LYSM×SACHIKO(FLiP)インタビュー|新たな一面を見せる1stミニアルバム「∞」、SACHIKOが託した5人への思いとは

LYSMの1stミニアルバム「∞」がリリースされた。

今年8月で結成1周年を迎えたアイドルグループ・LYSM。彼女たちにとって初となるミニアルバム「∞」には、耳心地のいいポップナンバーからライブ映えしそうなアッパーチューンまで多様なテイストの楽曲が収録されており、LYSMのいろんな一面を垣間見ることができる。「∞」のリリースを記念して、音楽ナタリーはLYSMにインタビュー。本作の収録曲「ディスコネクションコード」「BABY BABY」「ワンルームパレード」を含め、LYSMの楽曲を多数手がけるSACHIKO(FLiP)も取材の場に迎え、メンバー5人への印象やLYSMにかける思いについて語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 大城為喜

「ディスコネクションコード」に支えられた2022年

──1年を総括するにはタイミング的に若干早いですけど、1stアルバム「Love You So Much」のリリースから始まった2022年という年はLYSMにとってどんな1年でしたか?

遠峯あかり まず大きかったのが、アルバムのリリース直後にメンバーが次々コロナにかかってしまって、一番大事な時期にイベントやライブが中止・延期になってしまったことで。そのタイミングで動けなかったということがちょっとメンタル的にキツかったところがありました。

久遠まりあ 「LYSM、今から行くぞ!」っていうタイミングだったからね。

天辺りんか 私たちがデビューライブをさせていただいた下北沢シャングリラでのライブもできなくなってしまって。でも、その次のツアー(4月から6月にかけて行われた「LYSM 1st ONEMAN TOUR REVENGE ~配信シングル『ディスコネクションコード』Release Tour~」)のファイナルを改めてシャングリラでやらせてもらえたので、それが今年やったライブでは一番印象に残っています。

遠峯 そのツアーに先駆けて、「ディスコネクションコード」の配信リリースに合わせて神奈川、大阪、愛知、東京の4カ所で4日間連続無料ライブをやったんですよ。それが日程的にはかなりしんどかったんですけど、その分印象に残っていますね。そこで新しくファンになってくださった方もたくさんいて、自分たちの“ファンを獲得する力を付ける”という意味では記憶に残るイベントだったなと思います。

一宮えま ツアーもあって普通のライブもあって、けっこう急ピッチでいろんなことが進んでいたから、どうやって気持ちを持っていったらいいのか「ヤバいヤバい」ってぐちゃぐちゃになっていたんですけど、「ディスコネクションコード」という1曲があったおかげで「よし、この曲をワンマンにぶつけるんだ!」と思えていたような気がします。

LYSM

LYSM

──やるべきことがありすぎて考える暇もない、気持ちの整理もつかない中で「ディスコネクションコード」が軸になってくれていたようなイメージですかね?

遠峯 そうですね。

一宮 結果、曲自体も私たちにとってすごく特別なものになった感じがします。

SACHIKO(FLiP) うれしい。

遠峯 曲調からして今までとは全然違う感じで、ゲームの主人公になったような気持ちで演じるように歌う楽曲と言いますか……今回のミニアルバムを通じて言えることなんですけど、“演じる”というのがひとつテーマになっていたのかなとちょっと思っていて。ステージ上で自分の役割を演じきることが、最高のパフォーマンスをするうえでとても大事なんだなと。そのことに気付かされた1年だったのかなという気がしています。

自分が歌いたい曲をLYSMに託している?

──今日はLYSM楽曲の作詞作曲を数多く手がけているSACHIKOさんにも同席いただいているので、せっかくですから「なぜSACHIKOさんがこんなにがっつりLYSMに関わっているのか?」というお話も伺えたらと思っております。

SACHIKO ホントですよね(笑)。なぜここまで深く関わっているかというと……そもそもは、LYSMの事務所の社長である株本(鉄)さんとは、私がライブをバリバリやっていた時期に、当時株本さんがマネジメントしていたバンドとよく一緒に対バンをしたりツアーを回ったりしていて、面識があったんです。その後、私がバンドを活動休止して作家仕事が増えていく中で「めちゃくちゃいい曲書くんで、誰か書かせてください」という思いをTwitterでつぶやいたところ、すぐに社長からDMが来て(笑)。それが最初のきっかけですね。ちょうど「LYSMをこれから育てていこう」というタイミングでいただいたご縁なので、これは全力でがんばろうと。

──向き合い方としては、おそらく“単なる楽曲提供の対象アーティスト”とはちょっと違いますよね?

