ナタリー PowerPush - FLiP
待望メジャー1stアルバム完成 進化を遂げたFLiPの世界に迫る
「かわいいでしょ、好きになって」とお願いするつもりはない
──前作のミニアルバム「DEAR GIRLS」というタイトルは、同世代の女の子に共感してもらいたいという思いでつけたということですけれど、その思いは今も変わらない?
サチコ 変わらないですね。
──でも、FLiPって、歌詞もジャケットの雰囲気も、わかりやすくカラフルでガーリーなものとは対極なイメージですよね。「カートニアゴ」やアルバムのジャケ写も、キュートというよりはダークなもので。そこには他のバンドとは違う、FLiPならではの聴き手との“つながり方”があるんじゃないかな、と思うんですよ。
サチコ それはもう、あると思います。FLiPには今までやってきたとげとげしさがあるけど、それでも「みんなとつながりたい」という気持ちはますます増してきてるから。女の子にしかわからない気持ちもあるし、女の子だから歌えることもあるし、そういうものはずっと大切にしている部分なんです。それに、どの曲でもFLiPが持っているロック感は決してなくしちゃいけないと思っていて。それこそ、写真やイメージにダークな部分が入っているのは、そこは妥協する場所じゃないと思うからなんです。「かわいいでしょ、好きになって」とお願いするつもりもないし。例えば、世の中には“泣き歌”とか恋愛の歌というようなものもたくさんあるじゃないですか。だけど「泣けるでしょ? この歌」とか「共感できるでしょ?」とか、そんなふうに提示するのはFLiPじゃないと思うから。どこかで、ロックの強さを信じながらやってるから、「ナガイキス」のような恋愛の歌でもソリッド感があるんじゃないかと思います。
──なるほどね。そこに関しては、僕は以前と比べてサチコさんが腹を括ったか、開き直った部分があるんじゃないかと思うんです。「どうせ暗いですよ!」みたいな。
サチコ ああ! それ、正解です! 開き直ってますよ(笑)。
──それは何かきっかけがあったんでしょうか?
サチコ 自分が根暗じゃない、暗くないって否定し続けるのが辛くなったんですよ。それを踏まえた上で過ごすようになったら、自然に笑えるようになって。ああ楽だなって感じたのがきっかけですね。
──そうやって開き直ったからこそ、他のメンバーやいしわたり淳治さんが書いた歌詞を歌うのもOKだと思えるようになった?
サチコ なりましたね。結果、作品が良ければ幸せなことだと思って。いいアルバムを作ろうっていう気持ちがあれば、最終的に自分のエゴはかき消されていくんです。足元ばかり見ていると、「自分がやりたいことは?」とか「歌いたいことは?」とか考え始めるんですけれど。それも大事だけれど、やっぱりFLiPとしていい1枚を作りたいと思うから。
歌詞にはそれぞれの性格が表れている
──今回のアルバムでは、サヤカさんとユウコさんも歌詞を書いていますよね。それぞれの書く歌詞にはどんなイメージがありますか? まずサヤカさんはアルバムでは「雨の女」と「す・て・きReaction」と「平成ジュラシック」を書いてますけれども。
ユウコ 面白いなって思いました。サチコと全然タイプが違うんです。途中で書いてる段階を見たら、とにかく何にも縛られてない。楽観的というか、もともとの明るい性格が表れてる感じがしましたね。ちゃんとこうやって形にまとまってよかったです(笑)。
──ユウコさんの「革命前夜」はどうでしょう?
サチコ 歌詞を読んだときには、文系より理系な人が書く詩という感じがしましたね。イメージが男っぽいというか、サバサバした部分もあるし、潔いところがあって。そういう性格が出てる印象がありました。
──では、いしわたり淳治さんが書いた「カートニアゴ」と「Oh Darling!」の歌詞についてはどう思います?
サチコ 風景描写がすごく得意な方だなって思います。絵が浮かんで流れていくんです。
ユウミ 視点が多いよね。見方が多いというか。
──実際、サチコさんの歌詞に淳治さんから「もっとこうするといいんじゃない?」というようなアドバイスを受けることもありました?
サチコ 土台となる自分が書いた歌詞を見てもらうんですけど。「サチコが言いたいことってこういうことでしょ?」ってジャストで言い当てるんです。それで、自分たちのカラーをちゃんと引き立ててくれるんですよね。
故郷を思う気持ちでアルバムを締めくくった
──では、今のFLiP、このアルバムにおいてのサチコさんの歌詞はどう変わってきたと思います?
