コミックナタリー Power Push - 田辺イエロウ「BIRDMEN」

ブラック、レッド、グリーン、ホワイト、ブルー…… タイプの違う中学生5人の成長譚

「結界師」を代表作に持つ田辺イエロウが週刊少年サンデー(小学館)にて2013年より連載している「BIRDMEN」は、ある日突然「鳥男」になってしまった中学生男女5人の成長を描くジュブナイル。キャラクター1人ひとりの人物描写が細かく描き出されていることで、サンデーっ子のみならず、大人のマンガ読みからも定評を得ている。

コミックナタリーでは田辺にインタビューを実施し、「BIRDMEN」の成り立ちからキャラクター造形について話を聞いた。「結界師」に比べてキャラ数を絞り、より深い性格描写に努めているという本作の魅力に迫る。

取材・文 / 粟生こずえ

SF×ジュブナイル「BIRDMEN」

「BIRDMEN」カラーカット

日常に不満を抱えていた中学3年生の烏丸は、ある日、鴨田、鷺沢、つばめとともにバス事故に巻き込まれる。それ以来、身体から翼が生える「鳥男」となってしまった。そして彼らは鳥男の先輩・鷹山の指導のもとに「鳥部」を結成! 突如現れる「ブラックアウト」に対抗するため、鳥男の謎の解明に挑みつつ、特殊な能力を使って活動を広げていく。

この5人が鳥部メンバー!

鴨田樹真(かもだみきさだ)
グリーン
烏丸の小学生の頃からの友人。体格が良くケンカが強いので周囲に恐れられやすいが、実際は人懐っこい性格をしている。
海野つばめ(うみのつばめ)
ブルー
烏丸とは別の学校の生徒で鷺沢と親しい。鳥部で唯一の女の子。人見知りをしない明るい性格をしている。

烏丸英司(からすまえいし)
ブラック
鳥部の副部長。記録係も務め、持ち前の頭の良さで実質的なリーダーも担当する。冷めた性格をしているが、日常に苛立ちと不満を抱えていた。
鷺沢怜(さぎさわれい)
ホワイト
お金持ちでイケメン。鳥部の発案者で部長も務める。過去に兄を亡くした過去を持つ。周りをよく見ており、観察眼が鋭い。
鷹山崇(たかやまそう)
レッド
小学生のとき、飛行機墜落事故に遭ったことをきっかけに鳥男となる。どこか離れたところから冷静に物事を見ている一面があり、その素性は謎。

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THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「バードメン」がイメージのきっかけ

──「鳥男を見ると幸せになる」……そんな都市伝説のエピソードから幕を開ける本作は、冒頭から謎めいた「鳥男」にグイグイ惹きつけられます。鳥男のアイデアが生まれたきっかけは?

大元をたどると……THEE MICHELLE GUN ELEPHANTに「バードメン」という曲がありまして。それを聴いたとき頭に浮かんだイメージですね。「結界師」の連載を始める前のことなんですけど。

──え、すごく意外なお答えが!

うっかり名前を呼んでしまわないようレッド、ブラックなどコードネームを決めた鳥部のメンバーは、早速ヒーローごっこに興じる。

聴いたときに浮かんだ、赤い空を黒い翼が生えた男たちが飛んでいるようなイメージがずっと残っていて。「結界師」が終わった後に、次はややヒーローもの寄りの作品をやりたいなと思ったとき、そのイメージを起点に考えはじめたんです。歌詞の内容とはほど遠いので、申し訳なくてあんまり言いたくなかったんですけど(笑)。曲の「バードメン」はもうちょっと大人の男のイメージですし。曲のイメージにかろうじて近いのは鷹山ですね。

──鷹山は5人の中ではいちばん大人っぽい雰囲気ですよね。それにしても5人の主要人物それぞれがとても魅力的です。キャラクターはどのように作っていったんですか?