SACHIKO 違いますね。LYSMチームからのオーダーはわりと私に任せてくれる範囲が広いというか、「ファンに向けてこういう気持ちを伝えたい」というような精神的なテーマだけを与えられるんです。それをどういう言葉、どういうメロディで形にするかという具体的な部分は託してくださるから、私としてはすごく作りやすくて。それと、彼女たちは音楽との向き合い方がすごく愚直で、真面目で、バンド時代の自分と重なる部分をすごく感じるんですよね。だから「今、自分がバンドをやっていたらこういう曲を作っていただろうな」というものを素直に表現できる場になっている感覚があります。

左から月城せいな、SACHIKO(FLiP)、遠峯あかり。

左から月城せいな、SACHIKO(FLiP)、遠峯あかり。

──言うなれば、SACHIKOさんにとってLYSMは分身のようなもの?

SACHIKO あ、そうですね。その通りだと思います。

遠峯 やったー!

SACHIKO 「私だったらこういう曲を歌いたい」みたいなものをみんなに歌ってもらっている感じ。“託してる感”がすごくありますね。それこそ1stアルバムに収録された「離れ離れ」なんかは、まさに自分がバンドの活動休止後に「今後バンドをやるならこういう曲をやりたい」と思って作ってあったデモをみんなに渡したものなんです。

天辺 SACHIKOさんには以前お伝えしたんですけど、私はその「離れ離れ」がすごく大好きなんです! レコーディングがちょうど友達の留学するタイミングと重なって、自分の置かれている状況に歌詞がシンクロするようなところがあったので……(涙ぐむ)。

SACHIKO 前にその話を伝えてくれたときも泣いてました。そんなふうに私が自分の思いを託している部分もありつつ、作家としてはきちんと彼女たち自身が1人ひとり輝けるようなメロディ、歌詞、言い回し、メッセージ性というものを常に意識して作っていますね。

SACHIKOによるLYSMメンバー分析

──そんなSACHIKOさんは、この5人をそれぞれどんなボーカリストだと認識していますか?

遠峯 聞きたーい!

SACHIKO そうですね……まずあかりちゃんは、やっぱり“歌柱”であってほしくて。ヒリヒリした緊張感を出せるのは彼女しかいないと思うんですよね。ちょっとクサい言い方をするなら「命削ってますよ」みたいな、いわゆるエモーショナルなロックを好むファンに強く訴えかけられるタイプのボーカリストだと思うので、そこはブレずに、誰かと比べたりすることなく自信を持って貫いていってほしいなと思います。それは出したいと思って出せるものではないから。

遠峯 うれしい、泣きそう。ちょっと泣いちゃった(笑)。“エモーショナル”っていうのは自分が一番意識しているところなので、そこをSACHIKOさんに評価していただけるのは本当にめっちゃうれしいです!

SACHIKO えまちゃんは、ライブのMCを見て理解したんですけど、すごく天然な子なんだなって。

一宮 (笑)。

SACHIKO この天然さって、人に対して無害だと思うんですよ。緊張感をいい具合に緩和してくれるから、例えばあかりちゃんの歌によってヒリヒリ感が生み出される流れがあっても、えまちゃんの声がワンフレーズだけでも挟まることで、その緊張がふっと緩和される。そういうポジションを担える子だと思うし、ストレスフリーな声質を持ったボーカリストだなと思います。

一宮 私はずっと自分の歌に個性がないと思っていて、どんなに練習しても歌割りをもらえなかったりとか、「私の歌声ってどこにいるんだろう?」と思うことが多かったから……そういう役割があるよって言ってもらえて、ちょっと安心しました。

