コミックナタリー Power Push - 渡瀬悠宇

バカが付くほどの真面目さ発覚 熱い冒険ロマン、『凛花』で待望の再始動

1コマ、1エピソードに何重にも意味を重ねる

──2年の休載期間を経て連載が再開された「ふしぎ遊戯 玄武開伝」ですが、久しぶりに描いてみていかがでしたか?

とにかく最初は作画が不安でした。「櫻狩り」と「アラタカンガタリ」という、タッチが真逆の作品をずっと描いてたので。久々に少女マンガ画面になっても勘を取り戻せるかな?って。

──これまでの20年のキャリアでは、そのほとんどが少女誌での執筆でしたが。

インタビュー写真

実は私、まったく乙女趣向がなくて。恋愛モノにもあまり興味がないので、デビュー当時からすごく苦労したんです。でも少女マンガ独特のコマ運びとか、画面切り替えとか、細やかな心理描写みたいな、あまり得意ではない表現を描いてとても勉強になりました。

──今回の原稿を拝見して、2年前とは絵の雰囲気が少し変わったかな、と思いました。

そうですね。「玄武」って毎回掲載の間があく作品だったので、そもそもちょっとずつ変わってきてはいるんですけど。今回は「櫻狩り」や「アラタカンガタリ」で武者修行してきたからか、特に新鮮な気持ちでしたね。

──今回から掲載誌が「櫻狩り」と同じ凛花になるわけですが、年3回という刊行ペースはどうですか?

じっくりしたペースな分、内容もじっくり見せられるというか……。週刊誌での18~30ページとかのテンポとはまた違う、何回も何回も次号が出るまで読み返していただけるような描き方ができるかなと思います。ぱっと読むのではない、重みを出せる感じがするんですよ。

──描く側としても、何回も読み返されるに値する仕込みをいろいろしているっていう自負があったり?

どうでしょう……。私は週刊でもそういう描き方をしちゃうところがあるので、多分結果的にそういう形になってるとは思うんですね。1コマとか1エピソードに、何重にも意味を重ねてるので。後で読み返して「こういうことだったんだ」って気付いてもらえたら、作者冥利に尽きますね。

旧“ふし遊”とのリンクを楽しんでほしい

──旧“ふし遊”を愛読してた人でも、意外と「玄武開伝」の存在を知らない人がいるんですよね。まさにそういう方々にも今回再開のタイミングで、読んでもらいたいと思うんですけれども。

読んでいただきたいですね。ちょろちょろっと柳宿の先祖も出てるよ! とか。

──「玄武開伝」7巻にちらっと出てくるキャラクターですね。確かに目元のほくろが……。あと多喜子が柳宿の名ゼリフに似たようなことを言うシーンもありましたね。「生きてれば辛くてもいつか笑える日が来る……」っていう。

旧“ふし遊”を彷彿とさせるポイントを随所に入れてるんです。リムドと多喜子が最初に出会った山も、柳宿が亡くなった場所だったり。今回の再開号では娘娘が「玄武開伝」に初登場して、これまでのあらすじを一緒に振り返ってくれてますし。読者サービスの意味合いもありますが、旧作と「玄武開伝」はお話がつながってるので自然なことなんですよ。逆に「玄武開伝」から入った読者さんに、「旧“ふし遊”はテンポが速くてびっくりした」っていう意見をもらうこともありました(笑)。

──「玄武開伝」は一人ひとりのエピソードをじっくり描いていて、すごく濃厚ですよね。

1話のページ数が違いますからね。旧“ふし遊”は30ページ単位でしたが、「玄武開伝」は45~60ページ。「玄武開伝」のほうが尺が長いので、群像劇としてじっくり見せられてるなと思います。これは前の担当さんに言われたんですけど、旧“ふし遊”はキャラクターもので、「玄武開伝」は群像劇。だから旧作の感じが好きな方もいるだろうし、こっちのほうが好きな方もいるとは思います。

インタビュー写真

──まだ当分先の話だとは思いますが、「ふしぎ遊戯」白虎編についても、具体的に考えてらっしゃるんでしょうか?

最初のほうのエピソードは、「玄武」を始めた時期くらいに私の頭の中でできてますね。「玄武」が終わった後すぐ始めるかはわからないですけど……(笑)。

──旧“ふし遊”とはなんだかんだ10年くらい付き合ってきて、「玄武」ももうすぐ10年。そしてまた「白虎」も同じくらいやるとなると、「ふしぎ遊戯」はマンガ家人生を通して描くシリーズになりますね。

ライフワークですよね。応援してくださってる読者さんがいるというのは、本当にありがたいことだなと思います。それがなければ描けないので。連載の間があいても私は続きをしっかり描くから、読者さんもこの物語の行く末をちゃんと見届けてくれるんじゃないか……って、勝手に信頼関係を感じてます。

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連載を再開する渡瀬悠宇「ふしぎ遊戯 玄武開伝」は、これまでのあらすじが誌面で丁寧に説明されているので初めて読む人でも楽しめる。このほか西炯子「娚の一生」スピンオフシリーズ、 岩本ナオの読み切り「夏の桜」、水城せとな「失恋ショコラティエ」、田村由美「猫mix幻奇譚とらじ」など、見逃せない作品揃いの全22本を掲載。

渡瀬悠宇の既刊コミックス

「ふしぎ遊戯 玄武開伝」(1)~(9)

「ふしぎ遊戯 玄武開伝」(1)~(9)

「ふしぎ遊戯 玄武開伝」(1)~(9)

あらすじ

時は大正時代。多喜子は、反目しあう父・永之助が訳した中国の書物「四神天地書」の中に突然吸い込まれる。降り立った異世界で、多喜子は自分が“玄武の巫女”だという運命を知らされるが……。

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渡瀬悠宇(わたせゆう)

自画像

大阪府出身、3月5日生まれ。1989年少女コミック(小学館)掲載の「パジャマでおじゃま」でデビュー。1998年に「妖しのセレス」で第43回小学館漫画賞受賞。代表作は「ふしぎ遊戯」、「思春期未満お断り」、「櫻狩り」など。現在週刊少年サンデー(小学館)にて、「アラタカンガタリ~革神語~」を連載中。