ナタリー PowerPush - FoZZtone
10年間のキャリアが生んだ自信と快作
FoZZtoneがニューアルバム「Reach to Mars」をリリースする。
2011年に「NEW WORLD」、2012年に「INNER KINGDOM(内なる王国)」と、近年2枚組の濃密なアルバムを続けて発表してきたFoZZtone。今回のアルバム「Reach to Mars」は先の2枚とは雰囲気が異なり、渡會将士(Vo, G)が明言するとおり「バンドのキャリア史上最も身軽で爽快なロックンロールアルバム」に仕上がっている。
今年バンド結成10周年というアニバーサリーイヤーを迎えた彼らは、購入者が収録曲と曲順を選べるという企画“オーダーメイドアルバム”のベスト盤、EMIミュージック・ジャパンに所属していた2007年から2009年までの楽曲を厳選したベスト盤、そしてアニメ「遊☆戯☆王ZEXAL II」のエンディング曲としてオンエア中のシングル「GO WAY GO WAY」と、3月から精力的なリリースを続けている。今回のインタビューではこの10年間を振り返りつつ、バンドの現在地や今考えていること、そして「Reach to Mars」の制作秘話を語ってもらった。
取材・文 / 伊藤実菜子 インタビュー撮影 / 佐藤類
2枚のベストアルバムを出した理由
──FoZZtoneは今年結成10周年ということもあり、“オーダーメイドアルバム”のベスト盤「O. M. A. BEST」やEMIミュージック・ジャパン在籍時のベスト盤「Early Best Album 2007-2009」とリリースが続きましたね。まずこれらのベストアルバムをリリースした経緯から教えていただけますか?
渡會将士(Vo, G) EMIのベストは、いまだに仲良くさせていただいてるEMI時代のディレクターが「出したい」って提案してくれたんで、「じゃあ出して」って。単純にそういう感じですね。
──特に反対意見もなく?
渡會 そうですね。ベスト盤を出すタイミングが今だって思ってくれたっていうのは、EMI的にもFoZZtoneの資産価値を見出してくれたってことなので。それはとてもありがたいことだと思ったし、以前関わってくれた人たちとまだつながれてるいい証拠だろうなって。10周年のタイミングだし、一度振り返ってもいいかなって思いまして。
──では「O. M. A. BEST」のほうは?
渡會 「O. M. A.」は今年3年目なんで、1回区切る意味で出しました。企画自体はとても面白かったんですけど、けっこう勢いで始めた部分もあって前の2年が本当に大変だったので。
──私はあの2枚には、今までの自分たちを一度清算してまた新たな気持ちで活動していこうという意図があったのかと思ってました。
渡會 そう言ったほうがカッコいい感じになるんであればそういうふうにしたいんですけど……ベスト盤に入れる未発表曲、「O. M. A.」用の新曲、「GO WAY GO WAY」、「Reach to Mars」のレコーディングは全部同時にやってたんですよ。過去を振り返る作業と、次のモードを考える作業を同時にやっていて。だからそこまで明確に自分たちをバッツリ分けるつもりはなかったんですよね。
「ギターロックバンド」になりたくなかった
──「Early Best Album 2007-2009」は2007年から2009年までの楽曲が収録されていますが、過去の自分たちの曲を改めて聴いてみて何か感じることはありましたか?
渡會 難しいなあと思いましたね。あの当時あの技術で、なんでこんなにテクニカルなコード進行でやっていたんだろうかっていう。なんかギリギリな人たちだなあと(笑)。
──(笑)。客観的な意見ですね。竹尾さんはいかがですか?
竹尾典明(G) やっぱすげえ背伸びしてる感じはありましたね。どの曲も隙間隙間を狙っていくような感じで作ってたっていうか。「これよりそっちに行くと、ロックというジャンルになるからもうちょっとだけこっち行こう」ていうような感じでやってたから難しいコード進行になってしまってたんで。やっぱりメジャーだからがんばろうとしてたんやろうなあと思います。
──「ロックというジャンル」を避けていたんですか?
