ナタリー PowerPush - FOLKS

北海道を席巻中!恵庭市在住、新世代バンド

兄はロック、弟はロック以外

──順番が逆になりましたが、最初の頃の話をお聞きします。FOLKSを始めるきっかけは?

FOLKSの地元である北海道恵庭市恵み野の風景。

郁人 この3人(小林、野口、郁人)と、ミミアン(高橋)と兄ちゃんの2人が、もともと別のバンドでやってたんです。で、僕と野口がガリレオを辞めて、もともとやっていたメンバーと一緒にやりたいと思って恵庭に戻って。その頃は別のバンドだったけど、でも同じ恵庭の人間として、みんなで音楽をやりたい。僕の考えとして、曲作りができる人間が1人だけでじゃなく何人もいるようなバンドをやりたくて。それぞれが作った曲に刺激を受けたいと思ったんです。

──で、一軒家を借りて共同生活を始めたんですね。

郁人 はい。そうして空間を共有していくうちに、兄ちゃんやミミアンが作る曲が聞こえてくるんですね。壁も薄いし。その頃にできたのが、兄ちゃんの「River」で。それは90年代UKロックっぽい感じだった。ミミアンはグランジが好きで、彼ら3人の好みは僕とは少し違うから、一緒にバンドができるとは思ってなかったんです。でも「River」を聴いたとき、これにオレの好きなエッセンスを加えれば、もっと面白いモノになるなと直感したんです。で、楽曲をアレンジさせてくれって頼んで。それで、できあがった「River」を聴かせたらみんな盛り上がっちゃって。まさか2人のエッセンスが混ざり合うとは思ってなかったから。それがバンド結成のきっかけですね。こういう作り方でやっていけば、「これは一緒にできるな」と思いました。兄ちゃんの好きな音楽を僕もどんどん聴いて、僕の好きな音楽を兄ちゃんも聴いて。それをみんなで共有して、いろんな音楽性が混ざり合って面白い音楽がどんどん作れるんじゃないかと思いました。

──お兄さんとしては、自分の曲に弟さんの手が入ってみてどう感じました?

岩井豪利(G, Vo) 僕はUKロックやグランジみたいな音楽しかやってこなかったんで、弟のアレンジ力にかなり驚かされて。自分の曲ではあるんだけど、まったく別の曲に聞こえて。新しいものができたんだなって。うれしかったですね。

──郁人さんはそもそもどういうものを聴いてきたんですか?

郁人 僕はレンタル店にあるヒットチャートを片っ端から聴いてたんです、小学校の頃から。超ポップな音楽が昔から好きで。今はそこからいろんなところに派生していって、北欧やヨーロッパの音楽を聴いたり、いろいろ聴いてたんですけど、根本にロックがなくて。

──ほう。

郁人 ロックだけは避けてきた、みたいなところがあって。ロックって大雑把で、ちゃんと構築されてないものだって勝手に思い込んでたんです。僕はピアノを習ってたんで、フォークとかクラシックとか、アンサンブルとしてちゃんと構成されているものが好きだった。そこはちょっと兄ちゃんと違うんです。兄ちゃんは兄ちゃんで不良……(笑)。

豪利 半分不良だったかもしれないです(笑)。

小林禄与(G, Syn, Per, Cho) 昔ごはんを一緒に食べたときにミミアンに「酒や煙草やらないなんてロックじゃねえ」ってガチで言われて(笑)。で、何聴いてるのって聞かれて、「Foo Fightersです」って答えたら「酒と煙草やってから聴かなきゃダメだぜ」って(笑)。「とりあえずNirvana聴け」って言われて(笑)。

──中2っぽいですね(笑)。

高橋正嗣(Programming, Syn, Cho) 大口だけ叩いて何もできないんですよ。

一同 あはははは(笑)。

検索しまくってロックを吸収

──じゃあロックな生き方に憧れてた兄ちゃんたちと、そんなのはダセえと思ってた弟さんたちが出会って、FOLKSが生まれたと。

郁人 そうですね! 僕も兄ちゃんの曲を聴いて、ロックを調べたんですね。それで兄ちゃんは、僕が教えてあげたLogic Pro(※アップル社の音楽制作ソフトウェア)っていうDTMソフトで曲を作ってきたんですけど、覚えたてでいろいろ楽器を使ってみたかったらしく、シンセとかめちゃくちゃ使ってて。元はロックな曲なのに、なんだか変なことになってるんですよ。僕はこの曲はもっとロックなほうがいいと思って、自分なりにロックを調べて、ロックプラス僕らのエッセンスを加えようと思って。UKロックだとテープシミュレーターとかで音を汚したり声を歪ませたりしてるんで、兄ちゃんの曲にそれやったら絶対合うのにな、と思ったんですよね。それで自分なりにロックを研究して、アレンジしてみて。