上から天辺りんか、久遠まりあ、一宮えま。

上から天辺りんか、久遠まりあ、一宮えま。

SACHIKO 大丈夫、みんな役割があるから。

一宮 (涙ぐんで)ありがとうございます……。がんばります。

SACHIKO せいなちゃんは……最近あかりちゃんがTwitterで「もう1本の歌柱じゃない?」と言ってたのを見たのね。確かにこのツートップは柱だと思うんだけど、タイプとしては対極にいると思っていて。エモーショナルなあかりちゃんに対して、せいなちゃんは無機質っちゃ無機質だと思うの。それは中身がないという意味じゃなくて、邪念がないというか、無垢で心にスッと入ってくる。だからメンバーカラーがホワイトなのかなとも思うし。せいなちゃんはメンバー内で一番年下でしょ?

月城せいな はい。

SACHIKO それもあって、無邪気さみたいな部分を表現できるボーカリストだと思います。たぶん歌割りを決めるときにも……歌割りは私じゃなくて全部社長が決めているんですけど、エモーショナルにもキュートにも寄せすぎたくないパートにハマるのはその無垢さだと思うんだよね。というところで、歌い出しをせいなちゃんに任せたりしているのかな?と思っています。

月城 初期の頃に振付師さんからも「人の心にスッと入るような歌い方をしているね」と言われたことがあって、同じことを今SACHIKOさんも言ってくださったので、本当にそんな感じなんだなと思いました。「人の心にスッと入るような歌い方を」というのは自分でも意識していることなので、その気持ちが届いていたんだなと思うとうれしいです。

月城せいな

月城せいな

SACHIKO だんだん汗かいてきた(笑)。みんなの眼差しが真剣すぎて……。

LYSM あははは(笑)。

SACHIKO で、まりあちゃんはとにかくゴージャスですよね。

久遠 (笑)。

SACHIKO 見た目と声が見事にリンクしていて、色気が一番ある。歌声にはその人の人生が出るものなので、「いろいろあったのかなあ」みたいな。歌唱テクニックうんぬん以前に、そもそも生まれ持った声が“えちえち”ですよと(笑)。複数人で歌うアイドルグループという形においては、歌声の個性がバラバラであればあるほどいい。そういう意味で、彼女は唯一無二の色気を出せるボーカリストだと思います。

久遠 人生経験は全然ないんですけど(笑)、自分の声の役割については初めて言っていただけた気がします。うれしいです。

SACHIKO あと、リーダーということもあって俯瞰でものを見るのが上手だよね。そういう肝の据わっている部分、ステージ上での貫禄も彼女の大きな魅力だと思いますね。

久遠 リーダーやってきてよかった(笑)。みんなの後ろから一歩引いて見るということはけっこう意識している部分なので、そこに触れていただけて、リーダーとしての自覚がまた強まりました!

久遠まりあ

久遠まりあ

SACHIKO それは1stライブのときから思ってたよ。

久遠 うれしいー。

SACHIKO で、りんかちゃんはやっぱりメンバーカラーがピンクというのもあるし……なんだっけ、さっき取材前の雑談で言ってた、「歩く」……。

遠峯 「歩くぶりっこ博物館」。

LYSM (笑)。

SACHIKO それ(笑)。その役割を嫌味なく担えてしまう子だと思うので、“ザ・アイドル”を好きな人に一番アピールできる立ち位置だと思うのね。それを自分で理解できる頭のよさもあるし、この5人の中では“かわいさ”の部分を飛び抜けて表現できるボーカリストだと思います。

天辺 自分でもそこは意識していて、たとえカッコいい曲であってもちょっとかわいい感じで歌うようにしているんです。前回のインタビューでもお話ししたんですけど、もともと私は自分の声があまり好きじゃなかったのが、ファンの方から声を褒めていただけるおかげでだんだん自分のクセを隠さず出せるようになってきたというのがあるので、今はこの声質に生まれてきてよかったなと思っています。

SACHIKO 5人の個性の違いを明確にしていく意味でも、そのぶりっこ……という言い方はよくないな(笑)、かわいさを貫いていってほしいなと思います。

天辺 ぶりっこで大丈夫です!(笑)