コミックナタリー Power Push - 桃栗みかん「群青にサイレン」
「いちご100%」の河下水希、15年ぶりに桃栗みかん名義で新作をドロップ
「いちご100%」「初恋限定。」などで知られる河下水希が、約15年ぶりに桃栗みかん名義で女性誌に復帰。月刊YOU8月号(集英社)にて、2人の男子高校生を軸に描く野球もの「群青にサイレン」をスタートさせた。
コミックナタリーは「群青にサイレン」1巻の発売にあわせて、同作を桃栗からのコメントとともに紹介。また桃栗のこれまでの活動を追った年表を用意したほか、10月に新装版が発売された過去作4タイトルについても解説する。
文 / 宮津友徳
「群青にサイレン」一番大嫌いなあいつと再び野球を
野球クラブでエースを目指していた小学生・吉沢修二は、いとこの空にあっさりとその座を奪われてしまう。敗北感を抱いた修二は野球を辞め、空も小学校卒業を待たずしてイギリスへ。
時は流れ2人は高校の入学式で再会。自分より20cm以上も背の低い空の姿を見た修二は、「今なら勝てるかもしれない」と、空とともに野球部への入部を決意するが……。爽やかなだけでは終わらない、嫉妬も愛憎も織り交ぜた青春ドラマ。
- 吉沢修二
- 高校1年生。野球クラブでエースの座を奪った空のことを憎んでいる。178cm、左投げ左打ち。
- 吉沢空
- 高校1年生。高校で再会した修二を再び野球の道へと誘う。157cm、左投げ左打ち。
桃栗みかんコメント
──15年ぶりに「桃栗みかん」名義で作品を発表した経緯を教えてください。
自分の中で、河下名義の作品は美少女の恋愛ものといった印象が固まりすぎて、それ以外は受け入れてもらえないようなちょっとした恐怖心があるんです。そんな中思いついたのがこの「群青にサイレン」なのですが、そのイメージに添う作品では全くないので結構悩みました。でも形にしてみたい気持ちが日に日に募っていって。ならいっそ「これは河下水希のマンガではない」という意味で、女性誌で、昔の名前でやろうと決めました。
──高校野球を題材に、いとこ同士の修二と空、対照的な2人の男子を描いたきっかけは?
本当かどうかはわかりませんが「人間が一番手放しづらい感情は嫉妬心」という話をどこかで聞いて、その「嫉妬心」を描いてみたいと思ったのがきっかけです。嫉妬で動くキャラってライバル役に設定するパターンが一般的な気もするのですが、あえて主人公にしてみたいと思いました。なので修二に妬まれやすいように、空には主人公的要素を多めに詰め込んでいるかも。勝敗がわかりやすいのでスポーツものにしようと考えたのですが掲載先が女性誌なので、知名度が高いという理由から、恐れ多くも野球マンガになりました。
──久々に女性誌で連載する上で、少年誌時代と違う部分、意識して変えている部分はありますか?
これまでの自分の画面に、女性誌らしい見せ方やコマ運びをプラス出来たらと思っています。ですが、なかなかそれが出来ず悪戦苦闘しています。
──ペンネームを使い分けることで先生の気持ちに変化があれば教えてください。
ペンネームに関しては先ほども記しましたが「河下」名義の場合は作品の方向性が決まっていたように思うので、「桃栗」名義ではそれがない分気ままに描けている気がします。
──1巻分を描き終えてみての感想を教えてください。
連載準備期間で考えていたことは1巻に全部詰め込んでしまったので、今後の展開が非常に不安です(笑)。とりあえず未完にならないようにしたいです。そしてこのマンガ、女の子のお色気シーンはほぼありません。もし期待されていた方がいらっしゃいましたら、本当にすみません……!
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- 河下水希が桃栗みかん名義で手がけた単行本4タイトル5冊が新装版に
- 桃栗みかん「新装版 高校男子─BOYS─」
- 試し読みはこちら
- 「新装版 高校男子─BOYS─」原作:花衣沙久羅 / 540円 / 発売中 / 集英社
- 桃栗みかん「新装版 空の成分」
- 試し読みはこちら
- 「新装版 空の成分」540円 / 発売中 / 集英社
- 桃栗みかん「新装版 かえで台風─タイフーン─」
- 試し読みはこちら
- 「新装版 かえで台風─タイフーン─」475円 / 発売中 / 集英社
- 桃栗みかん「新装版 あかねちゃんOVER DRIVE(1)」
- 試し読みはこちら
- 「新装版 あかねちゃんOVER DRIVE(1)(2)」各475円 / 発売中 / 集英社
桃栗みかん(モモクリミカン)
静岡県出身。1994年に花衣沙久羅原作による「高校男子─BOYS─」をoffice YOUにて発表し、マンガ家としてデビューを果たす。その後も「空の成分」「かえで台風─タイフーン─」「あかねちゃんOVER DRIVE」などの作品を女性誌でコンスタントに発表した後、2000年に河下水希と筆名を改め週刊少年ジャンプ(集英社)にて「りりむキッス」の連載をスタートさせる。2002年から2005年まで連載された「いちご100%」はアニメ化や小説化、ゲーム化などさまざまなメディアミックスが行われるヒット作となった。このほか河下水希名義での代表作に「初恋限定。」「あねどきっ」「てとくち」など。2015年に月刊YOU(集英社)にて、桃栗みかん名義での約15年ぶりの連載作「群青にサイレン」を始動させた。