音楽ナタリー Power Push - FOLKS

バンドの新たな幕開けを告げる 北海道産ミニアルバム「BLUE & YELLOW」

FOLKSがメジャー3作目となるミニアルバム「BLUE & YELLOW」を完成させた。

岩井郁人(Vo, G)、岩井豪利(G, Vo)、高橋正嗣(Programming, Syn, Cho)、小林禄与(G, Syn, Per, Cho)の4人編成となってから初めての作品となる今作は、クリエイターやエンジニアの出身地、ミュージックビデオの撮影地も“北海道”にこだわった1作。マスタリングもメンバーと同郷の砂原良徳が手がけている。なぜ彼らは、本作で徹底的に北海道にこだわったのか。その理由を、バンドの近況とともに聞いた。また特集の最後には、マスタリングを手がけた砂原からのコメントも掲載している。

取材・文 / 小野島大 撮影 / 西槇太一

メンバー活動休止に伴う変化

──3枚目のミニアルバム「BLUE & YELLOW」がいよいよリリースされますが、今作からベースの野口一雅さんが活動休止なんですね。

FOLKS

岩井郁人(Vo, G) はい。脱退したわけではないですが、無期限の活動休止です。今年の5月に「"In Bloom" Tour 2015」というワンマンツアーをやったんですけど、そのあたりから野口に相談されてたんです。中学校ぐらいからずっと音楽しかやってこなかった人なんですけど、「1回立ち止まって音楽以外のことを経験したい。なので音楽活動をストップしたい」という相談を受けていて。お互い悩んでさんざん話し合った結果、だったら一旦休めば、と。いつ再開するとか決めないで。

──ずっと一緒にやってきた仲間ですよね。寂しくないですか?

小林禄与(G, Syn, Per, Cho) でも今も毎日のように会ってるんですよ(笑)。幼なじみなんで、遊ぶときは野口も誘うし。

岩井豪利(G, Vo) そうだね。

──音楽的にもベースが抜けたのは痛手じゃないですか?

岩井郁人(Vo, G)

郁人 最初はそうでしたね。ライブですね、一番大きく変わったのは。彼がいないライブはまだ1回しかやってないんですが、今後もサポートを入れずにやっていくつもりです。僕らは通常のロックバンドの編成とはちょっと違うので、小林がシンセベースを弾いて補って。曲作りの段階から、全員がそれぞれ役割分担を決めることなくベース弾いたりシンセ弾いたり、パーカッションを担当したりしてるんで、その流れの延長線上で臨機応変にやってます。対応できるようになるまでちょっと苦労しましたけど、まったく問題ないですね。長い間ずっと野口と話し合ってきたことだし、野口が抜けたあとどうしていくかもずっと考えてましたから。

北海道から見た北海道を表現したい

──なるほど。安心しました。今作は初のベッドルームレコーディング(自宅録音)、つまりFOLKSが共同で生活する恵庭の一軒家“FOLKS HOUSE”でレコーディングして、ミックスも自分たちでやって、ジャケットもミュージックビデオもすべて北海道在住のクリエイターとともに作ったというセルフディレクション作品ですね。

郁人 はい。今までの作品では「街」っていうものをフィーチャーしてて。「NEWTOWN」「HOMETOWN STORY」「SNOWTOWN」と出してきて、自分たちの街を見てほしいというつもりでやってきたんですけど、もっと北海道にいろんなクリエイターがいるんだってことを見せたかったんです。宅録に挑戦したのも、少し関わる人を減らして、もっと個人的な空間で音を作りたいという思いからですね。今までは東京のスタジオで、東京のスタッフと一緒にやってきたんですけど「すべて北海道完結でものを作りたい」というのが「SNOWTOWN」をリリースしたあたりからずっとあって。