竹尾 そうですね。イメージ付けされるのがイヤやった。「ギターロックバンド」っていう、よくわからないカテゴリに入りたくなかったんでしょうね。だからいろいろ変なことやったり(笑)、いろんなジャンルをやってみたりとか。
渡會 あの当時みんなクソだったからね、俺たちに限らず。ほんと“下北系”のバンドがバーッと増えて、みんな同じように(ギターの)倍音で「デデデデデー」って動いて。「それもうみんなやってっから! わかったから!」って感じだった。
──そういうシーンに対する反骨精神もあった?
竹尾 そうだと思います。当時から一貫して言ってたのは、日本の「ギターロック」ってギターロックじゃないよね、だってちゃんとギター弾いてる人いないじゃんっていう。ギターはただの伴奏楽器として存在してるだけで。だから俺らは曲にしろフレーズにしろなんとかギターを際立たせようとして、「これがギターロックだ」みたいなことを一生懸命やってたんでしょうね。世間的には革ジャン着たり、ぎゃいぎゃい言ったりするのがロックみたいに捉えられてますけど、そういう「ロックバンドはこうあるべき」っていう色にも染まりたくなかった。
渡會 ちょうどあの当時はCDバブルが1回終わったときだったんで、バンドがみんな中途半端な知識でしょうもないセルフプロデュースをがんばって始めた時期で。そのセルフプロデュースが、“ザ・和メロ”みたいなのとかずっと同じフレーズをループし続けるとか、とりあえずみんな前に倣えみたいなやり方だったんですよ。みんながもうちょっと自分たちの個性を信じればよかったんですけど。あの当時デビューしたバンドたちは、みんな「何かの型にはまらなければいけないのではないか」と考えてたと思います。
──でもFoZZtoneは型にはまりたくなかったと。
渡會 そうですね。ラジオとかで「ギターロックバンドFoZZtoneです!」って紹介された瞬間にカチンときたりして。別にDJさんは全然悪気なく言ってるんですけど、「ギターロック!? ギターロックの前に俺そもそもロックやってる気ねえし!」みたいな(笑)。「歌歌ってるだけだし」って。
竹尾 THE ALFEEだし俺ら。
菅野信昭(B) それは違う、それは絶対違う(笑)。
竹尾 でもあの人たちには1曲聴いただけでTHE ALFEEだって思わせるようなオリジナリティがあるじゃないですか。ああいうのはすごいなあと思いますね。俺らも最近はよく、すごく個性的なバンドだっていろんな人に言われるんで、30代になってやっとそういうオリジナリティを見つけられてきたのかなって感じはします。当時は若かったし、いろんな人からいろんな情報がきていろいろ悩んできましたけど、結局そんなのなんにも聞く必要なかったなって思う。さっきわっち(渡會)も言ったけど、自分たちの個性をもっと信じればよかった。でもその微妙なバランスで、昔の曲は面白くなってんのかなあっていう気はしますけどね。
- ニューアルバム「Reach to Mars」 / 2013年6月5日発売 / 2800円 / SPACE SHOWER MUSIC / PECF-3050
- ニューアルバム「Reach to Mars」
収録曲
- 世界の始まりに
- 情熱は踵に咲く
- Master of Tie Breaker
- She said
- Shangri-La
- BABY CALL ME NOW
- 1983
- ニューオーリンズ殺人事件
- 21st Century Rock'n'roll Star
- Reach to Mars
FoZZtone(ふぉずとーん)
2001年に竹尾典明(G)が渡會将士(Vo, G)と前身となるバンドを結成。2002年に越川慎介(Dr)、2003年に菅野信昭(B)が加入し、2007年にミニアルバム「景色の都市」でEMIミュージック・ジャパンよりメジャーデビューを果たす。2008年、1stフルアルバム「カントリークラブ」を発表。2009年には亀田誠治がプロデューサーとして参加した2ndフルアルバム「The Sound of Music」をリリースした。2010年、越川がバンドを脱退。以降はサポートドラマーに武並“J.J.”俊明を迎えて活動している。2010年から、ユーザーが収録曲と曲順を決定できるという“オーダーメイドアルバム”のプロジェクトを開始。2011年に「NEW WORLD」、2012年に「INNER KINGDOM(内なる王国)」と、組曲形式の楽曲をDISC 2に収めた2枚組のアルバムをリリースした。2013年にバンド結成10周年を迎え、“オーダーメイドアルバム”やEMI在籍時代のベストアルバムを立て続けに発表。6月には10曲入りのフルアルバム「Reach to Mars」をリリースする。