ナタリー PowerPush - ふくろうず
J-POPの頂点を目指す! 3rdアルバム「砂漠の流刑地」
ハイロウズの「十四才」みたいな曲が作りたくて
──で、アルバム終盤の「キャラウェイ」という曲では、結論的なことを言ってますよね。
あ、はい。
──「人生はあてのない旅路で、情けない気持ちだし、おそろしい気持ちだし、でも丸いときでも欠けたときでも月を見ていよう」と。
うん、うん。
──キャラウェイという名前はどこから?
高橋源一郎さんの最初の2つの作品がすごく好きで、「さようなら、ギャングたち」の主人公の子供の名前がキャラウェイで……。
──そっちですか! 「グレート・ギャツビー」の語り手(ニック・キャラウェイ)かと思いました。
高橋源一郎さんは「グレート・ギャツビー」から取ったんですかね? 好きそうですもんね。私は「ギャング」がもう、すっごい好きで。「ジョン・レノン対火星人」とあれは……好きなんですよ。
──そして最後の「優しい人」は、これまでのふくろうずにはなかった曲調ですね。
はい、これ作ったときにすごくブルーハーツを聴いてたんだと思います(笑)。あとハイロウズの……「十四才」が一番好きな曲なんですけど、ああいう曲作りたいな、と思ったら、私だとこういう感じになっちゃって。
ヤケクソなんだと思います
──ふくろうずはこれまでの3枚で、ひねったポップスから、どんどんストレートな方向に進んできているようですが。
ああ、そうですね。本当はストレートなポップスをやりたかったんですけど、それってすごく難しいから、最初はうまくできなくて。
──ふくろうずなりのわかりやすいポップスを目指してきた、ということなんですか?
正攻法でいきたい、とは思います。歌詞は相当性格悪いと思いますけど(笑)。ミュージシャンの中には、自分をいろんなふうに見せようって躍起になってる人もいると思うんですけど、私はそこはどうでもいいんです。音楽の中では人からどう見られたいとかあんまり考えないので。
──音楽を通して、いい人に見られたい、みたいな欲求はないと。
いい人……じゃないですからね(笑)。
──その歌詞ですが、今回全体的に脳内麻薬でも出てるんじゃないか、というくらい全能感にあふれていますね。
詞は結構気に入ってて……「砂漠の流刑地」はわりとよくできてるんじゃないかな。変に狙ってないから、素直だと思います。
──その狙ってない感じが、特に前半の全能感につながってるんですかね。
うーん、ヤケクソなんだと思います(笑)。やっぱメジャーだし、もうこれで行くぞ、というヤケクソ感があって。普通の人の4倍くらいヤケクソで生きてるから。
──そのヤケクソ感は良い方向に出てると思います。
ああ、それはうれしいです。
──で、後半の特に最後の2曲が、そのハイな感じから醒めるような歌ですね。パーティの終わりみたいな感覚で。
それがふくろうずの本質ではあると思うんです。
──これまでの作品でもその感覚は一貫してましたよね。
ただ、以前のは曲によっては、ちょっとだけ中2っぽいなーと思って。
──聴いてる側はきっとそこが良いんですよ。
ははは……そうなんですよね。そのギャップを狙って出すのは難しいと思うんで、人間的に成長……成長かわからないけど、つまらなくなる前に、いっぱい曲は書きたいなと思います。
ふくろうず
内田万里(Vo, Key)、石井竜太(G)、安西卓丸(B, Vo)、高城琢郎(Dr)からなる4人組バンド。2007年に東京で結成し、ライブを中心に活動を展開する。2009年12月には初音源となる5曲入りミニアルバム「ループする」をライブ会場等で限定発売。スーパーカーやクラムボン、キセルなどを手がけた益子樹(ROVO他)をエンジニアに迎えたこの作品は、独特の世界観と完成度の高いサウンドで大きな話題を呼び、2010年4月に2曲を加えた全国流通盤として再リリースされる。この全国流通盤をきっかけに人気を全国区に拡大させ、メディアのライブイベントにも精力的に出演。2010年10月にニューアルバム「ごめんね」をリリース。2011年6月に3rdアルバム「砂漠の流刑地」でメジャーデビュー。