ナタリー PowerPush - FLiP
待望メジャー1stアルバム完成 進化を遂げたFLiPの世界に迫る
骨太なサウンドと熱量の高いライブパフォーマンスで着実に支持を高めてきた沖縄発のガールズロックバンド、FLiP。TVアニメ「よりぬき銀魂さん」の主題歌に抜擢されたシングル「カートニアゴ」も評判を呼んだ彼女たちが、初のアルバム「未知 evolution」をリリースする。
もともと沖縄では、米軍兵士の集まるライブハウスで自分たちの腕を鍛えてきたという彼女たち。今回のアルバムは、その頃から培ってきたヘヴィネスやとげとげしい感性を失わないまま、心地良い解放感を得たような作品だ。スリリングな疾走感に満ちたラブソングの「ナガイキス」や「革命前夜」など、刺激的な曲が集まっている。
アルバムのリリースにあわせ、これまで住んできた沖縄を離れ東京進出も果たす4人。「カッコいい女の子のバンドを組みたい」という動機で始まったバンドは、果たしてどんな成長を遂げたのか。
取材・文/柴那典
「カートニアゴ」は突破口になった
──新作はすごくサウンドの抜けのいいロックアルバムだと思いました。言葉も音も、届きやすくなっている感じがします。
ユウコ(G, Cho) おお!
──昨年にミニアルバム「DEAR GIRLS」でデビューしてからここに至るまで、きっといろいろ試行錯誤もあったんじゃないか、と思うんです。そして「カートニアゴ」は大きなきっかけになった曲なったんじゃないか、と。どうでしょう?
サチコ(Vo, G) 「カートニアゴ」ができてよかったって思ってます。この曲、ライブですごく盛り上がるんですよ。いろんな人がテレビや街中を通して聴いてくれたのもあるし、みんなが口ずさんでくれるフレーズのある曲なので。一体感が増すんですよね。だから、まさに突破口になったと思ってます。このシングルをきっかけにいろんな人がライブに足を運んできてくれるようにもなったし、曲としても新しい切り口だったから。
──どういう面が新しかったんですか?
ユウコ それまでは、サウンドを作るときも、変にこだわりすぎてたところがあって。
ユウミ(Dr, Cho) 枠に捕われすぎてたというか。そこを切り開けた感じはあります。
サヤカ(B, Cho) ストレートでわかりやすい曲にしようというコンセプトを持ったこと自体が、FLiPの中では変化だと思います。今までそういう曲はなかったんで。
──じゃあ、それ以前はどういうところを目指して曲を作ってたんでしょう?
ユウミ カッコいいということをひたすら突き詰めてました。
サチコ しかも、他のバンドにないカッコよさを目指してたんです。だから、それがキャッチーなものにはなってなかったところもあって。
自分のエゴや欲求をコントロールできるようになった
──沖縄の地元のシーンには結構影響を受けたって言ってましたよね。それはどういう影響でした?
サチコ 沖縄はUSロックが強くて。ライブハウスに行けばメタルとかハードコアとかスクリーモとか、汗が飛び散るようなライブをするバンドマンが周りにいたんですよね。高校生のときからそういう先輩も見てきたし、でも街中では洋楽も民謡も流れてる。そういうミックスされた音楽環境がベースにあると思います。
──もともとFLiPが鳴らしていたのは、決してユルい音楽ではないですよね。それは単に音が激しいだけじゃなくて、歌っている内容とか感情もストイックだし、絞めつけられているような感覚がある。それはサチコさんから出てくるものなんでしょうか?
サチコ 歌詞の世界観はそうかもしれないけど、出してるサウンドは個々が出してるものだから。4人が自然に集まって出した音が、攻撃的なサウンドだったということだと思います。
──そういう音のほうが気持ちいいし、自分を解放できるということ?
ユウコ それはありますね。
ユウミ ライブをやるのも観るのも、とげとげしいというかエネルギッシュなほうが好きなんで。それに影響を受けたというのもありますし。沖縄にいるアメリカの軍人さんは、基地の外に出るときにエネルギーを求めに行くんで。だからハードコアとかスクリーモが根強くあるんですよね。そこに育ったことが、ルーツとしてあるから。
──インディーズの頃は、サチコさんがステージの上で感極まって叫ぶようなこともあったということですけれど。今、その頃のことを振り返ると、どんな感じでした?
ユウミ 若さがゆえに、あるがままをすべて出してそうなったという感じですね。10代のエネルギーというか。みんなにちゃんと届けようという気持ちはあるけど、どうしたらいいかわからなくて。ずっと直球みたいな感じでした。
サチコ 自分のエゴとか欲求をコントロールできなかったんですよね。赤ちゃんが眠たいときに泣くような感じ。ステージ上で大きい声を出すタイミングで糸がプツンと切れて、制御できない感情が爆発してたんだと思うんです。でも、ライブを重ねていくうちにお客さんの笑顔が見たいと思うようになって。なんのために音楽をやってるんだろう? とか、私たちに何ができるんだろう? とか考えることが積み重なっていって。それで自分をコントロールできるようになってきたんだと思います。
LIVE INFORMATION
FLiP 1st Album「未知evolution」リリース記念 ~ひ、と、の、ざま!! TOUR~
- 2011年6月2日(木)
埼玉県 HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3 - 2011年6月3日(金)
栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2 - 2011年6月7日(火)
京都府 京都MOJO - 2011年6月8日(水)
岡山県 岡山CRAZYMAMA 2nd ROOM - 2011年6月10日(金)
高知県 高知X-pt. - 2011年6月11日(土)
愛媛県 松山サロンキティ - 2011年6月12日(日)
香川県 高松DIME - 2011年6月18日(土)
北海道 札幌cube garden(AIR-G' NOW&NEXT vol.5) - 2011年6月21日(火)
兵庫県 神戸太陽と虎 - 2011年6月23日(木)
鹿児島県 鹿児島SR HALL - 2011年6月25日(土)
長崎県 長崎DRUM Be-7 - 2011年6月26日(日)
福岡県 福岡DRUM SON - 2011年6月28日(火)
広島県 広島Cave-Be - 2011年6月30日(木)
石川県 金沢vanvan V4 - 2011年7月2日(土)
新潟県 新潟RIVERST - 2011年7月6日(水)
静岡県 浜松FORCE - 2011年7月7日(木)
愛知県 名古屋APOLLO THEATER - 2011年7月19日(火)
東京都 Shibuya O-WEST<ワンマン> - 2011年7月28日(木)
沖縄県 桜坂セントラル
FLiP(ふりっぷ)
2005年に沖縄県那覇市で、サチコ(Vo, G)、ユウコ(G, Cho)、サヤカ(B, Cho)、ユウミ(Dr, Cho)の4人が結成したロックバンド。地元のライブハウスで精力的なライブを展開し、2008年6月に1stミニアルバム「母から生まれた捻くれの唄」をリリース。同年8月には「SUMMER SONIC 08」への出演を果たす。2009年3月にはアメリカ・テキサスで開催された「SXSW 2009」に出演。海外でも注目を浴びた。2010年2月、ミニアルバム「DEAR GIRLS」でメジャーデビュー。ガールズバンドの枠を超えたエネルギッシュなサウンドで、同世代の若者を中心に着実に人気を上昇させている。