音楽ナタリー Power Push - After the Rain
そらる×まふまふが描く「時間」のファンタジー
ネットミュージックシーンにおいて絶大な人気を誇るユニット“そらる×まふまふ”が、After the Rainとして活動を開始。彼らの1stアルバム「クロクレストストーリー」が、4月13日にリリースされた。
ニコニコ動画の「歌ってみた」カテゴリ黎明期からシーンを牽引し、今回のアルバムでは全曲のミックス、マスタリングを担当したシンガー / エンジニアのそらると、作詞曲や編曲、歌唱、エンジニアリングまでマルチな才能を見せ、今回のアルバムでも多くの作詞作曲や、全曲のアレンジを担当したクリエイターのまふまふ。今回は2人の音楽的バックグラウンドからユニット結成までの経緯、そして本アルバムの制作について、たっぷり語ってもらった。
取材・文 / 須藤輝
幼い頃から作曲していた
──まずは音楽的なバックグラウンドについて聞かせてください。
そらる 子供のときは父のラジカセでKiroroとか、当時父が持ってた昔のJ-POPのカセットテープを聴いていて、初めて自分でCDを買ったのは高校生のときでした。友達の影響で、そのとき流行っていたものを聴いていた感じですね。
──具体的には?
そらる スピッツ、ASIAN KUNG-FU GENERATION、BUMP OF CHICKEN、the pillowsとかを浅く広く。で、音楽好きの友達が学校にギターを持ってきてて、僕も家に父のギターがあったんで、何人かでバンドまがいのことをやったのが、最初の本格的な音楽体験なのかな。
まふまふ 僕は逆に、クラシックからJ-POPまでいつもいろんな音楽が流れてるような毎日で、ピアノも習ったりしました。特定のアーティストを追いかけるというよりも、音楽を聴くこと自体が大好きでした。だから自然と自分なりの伴奏とメロディで曲を作ったりという感じで……。それと、昔の携帯電話って着メロを作れる機能がついてるものがあって、親族の携帯を借りてポチポチと電子音でオリジナルの着メロを作ったりしてました。そういうのも今に生きているのかなとか、そうやって電子音を聴いてたから電子音に抵抗がないのかなって思います。
──VOCALOIDを活用した楽曲にもなじめた?
まふまふ はい。生楽器は演奏できる範囲の音しか使えないとか、ある程度の幅みたいなものがある気がするのですが、電子音なら理論上は制限なく好きな音を出せて、この特徴はニコニコ動画のボカロ曲にも同じものを感じました。人間が再現可能な範囲で作られた音楽とは違った、何か突き抜けた曲みたいなものに興味が湧きました。
「絶対人じゃ歌えないだろ」
──そらるさんがニコニコ動画に楽曲を投稿するようになったきっかけは?
そらる 僕が通ってた大学はIT系の学校だったんですけど、ネットやパソコンに強い友達が多くて、自分も大学からパソコンに触り出したので、そこでニコニコ動画の存在を教えてもらったんです。それが今から7~8年前で、ちょうど「歌ってみた」やVOCALOIDが流行り始めた頃で。僕は大学でも引き続きバンドみたいなことをやってたし、歌うのも好きだったんですが、CDというのはプロのミュージシャンがスタジオでレコーディングしてできるものだと思ってたんです。
──個人というか、素人が作るものではないと。
そらる でも、ニコ動でVOCALOIDというものを知って、それが1人の手で全部作られてるのを知って「そういうことって、できるんだ」と。ただ最初は機械の音声に慣れなかったし、ボカロにしろ「歌ってみた」にしろ、何が楽しくてわざわざ素人の作った音楽を聴くんだろうと思ってたんですよ。でも、よくできたボカロ曲や歌い手さんの歌を聴いたときに「あれ? 普段耳にしている音楽よりずっと魅力的なものも多いんじゃないか」と感じて、自分もその輪の中に入ってみたいなと。
まふまふ 音楽って人間が歌う場合、限界があるじゃないですか。これ以上高い声は出ないとか。ニコ動で公開されているボカロ曲を聴いたとき、「絶対人じゃ歌えないだろ」っていうものが当たり前のようにあったんです。でも逆に言うと、人間じゃ歌えないような音源を聴ける場ってそこしかなかったんですよ。そういうのは、いわゆるメジャーで流通しているCDでは聴くことのできない、新しい音楽なのかなって。