FOLKSの地元である北海道恵庭市恵み野の風景。

豪利 そしたらロックに戻ったみたいな。

郁人 案外ロックってカッコいいなと思って。

──ロックな人がロックっぽくない曲を作って、ロックじゃない人がそれをロックにしようとしたと。転倒した感じが面白いですね。

郁人 そうそう。

豪利 だからうまく合わさったのかもしれないですね。混ざり合って。お互い近付こうとしてた部分はあったし。

郁人 それがきっかけになって、別の人の組み合わせでも同じことが起こってるんですよ。野口だったらブラックミュージックが好きで、こっちもいろいろ調べて。

野口 こんなカッコいいのがあるよって教え合ったり。

郁人 ほんとにそれぞれ違うエッセンスがあるんだけど、それを共有していく間にお互い近付いて混ざっていくという。

──いちいち調べるのが面白いですね。

郁人 はい、検索しまくって。

──今はネットで簡単に聴けるから。

郁人 情報が身の周りにありすぎるから、かえってボケっとして取りにいかない人もいるんだろうけど。逆に恵庭市だと車で何十分もかけないとCDショップに行けない。その気になればパソコンさえあればなんでも調べられるけど……。

──そこで受け身になっていたら何も入ってこないし、知らないままで終わってしまう。

郁人 はい。情報過多な状況をうまく使わない手はないと。テレビから垂れ流される情報を、ただ観るだけの人もいる。僕は小学校の頃テレビばかり観てた時期もあったんですけど、それだけじゃ何も手に入らないと気付いて、ちょっと気になることがあったらすぐ調べることにしてます。

──それぞれのメンバーがいろんなものを取り入れて、それを全員で共有することで、FOLKSの音楽ができあがる。

郁人 そうですね。曲作りもいろんな形があって、例えばミミアンが作ってくるメインフレーズを禄与が1曲にしたり。「Good-bye, friends」は兄ちゃんが作ってきたラッパのフレーズを僕がシンセに置き換えて、それでみんなにアレンジを任せて、僕は歌詞を書いたんです。いろんな作り方を試した曲なんです。これが今ライブでのアンセムになってて、みんなが演者としてアピールできる曲でもある。ライブで一番衝撃的な曲で、全員で作った曲がアルバムの中でそういう立ち位置にあるっていうのは、いいなと思ってます。そういう曲を演奏することでライブを通じて演者としてステップアップする中で、ライブを「再現の場」というだけじゃない、ポジティブなものとして捉えられるようになってきた。そこから急にライブがいいねって言われるようになったんです。特にここ2~3カ月ぐらいですごく手応えを感じるようになってきたので、それがさらにフィードバックするであろう次の作品はもっとよくなると思います。

メジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」/ 2014年2月12日発売 / Ki/oon Music / KSCL-2354
[CD] 2310円 / KSCL-2354
収録曲
  1. Everything is Alone
  2. Two young
  3. FOREVER
  4. Good-bye, friends
  5. River
  6. You're right
  7. Replica
FOLKS(ふぉーくす)

2013年1月に結成された岩井郁人(Vo, G)、岩井豪利(G, Vo)、高橋正嗣(Programming, Syn, Cho)、野口一雅(B, Cho)、小林禄与(G, Syn, Per, Cho)からなる5人組。メンバー全員が楽曲制作を行い、ライブではサポートドラムを加えた6人編成でパフォーマンスを行う。2013年3月に初ライブを開催し、同月に自主制作盤「Take off」をリリース。一般公募枠で「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」にも初出演し、北海道内で着実にその名を広める。2014年2月にキューンミュージックよりメジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」を発表。なお岩井郁人と岩井豪利は兄弟で、メンバー全員が北海道恵庭市にある新興住宅地「恵み野」に住んでいる。