音楽ナタリー Power Push - CUBERS

“聴けるボーイズユニット”を紐解く4つの視点

CUBERSの1stアルバム「PLAY LIST」がリリースされた。

2015年7月にユニットを結成し、デビューからこれまで“弟にしたいボーイズユニット”というキャッチフレーズのもとに活動を繰り広げてきたCUBERS。彼らは今作「PLAY LIST」のリリースにあたって新たなキャッチフレーズ“聴けるボーイズユニット”を打ち出している。音楽ナタリーではさまざまな角度からCUBERSの魅力を紐解く特集を展開。この特集では音楽ライターである高橋芳朗氏に彼らの音楽性について、ボーイズユニットに詳しい音楽ライターの川倉由起子氏にグループの魅力とその立ち位置について寄稿してもらった。またグループのレコーディングディレクターである小山良太氏に彼らのサウンドについて、グループのミュージックビデオを手がける加藤マニ氏に彼らのパフォーマンスについて語ってもらっている。

構成 / 倉嶌孝彦

日本のボーイズユニットの伝統にのっとった作品(音楽ジャーナリスト 高橋芳朗)

Daft Punk「Random Access Memories」の大ヒットによって世界規模でリバイバルしたディスコやAORサウンドは、一時的な流行で終わることなく、今や国内外の音楽シーンのスタンダードとして定着しつつあります。

そういう時代の気分は、もちろんここ日本のJ-POPにも反映されています。例えば星野源の「YELLOW DANCER」は、近年のポップミュージックの動向を受けての日本からの優れた解答として聴くことができる作品です。また、台頭著しいceroやSuchmosといったバンドのブラックミュージックとの向き合い方にしても、こうした文脈と決して無縁のものではないでしょう。

CUBERS「Samenaide」ミュージックビデオ撮影の様子。

そんな状況を踏まえれば、CUBERSのような音楽性を志向するボーイズユニットが登場してくるのは必然であり、時間の問題だったのかもしれません。彼らの1stアルバム「PLAY LIST」は、大胆にもほぼ全編がディスコ / ファンクチューンで占められています。しかもその大半が、さわやかな躍動感を魅力とする同系統のグルーヴで統一されている徹底ぶり。まさに1つのテーマのもとに組まれた “プレイリスト”を聴いてるような構成からは、この方向性に対する作り手の強い確信がうかがえます。ここを貫き通せば必ずブレイクスルーできる、と。

CUBERSの目指すところは、リードトラックの「Samenaide」を聴けばきっとすぐに理解できると思います。そして、彼らの魅力はここに見事に凝縮されているといっていいでしょう。何気ない日常生活の中で抱くささやかな理想を丁寧に歌い上げたリリック、つたなくもけなげな歌心までをも含めたナイーブな疾走感こそが、CUBERSの本分です。

そんなCUBERSの「PLAY LIST」をリピートしていて連想したのは、1990年代半ばにブラックミュージック~ジャズ / フュージョンのトップミュージシャンを集めてアルバムを作っていた頃のSMAPでした。考えてみれば、ボーイズユニットがディスコやファンクを歌うことは、日本のポップミュージックにおいて1つの王道を往くスタイルだったはず。つまりCUBERSの「PLAY LIST」は、ディスコリバイバルを通過した今の時代に則した作品であると同時に、日本のボーイズユニットの伝統にのっとった作品とも言えるのではないでしょうか。

1stアルバムをリリースするにあたって、あえて“聴けるボーイズユニット”を掲げてきた勇気と覚悟。追い掛けてみる価値、十分にあると思います。

大胆な舵取りが不思議と “ワクワク”につながる(音楽ライター 川倉由起子)

イケメンで歌って踊れるのは当たり前、傑出した個性やコンセプトが+αで光ってこそやっと頭1つ抜けられる……といった昨今のボーイズユニットシーン。アイドル戦国時代は今や女性グループに限った話ではなく、ご当地系、2.5次元、アニメ発……など、特に今年に入ってからの多種多様なグループの登場には目を見張るものがある。

CUBERS「Samenaide」ミュージックビデオ撮影の様子。

そんな激動のシーンにおいて、今、じわじわと注目を集めているボーイズユニットがいる。活動歴わずか1年強、2015年7月に “弟にしたいボーイズユニット”というキャッチフレーズのもと誕生した5人組・CUBERSだ。彼らの特徴は、どこか懐かしく、親しみやすさを感じる90年代風の王道アイドル感。耳なじみのいいミディアムファンクを軸に、ステージではコール&レスポンスや一緒に踊れる振りも多く盛り込み、新規ファンもスッと入りやすい間口の広いパフォーマンスを披露している。そして、一度でも彼らのクロストークを聞けば虜になるキャラクター。正直、まだ言葉がつたなかったり、掛け合いがおぼつかなかったりもするのだが、思いを全力で伝えようとする姿がとにかく初々しい。いつも謙虚で一生懸命。年上女性はもれなく“守ってあげたい”スイッチが発動、胸の奥のほうをギュッとつかまれたような気持ちになるだろう。以前インタビューした際、末吉9太郎がテーブルの下にノートを忍ばせていて、メンバーに「話したいことが書いてあるの」と照れながら真面目なメモ書きを披露したことがあった。そんな彼のピュアさにも胸を射抜かれた。

さて、かわいい系グループとしてデビューから1年間突っ走ってきたCUBERSだが、1stアルバム「PLAY LIST」からは曲推しの“聴けるボーイズユニット”に方向転換する。理由はさらに幅広いファン層獲得のためとのことだが、その大胆な舵取りも未知数の可能性を持つ彼らだからこそ動揺ではなく不思議と“ワクワク”につながる。群雄割拠の男性アイドルシーンだが、その多くは何年もレッスンを重ね、すでに完成された状態であることが多い。その点、まだ活動歴の浅いCUBERSは未完成だからこそ成長を一緒に見守る楽しさがある。女性アイドルシーンにある “育てる”系のグループはファンとの一体感や共感度も高く、それと同様に一気に化ける可能性も。自分だけの3次元アイドル育成ゲームに心躍らせる感覚で応援してみるのもいいかもしれない。

ニューアルバム「PLAY LIST」 / 2016年9月8日発売 / Bermuda Entertainment Japan
Type-A [CD] / 3000円 / BMEJ-0034
Type-B [CD] / 3000円 / BMEJ-0035
収録曲
  1. Samenaide
  2. New days
  3. STAND BY YOU
  4. Forever
  5. Mr.COOL!!
  6. SHY
  7. スマイル
  8. Stage
  9. ワンダーパレード
  10. Bi'Bi'Bi'
  11. Good good-bye
  12. 26.5
「CUBERS 3rdワンマン~覚めないで、消えないで~」
2016年11月20日(日)東京都 表参道GROUND
OPEN 18:00 / START 18:30
CUBERS(キューバーズ)

CUBERS

2015年7月に結成。TAKA、優、春斗、綾介、末吉9太郎の5人からなるボーイズユニット。同年10月にシングル「SHY」をリリースし、デビューを果たす。東京・JOL原宿にて行われるライブイベントへのレギュラー出演のほか、全国各地でのレコ発イベントを重ねることでその知名度を徐々に高めていく。2016年3月には東京・六本木morphにてワンマンライブを開催。また同年9月には1stアルバム「PLAY LIST」を発表した。今作のリリースをもってグループのキャッチフレーズを、デビュー時から掲げてきた“弟にしたいボーイズユニット”から“聴けるボーイズユニット”に一新した。