小林 ここ最近、北海道でライブをする機会が多いんですけど、僕たちに興味を示してくれる若いバンドがすごく増えてきたんですね。「こういう音楽を聴いてるんですけど」とか「こういう音楽を目指してます」とか。「FOLKSのこの曲のシンセって何使ってるんですか」とか。そうやって僕らに興味を持ってくれる若いバンドがすごく増えてきてるんです。あと北海道にいてインディペンデントな活動をしてるのに、メジャーを通じて道外にも発信してる、という意味で後輩のバンドに勇気を与えているらしくて。自分たちがデビューする前とは全然違う活動の形やシーンが北海道に生まれつつある気がして。

──FOLKSを中心とした新しいシーンが誕生している。

高橋正嗣(Programming, Syn, Cho) そう。北海道の音楽が活気付いてきてますね。

小林禄与(G, Syn, Per, Cho)

小林 そういう子たちに「こういう人たちがいるんですけど会ってみませんか?」とか言われることも多い。東京での活動を経験して、改めて北海道でやっていくことを目指してる人たちが、音楽のジャンル以外でもいろいろいる。そういう人たちと会う機会がすごく増えたんです。そこからこういうアルバムを作ってみたい、という気持ちに自然となっていきましたね。

郁人 「SNOWTOWN」の頃から、FOLKS HOUSEでレコーディングしてミックスだけ益子(樹)さんにお願いして、というカタチではあったんです。ただジャケットのアートワークとかMVが“東京の人たちから見た北海道”的な目線で作られてた部分もあったと思うんです。そうじゃなくて、北海道から見た北海道、北海道の人しかわからない北海道を表したかったんですね。例えば今回のMVは北川陽稔さんという方に撮ってもらったんですけど、俺たちでも知らないような、本当に北海道が好きで散策してるような人じゃないとわからないような僻地に一緒に行って撮影したんです。音の面でも、北海道の音楽学校でエンジニアの講師をしてて、昔から“北海道の音”を作ってるアーティストが頼んでいる鶴羽宏一さんと一緒にミックスをしたり。そういうふうに北海道の内側にいる者の目線から外側に届けたい、というのがありました。

──外から見た北海道ではなく、内側から見た北海道を表現したかった?

郁人 そうです。あともう1つ、地元の恵庭だけじゃなく「北海道のバンド」としてアピールしたいというのがありました。さっき禄与が言ったように、FOLKS単体で北海道から東京に行くんじゃなくて、1つのまとまりのあるシーンとして、北海道のクリエイティブのよさを道外に伝えていきたい。

──今回制作に携わった人たちも、その過程で出会ったんですか?

郁人 そうですね。今までは音のプロデュースは自分たちでやってきたけど、今回はビジュアル面も自分たちでやりました。いろいろ調べて、一緒にやりたい人に自分たちで連絡して直接会いに行って打ち合わせして。

──そしてマスタリングがまりん(砂原良徳)さんだから、まさに北海道完結ですね。

郁人 マスタリングは誰に頼むか迷ったんですけど、やっぱりまりんさんしかいないと思って。

ミニアルバム「BLUE & YELLOW」 / 2015年10月21日発売 / 1900円 / Ki/oon Music / KSCL-2655
「BLUE & YELLOW」
収録曲
  1. BLUE & YELLOW
  2. 夜の砂漠と月の光
  3. D2R
  4. 六畳銀河
  5. 裸足のシンデレラ
FOLKS(フォークス)
FOLKS

2013年1月に結成された岩井郁人(Vo, G)、岩井豪利(G, Vo)、高橋正嗣(Programming, Syn, Cho)、小林禄与(G, Syn, Per, Cho)、野口一雅(B, Cho)からなるバンド。2015年9月より野口が活動休止に入り、現在は4人編成で活動中。メンバー全員が楽曲制作を行い、ライブではサポートドラマーを加えた編成でパフォーマンスを行う。2013年3月に初ライブを開催し、同月に自主制作盤「Take off」をリリース。一般公募枠で「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演し、北海道内で着実にその名を広める。2014年2月にキューンミュージックよりメジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」を発表。2015年2月にミニアルバム「SNOWTOWN」、10月に「BLUE & YELLOW」をリリースした。岩井郁人と岩井豪利は兄弟で、メンバー全員が北海道恵庭市で共同生活をしながら活動を行っている。