアカペラが好き、ハーモニーが好きっていうだけでは続きようがないっていうか。こういうグループがなかなか根付かないっていうのがそれを証明してる。ほかのボーカルグループから曲を書いてください、プロデュースしてくださいっていう話はほぼ皆無ですからね。
──やっぱりフォロワーの出現には期待しますか。
北山 それはやっぱりね、シーンが盛り上がってくれたほうがいいし。これを読んで、曲頼んでもいいのかなって思った人たちがいたら、ぜひ声をかけてほしいですよね。
村上 即断るかもしれないけどね。俺を誰だと思ってんだ、みたいな(笑)。
──あれほど性格がいいと豪語してたのに(笑)。
村上 性格はいいけど、人は悪いんだよ(笑)。
酒井 接し方がまったくわからないよね、そんな人(笑)。
──アハハハ。えーと、もう時間ですけど、こんな終わり方で大丈夫ですか?
安岡 全然大丈夫(笑)。
酒井 ナタリー読者ならクスッと笑ってくれるはず。
CD収録曲
- NEVER STOP
- 愛のシューティング・スター
- BLUE BIRDLAND
- なんどでも
- Shall we dance?
- Oh Girl
- 見つめられない
- 恋のプールサイド
- 明日
- 冬響
- Dreamin'
ゴスペラーズ
北山陽一、黒沢薫、酒井雄二、村上てつや、安岡優の5人からなるボーカルグループ。1991年、早稲田大学のアカペラサークル「Street Corner Symphony」内で結成され、地道な活動を展開する。メンバーチェンジなどを経て、1994年にシングル「Promise」で待望のメジャーデビュー。2000~2001年のシングル「永遠(とわ)に」「ひとり」が立て続けに大ヒットを記録し、トップアーティストの仲間入りを果たす。毎年精力的に全国ツアーを行う一方、他アーティストへの楽曲提供・プロデュースやソロ活動なども活発に行っている。