コミックナタリー Power Push - 「はるかリフレイン」
「ひぐらしのなく頃に」竜騎士07、語る もし読んでいたら「ひぐらし」は生まれていなかった
伊藤伸平「はるかリフレイン」が、TSUTAYAと復刊ドットコムによる「コミック復刊プロジェクト」第1弾作品として発売された。女子高生・はるかがタイムリープを繰り返し、恋人・啓太の死を回避しようと試行錯誤するループものの傑作だ。
復刊を記念し、コミックナタリーでは「ひぐらしのなく頃に」の作者・竜騎士07に「はるかリフレイン」の魅力を語ってもらった。同じくループものを手がける作家として、本作を読んだ感想を尋ねると「このマンガを読んでいたら『ひぐらし』は生まれなかっただろうな」という衝撃的な返事が……。その言葉の真意とは?
取材・文 / 安井遼太郎
もし読んでいたら「ひぐらし」は生まれていなかった
──今回は「はるかリフレイン」が、ループものと呼ばれるジャンルの作品ということで、そういったジャンルの書き手の第一人者として竜騎士07さんにお話を伺えればと思います。改めまして、「はるかリフレイン」をお読みになっていかがでしたか。
まず読んで思ったことはですね、このマンガを「ひぐらしのなく頃に」を書く前に読んでいたら、「ひぐらし」は生まれなかっただろうな、ということです。
──のっけから衝撃的な言葉が出てきましたが、それはどういうことでしょうか。
「ひぐらし」を書いていた頃、読者からいただいていた感想文の中に「『はるかリフレイン』は好きですか?」とか、「『はるかリフレイン』とここが似ていますね」とか、そういうふうに言ってくださったものがあったように記憶しています。当時は「似た作風の作品があるんだな」と思うぐらいだったのですが、今回「はるかリフレイン」を読んで確信しました。もし「ひぐらし」を書くより前に本作を読んでいたら「何をやってもこれのパクリに見えてしまう」と考えて、全然違ったものを書いていたな、と。ある意味無知が取り柄というか、こんなすごい作品を知らないおかげで、しゃあしゃあと書くことができたんだなという(笑)。
──ちなみにもし、「ひぐらし」以前にこの作品を読んでいたらどんなものを書かれていたと思われますか?
少なくともループという要素は使わなかったでしょうね。下手をすると、「もう『はるかリフレイン』があるからいいや」とすっきりしちゃって、何も書かなかったかもしれません。
──なるほど。「ループすることによって恋人の死を防ぐ」というドラマを竜騎士さんが書かれるとしたらいかがでしょう。
僕が同じ道具立てで物語を書かせてもらうのだとしたら……まずあの、彼氏の啓太が必ず死ぬ要因になるケータイ男がいるじゃないですか。
──通話しながら車を運転していたせいで、啓太を轢いてしまう男ですね。
なぜ彼が、あそこまで啓太を仕留めに来るのかという関係を掘り下げるでしょうね。「ひぐらし」的にミステリアスな書き方でいくならば、ケータイ男には明確な殺意があったことにすると思います。
──お葬式とかで謝っている姿は仮の姿で、実は明確に啓太を殺そうとしているのだと。
そうです。例えばこの、主人公がいろいろ力を尽くしたのに、シャーッとケータイ男が自転車で突っ込んでくるシーン。やっぱり殺しに来るんか!っていうね。もう「彼氏絶対殺すマン」みたいになってるじゃないですか(笑)。「ひぐらし」の「罪滅し編」の冒頭の詩で「一度目なら、今度こそはと私も思う。避けられなかった惨劇に。二度目なら、またもかと私は呆れる。避けられなかった惨劇に。三度目なら、呆れを超えて苦痛となる。七度目を数えるとそろそろ喜劇となる」というのがあるんですが、まさにそれですよね。「いい加減にしろよ!」という気持ちとともに、「ここまで来るともう運命だな」みたいな諦めと苦笑が湧き出てきます。
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TSUTAYAの“本の目利き”書店員と復刊ドットコムによる協同プロジェクト第1弾に選ばれたのは、90年代に進研ゼミ(ベネッセ)の「高1チャレンジ」で連載された、知る人ぞ知るSFラブコメディの傑作「はるかリフレイン」。1998年に白泉社より刊行された単行本を底本に、再編集・増補した復刻版が登場!
「啓太の死は運命なんかじゃない。このリフレインは神様がくれたチャンス!」異色の変身巨大ヒロインマンガ「まりかセブン」を生み出した、ミリタリー界やSF界ではコアなファンも多い伊藤伸平による痛快青春ストーリー!
伊藤伸平(イトウシンペイ)
1984年に少年サンデー増刊号(小学館)でデビュー。美少女アクションの第一人者で、特撮、アイドル、軍事、SFなどのオタク的知識に裏打ちされるギャグと、銃器や爆発を多用するハードなアクションが特徴。代表作に北爪宏幸のOVAをコミカライズした「モルダイバー」や「楽勝!ハイパードール」「まりかセブン」「キリカC.A.T.s」など。
竜騎士07(リュウキシゼロナナ)
同人サークル「07th Expansion」代表。架空の村・雛見沢村で巻き起こる怪死・失踪事件を描いたサウンドノベル「ひぐらしのなく頃に」シリーズを、2002年から2006年にかけてコミックマーケットで発表。同作は同人ゲームでは異例のヒットを記録し、アニメ化、コミカライズなど多数のメディアミックスが展開された。そのほかの代表作に「うみねこのなく頃に」「彼岸花の咲く夜に」など。