「Coming Next Artists」#11 須澤紀信|人に寄り添い“つながり”歌う、長野出身のSSW

菅野結以

パーソナリティ
菅野結以

「Coming Next Artists」第11回には長野県の松本市出身のシンガーソングライター・須澤紀信が登場。高校時代に先輩からアコースティックギターを譲り受けたことがきっかけで作曲を始めたという須澤は、10月4日に両A面シングル「はんぶんこ / 夢の続き」をヤマハミュージックコミュニケーションズよりリリースし、メジャーデビューを果たした。今回は菅野結以が聞き手を担当。彼の生い立ちに迫りつつ、シングルについて話を聞いた。

取材 / 菅野結以 文 / 近藤隼人 撮影 / 小原泰広

Coming Next Artists #9

須澤紀信(スザワキシン)
須澤紀信
長野・松本市出身のシンガーソングライター。5歳のときにバイオリンを習い始めた。少年時代は野球に熱中し、地元の高校で野球部に入部するも夢半ばで退部。転校先の全寮制の高校で先輩からアコースティックギターを譲り受けたことがきっかけで作曲をスタートさせた。愛知県の音楽専門学校へ進学後、2014年1月にヤマハの音楽オーディション「The 7th Music Revolution」に参加。「JAPAN FINAL」に進出した。2017年10月にヤマハミュージックコミュニケーションズより両A面シングル「はんぶんこ / 夢の続き」をリリースし、メジャーデビューを果たした。

「耳をすませば」に憧れてバイオリンを始めた

──須澤さんは音楽ナタリー初登場ということで、どうして音楽活動を始めたのか、というところから聞いていきたいと思います。プロフィールには野球少年だったと書いてありますが、音楽を始めたきっかけはなんだったんですか?

僕はもともと5歳の頃からバイオリンをやってまして。

──へー! それは何がきっかけで?

うちの家族が音楽一家と言うか、子供には1人1つずつ楽器を、という家庭だったんです。兄と姉はピアノを習っていたんですけど、僕はちょっと天邪鬼なところがあって、その流れに沿いたくなくて。そのときちょうどジブリ映画の「耳をすませば」が流行っていて、映画に出てくる天沢聖司くんに憧れてバイオリンを始めました。

左から菅野結以、須澤紀信。

──「耳をすませば」がきっかけだったんですね。

はい。「カントリー・ロード」を弾いてる聖司くんがカッコよくて。

──じゃあ、最初は「カントリー・ロード」を練習しました?

いや、最初は「きらきら星」(笑)。ちゃんとバイオリンの教室に習いに行ったんですけど、結局「カントリー・ロード」を弾く機会はありませんでした。

夢半ばで野球を断念し、全寮制の高校へ

──音楽と並行して野球もやっていたんですか?

子供の頃から父親とよくキャッチボールをしていて。メジャーリーグに挑戦するイチロー選手をカッコいいなと思って中学から野球部に入りました。

──インドアなものとアウトドアなもの、どちらも好きだったんですね。

そうですね。でも野球部に入ってからは、野球のほうにのめり込みました。週に1回はバイオリン教室に通っていたんですけど、僕の心は音楽よりも野球のほうにどんどん傾いていって。

──でも、プロフィールには「理由あって夢半ばで野球を断念」って。

須澤紀信

「甲子園に出たい」と思って地元の長野の高校に入ったんですけど、だんだん違和感を感じてきて。自分の思っているように野球をできないと言うか、このままだと野球を嫌いになっちゃいそうだなと。で、野球部を辞めたんですけど、野球をやりたくてその高校に入ったので、学校にいる目的がなくなってしまって。野球部を辞めるのと同時に高校も退学しました。それでどうしようかと思っていたときに、姉が行ってた島根県の全寮制の高校に入るという選択肢が出てきて。全校生徒が60人しかいない、山の上のほうにある街から孤立したところにある高校なんですけど、携帯、パソコン、雑誌、マンガ、テレビなど、いわゆる世俗的なものを禁止している学校なんです。

──へえー! あるんですね、そんな厳しい学校が。

あるんですよ。1回学校に見学に行って、寮に一晩泊まって生徒と触れ合ったら、みんなすごく楽しそうだったんですよね。自由な時間が多いし、自分たちで朝ご飯や夕ご飯を作るし、生徒を中心に回ってる学校で。そのあと1浪する形で入学して、1週間ぐらい経ったときに3年生の先輩が「もう俺はギターを弾かないから、お前にやる」ってアコースティックギターをくれたんです。

──マンガやテレビはダメでもギターはOKだったんですね。

そうなんですよ。楽器は人の心を豊かにするということなのか。普通に音楽の授業もありましたしね。もらったアコギは弦が浮きすぎちゃってて押さえるのも大変で、お世辞にもいいギターとは言えなかったんですけど、それがギターとの出会いでしたね。

ゆずみたいになりたくてデュオを結成

──そこから音楽にのめり込んでいったんですか?

20人くらいしかいない同級生の中に、ギターを弾けて、すごく歌がうまいやつがいて。僕は中学生のときに姉が部屋で流している曲を聴いて以来ゆずが好きだったので、早くギターを弾けるようになって、そいつと一緒にゆずみたいなデュオをやろうと思ったんです。

──デュオをやるために、うまい人に追い付かなきゃいけなかったんですね。話を聞いていると、自ら大変なほうに突っ込んで行ってる感じがします。

確かに(笑)。でもほかにやりたいこともなかったし、せっかくギターをもらったからやってみようという感じでしたね。同じ弦楽器でもバイオリンは主旋の楽器、メロディを弾く楽器だから1本ずつ弦を押さえればよかったんですけど、ギターは和音楽器じゃないですか。一度に6本の弦を押さえて弾くことに最初は慣れませんでした。でもゆずの曲を弾いていくうちに「コードってこういうものなんだ」とわかってきて、徐々に同級生と一緒に並んで歌えるようになりました。

菅野結以

──曲を作るようになったきっかけはなんだったんですか?

学校で文化祭のテーマソングを生徒から募集する企画があって。全校生徒の前で曲を発表し合ってテーマソングにする曲を投票で決めるんですけど、それに出るために曲を書いたのが最初でした。

──それはどういうテイストの曲だったんですか?

サビで「ヒーローなんかじゃなくても 世界を救えるわけじゃなくても 物語の主人公ぐらいなら誰でもなれるさ」と歌う曲でしたね。

──当時からそういう歌詞を書いてたんですね。

「これはいい歌ができた」と思って全校生徒の前で2人で意気揚々と歌ったんですけど、結果的に3年生の人の曲が選ばれまして。

──ダメだったんですね。

ちょっとがんばりすぎちゃって、Aメロに言葉を詰めすぎたんですよ。僕らが歌うだけならいいんですけど、文化祭当日にはみんなでテーマソングを歌うので、それには適してなかったという。「みんなが歌える曲にするには、いろいろ考えないといけないんだな」と1つ学びましたね。

──そのあとすぐ「また曲を作ってみよう」と思ったんですか?

思いましたね。最初の頃はゆずやMr.Childrenのカバーをやってたんですけど、「自分の言葉じゃないと嫌だな」という気持ちがだんだんと芽生えてきました。

須澤紀信「はんぶんこ / 夢の続き」
2017年10月4日発売 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ
須澤紀信「はんぶんこ / 夢の続き」

[CD]
1200円 / YCCW-30065

Amazon.co.jp

TOWER RECORDS

ローチケHMV

収録曲
  1. はんぶんこ
  2. 夢の続き
  3. 君は誰かのヒーロー
  4. 友だち
  5. はんぶんこ(instrument)