ナタリー PowerPush - GENERAL HEAD MOUNTAIN
これが究極の愛情表現──。アルバム「バタフライエフェクト」
「殺してくれないか」から始まる自分の音楽人生
──それにしてもアルバムの1曲目が、「薊」の「『殺してくれないか』」って一節からはじまるのがインパクト強いなって。
はははは!(笑)
──そこから、曲が進むにつれて柔らかくなっていく曲順ですね。
自分の音楽人生の流れっぽいなと思いましたね。
──最初は「『殺してくれないか』」って気持ちでバンドをやってたんですか?
壊すことが大前提な感じだったんで、お客さんとかにも「なんで観に来てんだ、オラ!」くらいの。何も知らなかったんですよね。
──音楽人生で成長してきたってことでしょうかね。
そうかもしれないですね。人と壁を作らなくなったんで。
──音楽やってなかったら何してたでしょうね?
何してるんでしょうね。(現在暮らしている)宮崎の流れだと、早くに結婚してバツイチかもしれないですね(笑)。
“究極の愛情表現”はカギカッコで始まりカギカッコで終わる
──今回、こんな曲も歌えるんだ!って思った曲もあるんじゃないですか?
ああ、「林檎」に関しては、新たな発見と自信にはなりましたね。せっかく秋に出るから、秋の夜に聴きたい曲っていうことで作っていったんですけど。でも、果たして歌えるのかって思ったんですけど、意外といいかもしれないぞって。
──「天照」もユニークですよね。
これライブで最近やってるんですけどいい感じですね。まだ出してないから誰も知らないのに、(お客さんが)揺れてたりとか。
──あとはなんと言ってもポップに振り切れた「すばらしい日々」。
これは「ポップなのがもう1曲欲しいな、ライブの中でも」って思って。
──佐久間さんプロデュースならではのポップさなのかな、とも思ったんですけど。
この曲は佐久間さんにはサウンドプロデュースをしていただいて、アレンジは僕らでやったんです。
──あ、そうなんですね! 歌詞もわかりやすいですね。
こういうメロディの上で難しいこと歌っても、って思ったんですよね。僕の中で、この曲がアルバムのラストっていう気持ちがあって、次の「本当に僕は、君だけの太陽になりたかったんだ。」でアルバム全体を歌ってみましたっていう。
──エンドロールみたいな感じ?
そうですね。カギカッコで始まってカギカッコで終わるんですよね、このアルバムって。「『殺してくれないか』」で始まり、「本当に僕は、君だけの太陽になりたかったんだ。」の最後の歌詞の「『いつまでも、君を愛してる』」で終わるっていう。どっちも究極の愛情表現ですけど。
──究極の愛情表現をしたいっていう思いは、以前からあったんですか?
僕が一番うまく書けるのは、僕と君とのちっちゃな世界の話なんだなって思ったんですよね。「君」っていうのは女性に限らないんですけど、ちっちゃな世界に落とし込まないと、僕の歌はリアリティが出てこないなって気付いたのも今作でしたね。僕がラブ&ピースって歌ったって誰も反応しないと思いますもん。それは僕くらいの人間は言っちゃいけないのかなって。だったら自分が一番理解できる距離感の世界を歌いたいっていう。
──じゃあすべての歌詞を突き詰めると「僕の君への思い」になる?
そうですね。その中で風景が移り変わっていくっていう。だから全曲ラブソングっちゃラブソングです。形は違えど。
何かはわからないけど、すごい希望に満ちてるので
──「本当に僕は、君だけの太陽になりたかったんだ。」は、曲名も印象的ですよね。君だけの太陽って、おっきいなって思います。
とんでもねえこと書いてしまいましたね(笑)。でもすごい、そう思ったんで。太陽になりてえよって。なんでも照らしやがってって。
──「月かなしブルー」ってアルバムもありましたけど、今まではGENERAL HEAD MOUNTAINって、太陽より月のイメージが強かったですよね。
僕が一番驚いてますね。まさか自分が太陽の歌を書くとは!って。あるんでしょうね、うらやましいなっていうのが。結果(太陽には)なれてないんですよ、その歌の中でも。結局僕は僕なんですけど。
──いろんな面が開かれたアルバムになりましたね。
そうですね。これが何かにつながればいいなってほんとに思います。何かはわからないですけど、すごい希望に満ちてるので。できあがった後にワクワク感があって、これを希望と呼ばずして何と呼ぶ!?って。前作は苦行が終わったなっていう感覚に近かったと思うんですけど、今回はやったあ!みたいに、口に出せる達成感です。ストレスがなかったですしね。歌詞も友達と遊んでて思い付いたりして、「キター! 帰って書くぞ!」って(笑)。全然構えなかったです。
──じゃあ今回は生活の中で楽しんで作ることができた?
はい。僕、このバンドしかしたことがなくて、今までやってきたやり方しかわからなかったんですけど、別なやり方ができるなら、まだまだできることありますし。180度振り切ったものを作ったら、真ん中に戻ったときにまた面白いの作れるだろうなって。
──ちなみに、「バタフライエフェクト」というアルバムタイトルも今までにない感じですね。
新しいことをやったよっていうのをわかりやすく伝えたかったんで。言葉の意味は、蝶々のちっちゃい羽ばたきが元になって、地球の裏で台風が起こる可能性を否定できますか?っていう。カオス理論みたいな。
──なるほど。ジャケットもまたもやキレイですね。
これ、すごいですよね。度肝を抜かれました。デザイナーの打越さんに一度お会いして大まかにイメージを伝えたんです。で、これができあがってきて、見た瞬間、「これだ!」ってすぐ気に入って。その完成度に度肝を抜かれました。
──さまざまな変化を見せられて、ますますこれからが楽しみになりました。
僕、基本、変わることとか失うものが怖くないんです。今までもいろんなものを失ってきたんで。
──ライブも変わってきそうですね。
このアルバムで、今までのライブの隙間を埋めて、もっとおっきなライブがしたいですね。楽曲をかたまりだけでぶつけるんじゃなくて、揺らしながら固めてぶつけていきたいです。
GENERAL HEAD MOUNTAIN(じぇねらるへっどまうんてん)
2000年1月、松尾昭彦(Vo,B)を中心に宮崎で結成。2003年5月に現メンバーであるオカダコウキ(G)、海太(Dr)が加入する。2005年にインディーズレーベルより初音源「追憶の唄々」をリリース。その後も音源制作を重ね、2008年にフルアルバム「月かなしブルー」を発表。椎名林檎「罪と罰」カバーの収録や、マンガ家の魚喃キリコがジャケットを手がけたことなどで話題を集める。その後、2009年11月にシングル「羽」でメジャーデビュー。2010年1月のアルバム「深まる日々に、微笑みを。」が高い評価を受ける中、同年11月にアルバム「バタフライエフェクト」をリリースし、全国ツアー「音楽家とバタフライ」を実施。