映画「ハクソー・リッジ」PR

塚本晋也が語る「ハクソー・リッジ」|戦場で信念を貫いた男に共感

俳優として「マッドマックス」第1作から第3作で主演を務め、「ブレイブハート」でアカデミー賞®5部門受賞を成し遂げるなど監督としても高い評価を受けるメル・ギブソン。第89回アカデミー賞®にて編集賞と録音賞を受賞した「ハクソー・リッジ」で彼が描くのは、武器を持たずに第2次世界大戦の激戦地へ赴き、たった1人で75人の命を救った衛生兵デズモンド・ドスの実話だ。

映画ナタリーでは、デズモンド役のアンドリュー・ガーフィールドと「沈黙-サイレンス-」で共演した塚本晋也にインタビューを実施。同じく第2次世界大戦を題材にした映画「野火」では監督・主演を務めた彼に、「ハクソー・リッジ」について語ってもらった。

取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 入江達也

塚本晋也インタビュー

切実なリアリティと緊迫感

──塚本さんと同じく監督としても俳優としても知られるメル・ギブソンですが、最初に彼の存在を知ったのはどの作品ですか?

メル・ギブソン(中央)

「マッドマックス」ですね。メル・ギブソンのことはアクションヒーローとして認識していたので、監督業に乗り出したときはびっくりしました。「ブレイブハート」は実は最近になって観たのですが、とても壮大で惹き付けられました。僕が言うのもヘンですが、暴力シーンがものすごい。ギブソン監督は暴力シーンが大好きなんだなと思えるような描写もありますが、当時はああいうことをしないと自由を勝ち取れない時代だったんだということがいい悪いを超えて重々しく伝わってきて。さすがアカデミー賞を獲るだけのことはあるなと凄味を感じました。

──ギブソンが過去に監督した作品と「ハクソー・リッジ」とで通底している、もしくははっきりと違うのはどのような要素だと思われますか?

塚本晋也

「パッション」や「アポカリプト」では1つのテーマを粘着質に描いていますよね。「パッション」には、キリストが拷問を受け処刑されるまでの1日というシンプルなプロットの強さや、キリストの凄絶な体験を共有させられるような臨場感がありました。「ブレイブハート」のラストにも拷問シーンが出てきますが、「アポカリプト」にしても観ている自分自身が血を流しているような、異様な雰囲気が漂っています。僕も「沈黙-サイレンス-」(以下「沈黙」)で拷問されるシーンを演じましたが、そういった極限状態における切実なリアリティと緊迫感を追求する点が、ギブソン監督の好きなところですね。今回の映画はもうちょっと複雑で、1つのテーマを圧倒的なパワーで描くのとは違うかなと思いますが。

──主人公が地獄のような状況に放り込まれるという点では、「アポカリプト」も「ハクソー・リッジ」も、塚本さんの監督・主演作である「野火」と共通するのではと思います。

そうですね。「野火」は、なるべくお客さんに自分が戦場にいるような臨場感を体験してもらいたいという思いで作りました。

神様を振り向かせるデズモンド

──主人公のデズモンド・ドスを演じたアンドリュー・ガーフィールドについても聞かせてください。「沈黙」では、宣教師ロドリゴとキリスト教徒の村人モキチという関係性で共演されましたね。

「ハクソー・リッジ」より。

本当に真面目だし、完全に役になりきって、いつどこでどう切り取っても、そのキャラクターになれるようにといつも自分を高めている俳優さんでした。アンドリューがあれだけやっているんだったらこちらもこれくらいやらなきゃいけないなと、周囲の人に影響を与えていく力を持っていらっしゃる人です。始まってすぐにいきなり大事な撮影があったんですが、僕が十字架を持つシーンで、その十字架をアンドリュー自身が小道具係の人からもらってきて、大事そうに僕に託してくれて。僕もありがたくロドリゴ様にひざまずくくらいの気持ちで受け取って芝居に臨みました。

──今回ガーフィールドが演じたキャラクターは、「沈黙」に続いて敬虔なキリスト教徒でした。

「沈黙」で、アンドリューは迫害を受けながらもがんばる宣教師ロドリゴを演じていましたが、あの作品では神様は長い間沈黙したままだったんです。静かに神の存在に気付いていく話でした。「ハクソー・リッジ」のデズモンドは、自ら行動を起こして神様を振り向かせる。その力強さに共感しました。

「ハクソー・リッジ」
2017年6月24日(土)公開
「ハクソー・リッジ」
ストーリー

子供時代の苦い経験から、聖書の「汝、殺すなかれ」という教えを大切にして育ったアメリカ人の青年、デズモンド・ドス。第2次世界大戦が激化する中で、彼は「衛生兵としてなら自分も国に尽くすことができる」と考え、陸軍に志願する。だが断固として武器に触れることを拒むデズモンドは上官や仲間の兵士たちから嫌がらせを受け、ついには軍法会議にかけられてしまう。ある人物の尽力によりデズモンドの主張は認められるが、彼が派遣されたのは“ハクソー・リッジ”と呼ばれる沖縄の激戦地だった。包帯とモルヒネだけを持ち、飛び交う銃弾をかいくぐって重傷の兵士たちを救おうとするデズモンド。その姿に、かつて彼を臆病者呼ばわりした仲間たちも感嘆の目を向け始めるが……。

スタッフ / キャスト

監督:メル・ギブソン

デズモンド・ドス:アンドリュー・ガーフィールド
グローヴァー大尉:サム・ワーシントン
スミティ・ライカー:ルーク・ブレイシー
ドロシー・シュッテ:テリーサ・パーマー
トム・ドス:ヒューゴ・ウィーヴィング
ハウエル軍曹:ヴィンス・ヴォーン

塚本晋也(ツカモトシンヤ)
1960年1月1日生まれ、東京都出身。1989年に「鉄男」で劇場映画デビューし、以降は「東京フィスト」「六月の蛇」「KOTOKO」など数々の監督作を発表。監督、主演、脚本、編集、撮影、製作の6役を務めた2015年公開の「野火」では、第70回毎日映画コンクールの監督賞や男優主演賞などさまざまな映画賞を獲得した。2016年には、遠藤周作の小説をマーティン・スコセッシが映画化した「沈黙-サイレンス-」に出演。アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、浅野忠信、窪塚洋介らと共演した。