そらる 僕が投稿を始めたときはVOCALOIDの大きな波があって。すごく早口だったり高い声だったり、まさに人間じゃ再現できないような歌をボカロに歌わせて、それに人間が挑戦するみたいな。その中ですごくクオリティの高いものが生まれたりしていたので、当時は、ホントにそこでしか聴けないようなものがありましたね。
まふまふ 僕自身も、人間じゃ歌えないような曲を作って投稿していて、自分が作って自分で歌っている曲に関しては、歌を歌うとか歌モノの曲を作るというより、1つの「作品を作る」という気持ちでいます。簡単とか難しいとか、歌いやすいとか歌いにくいとか、そういうことは度外視して音や詞の組み合わせで頭の中を形にしていってます。
次のページ » 一緒にCDを出したら面白いんじゃないかな
- 1stアルバム「クロクレストストーリー」 / 2016年4月13日発売 / NBCユニバーサルエンターテイメント
- 初回限定盤A [CD2枚組] / 2700円 / GNCL-1262
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 2700円 / GNCL-1263
- 通常盤 [CD] / 2160円 / GNCL-1264
CD収録曲
- 桜花ニ月夜ト袖シグレ
- 盲目少女とグリザイユ
- ベルセルク
- 天宿り
- がらくたの作りかた
- わすれもの
- インソムニア
- [Spica]
- セカイシックに少年少女
- 多面草
- 待ちぼうけの彼方
- さえずり
- チョコレイトと秘密のレシピ
- ネバーエンディングリバーシ
- [Aster]
- アイスリープウェル
初回限定盤A 特典CD収録曲
- 愛のサンプル / そらる
- 嘘つき魔女と灰色の虹 / まふまふ
- ショパンと氷の白鍵(Live) / そらる
- 夢花火(Live)/ まふまふ
- 桜花ニ月夜ト袖シグレ(Live) / After the Rain
- ひきこもらないラジオ(特別編)
初回限定盤B DVD収録内容
- 桜花ニ月夜ト袖シグレ(ミュージックビデオ)
- ベルセルク(ミュージックビデオ)
- 待ちぼうけの彼方(ミュージックビデオ)
- さえずり(ミュージックビデオ)
- セカイシックに少年少女(ミュージックビデオ)
- 「クロクレストストーリー」Making & Interview
After the Rain(そらる×まふまふ)
両国国技館2016 ~モーニンググロウ アフターグロウ~
- 2016年7月16日(土)東京都 両国国技館
- OPEN 16:00 / START 17:00
- 2016年7月17日(日)東京都 両国国技館
- OPEN 14:00 / START 15:00
- チケット料金:全席指定4500円(税込)
問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888
アルバム「クロクレストストーリー」CD購入者限定チケット優先受付
応募期間:2016年4月13日(水)18:00~5月1日(日)23:59
※ 抽選制となります。
※ 応募方法ほか詳細はアルバム封入の応募用紙をご確認ください。
※ 応募用紙は初回限定盤Aおよび初回限定盤B、初回生産分の通常盤に封入致します。
After the Rain(アフターザレイン)
ネットのミュージックシーンを中心に活動するそらる、まふまふによるユニット。「そらる×まふまふ」名義で2014年に1stアルバム「アフターレインクエスト」を発表し、翌2015年には2ndアルバム「プレリズムアーチ」を発売。同年12月より実施された初の全国ツアー「After the Rain - WINTER TOUR 2015 -」では全会場でチケットがソールドアウトとなった。2016年に「After the Rain」名義で活動を開始。4月13日には同名義初のアルバム「クロクレストストーリー」をリリースした。