とりあえず中心の5人だけ最初に固めて、あとは流れで必要に応じて作っています。

いじっめっ子を自分なりの方法で撃退する烏丸。

──烏丸くんは、これまでいそうでいなかった主人公像ではないでしょうか。

昔の少年マンガだったら絶対に主人公を張らないタイプですね。でも最近はまあまあいるんじゃないかな?

──だとしても、もうちょっとひねくれてるほうに偏った性格になりがちかと。

ひねくれてるけど根はそうでもない、というふうにしないとヒーローものの主人公としては成り立たないですからね。動かなくなる。

──確かに、行動の1つひとつに烏丸くんという子なりの理由がちゃんと見えてきます。小学生時代にいじめられていた烏丸くんが、自分なりの反撃をするエピソードにはスカッとしました。ここに彼の性格が表れてますよね。

おバカな鴨田は、“予想外に伸びた”キャラクターだという。

メンタルは割と強めに設定してあって。ウジウジはしてない。やられたらやり返すみたいな感じの子にしています。

──その負けず嫌いの執念深さがうまいこと、鳥男としての能力の開花に繋がってますよね。これはすごく腑に落ちました。

そういう性質がヒーローには必要かなと。私が個人的に、内向的だったり延々と悩むようなヒーローって好きじゃないので。烏丸はギリギリまで悩んでも最後には吹っ切れて「やったる!」となるような性格にしているんです。あと途中から予想外に伸びたというか、存在感が増したキャラは鴨田ですね。

──見た目はいかつくて強いのに根は素直で、猫が大好き……と、1話目からつかみはバッチリでした。

烏丸と鷹山は対になるキャラクター。

烏丸があまりにひねくれているので、バランスをとるためにシンプルな人にしたところはあるんです。場を和ませるためにちょっとバカな子は必要だし。でも、描き進めるうちに、烏丸は鴨田がいなかったらダメになってたなと思うくらい比重がどんどん大きくなってきました。ただキーになる人物は鷹山かなと思っていて。鷹山と烏丸は裏表で作ったキャラクターなんです。鷹山にないものを烏丸が持っていて、烏丸にないものを鷹山は持っている。1人の人間を2つに分けたみたいな感じです。

──鷹山と烏丸の2人が主人公ということになるんでしょうか。

そうですね。ただモノローグで語るキャラクターは烏丸だけと決めているんですが。

──そういえば1巻の表紙は鷹山ですね。

まあこれには理由がありまして……1巻の時点で鳥男に変身してるのって鷹山だけなんですよ。ネタバレになっちゃうので、烏丸の変身姿を表紙にするわけにいかなかったんです。

田辺イエロウ「BIRDMEN」1巻~6巻 発売中 / 小学館
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あらすじ

中学生の烏丸英司は、鴨田、鷺沢、つばめと共にバス事故に巻き込まれて以来、身体から翼が生える“鳥男”となる。鳥男の先輩・鷹山の指導の下、5人は鳥部を結成。鳥部は生物学者の龍目を仲間に加え、次第にさまざまな能力に目覚める“鳥男”の謎の解明に挑みつつ、特殊な能力を使って活動を広げる。一方、外国にも鳥男が存在した。それらと関係があり、国際遺伝子銀行を併設する学術都市、「EDEN」という組織が鳥部に接近するが……。単調な中学生活から一変、予期せぬ出来事と秘密がいっぱいのSF×青春ジュブナイル!!

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田辺イエロウ(タナベイエロウ)
田辺イエロウ

東京都出身。2000年に「闇の中」で小学館新人コミック大賞少年部門佳作受賞。2002年に少年サンデー特別増刊Rに掲載された「LOST PRINCESS」 でデビューを果たす。2003年に少年サンデー超にて「フェイク」を発表。2003年より週刊少年サンデー(すべて小学館)で「結界師」を初連載する。同作は2006年10月にTVアニメ化されヒット作となり、2007年には第52回小学館漫画賞少年向け部門を受賞した。2013年より週刊少年サンデーにて「BIRDMEN」の連載を開始。単行本は6巻まで刊行中。