ユウミ インディーズの頃の歌詞はすごくストレートで、直球な感じだと思っていて。サチコがそこから人生を歩んできて、考え方も変わったのかなって思います。より伝わりやすくなってる歌詞だと思う。
ユウコ 「ナガイキス」とかは、今まで見せなかった部分を書いてるから。新鮮ですね。
サヤカ 変わらない部分もあるんですけど、また違う人間味が出てきた気がします。
──以前は“叫び”だったのが、より作家的に言葉を書くようになった印象が僕にはありますけれども。例えば「ユレウタ」に「国道沿いのファミレス ここが世界の果て」っていう1節がありますよね。この1行で、すごく情景が伝わってくるんですよ。きっとそのファミレスは寂れてるだろうな、っていう。
サチコ うんうん。お店に人がいないんですよ。従業員もやる気ないんです(笑)。そういう深夜のファミレスでした。
──そういうところは、FLiPというバンドが進化したポイントなんじゃないかと思います。
サチコ 以前のままだったら、作詞も行き詰っていたと思いますね。あれは思春期だからこそぶつけたかったというか、自分の感情をコントロールできなかった時期の歌詞なんで。今はより多くの人にFLiPの音楽を聴いてほしいと思うし、幸せになったり笑ってほしいって思えてきた。そういう心境だから、素直な部分を出していこうと思えたり、自分が持っていた重たい部分を、ちょっと下ろそうと思えたんですよね。
──じゃあ最後に、アルバムタイトルの「未知 evolution」はどういうところからつけたんでしょうか?
サチコ これは、FLiPの進化は未知数であってほしい、っていう気持ちが込められてるんです。ずっと音楽していくなかで、どんどん変化して、進化していきたいという。
──ということは、このアルバムは完成形ではない、ということですよね。
サチコ そう。だから「茜」が最後にあるんです。カッコよくて激しい曲で最後を締めくくるのもアリだと思うんですけれど、そうはしなかった。これからFLiPは上京して沖縄を離れるんですけれど、沖縄を大切に思う気持ち、故郷を思う気持ちを、この「茜」で歌っていて。帰りたいけど帰らない、ここでがんばるという気持ちを歌っているんです。それでアルバムを締めくくったんです。だから今は、この曲が次の作品へのブリッジになって、今後につながっていけばいいなと思ってますね。
LIVE INFORMATION
FLiP 1st Album「未知evolution」リリース記念 ~ひ、と、の、ざま!! TOUR~
- 2011年6月2日(木)
埼玉県 HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3 - 2011年6月3日(金)
栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2 - 2011年6月7日(火)
京都府 京都MOJO - 2011年6月8日(水)
岡山県 岡山CRAZYMAMA 2nd ROOM - 2011年6月10日(金)
高知県 高知X-pt. - 2011年6月11日(土)
愛媛県 松山サロンキティ - 2011年6月12日(日)
香川県 高松DIME - 2011年6月18日(土)
北海道 札幌cube garden(AIR-G' NOW&NEXT vol.5) - 2011年6月21日(火)
兵庫県 神戸太陽と虎 - 2011年6月23日(木)
鹿児島県 鹿児島SR HALL - 2011年6月25日(土)
長崎県 長崎DRUM Be-7 - 2011年6月26日(日)
福岡県 福岡DRUM SON - 2011年6月28日(火)
広島県 広島Cave-Be - 2011年6月30日(木)
石川県 金沢vanvan V4 - 2011年7月2日(土)
新潟県 新潟RIVERST - 2011年7月6日(水)
静岡県 浜松FORCE - 2011年7月7日(木)
愛知県 名古屋APOLLO THEATER - 2011年7月19日(火)
東京都 Shibuya O-WEST<ワンマン> - 2011年7月28日(木)
沖縄県 桜坂セントラル
FLiP(ふりっぷ)
2005年に沖縄県那覇市で、サチコ(Vo, G)、ユウコ(G, Cho)、サヤカ(B, Cho)、ユウミ(Dr, Cho)の4人が結成したロックバンド。地元のライブハウスで精力的なライブを展開し、2008年6月に1stミニアルバム「母から生まれた捻くれの唄」をリリース。同年8月には「SUMMER SONIC 08」への出演を果たす。2009年3月にはアメリカ・テキサスで開催された「SXSW 2009」に出演。海外でも注目を浴びた。2010年2月、ミニアルバム「DEAR GIRLS」でメジャーデビュー。ガールズバンドの枠を超えたエネルギッシュなサウンドで、同世代の若者を中心に着実に人気を上昇させている。