音楽ナタリー Power Push - 「シン・ゴジラ」公開記念特集

安野モヨコ、庵野秀明を語る

「シン・ゴジラ」は観た後で元気になれる

──ところで「シン・ゴジラ」のストーリーについては、安野さんはどのように感じられました?

映画「シン・ゴジラ」場面写真 ©2016 TOHO CO., LTD.

これは皆さんおっしゃることだと思うんですが、やはりオリジナル版の「ゴジラ」(1954年)への愛情とリスペクトを感じました。そのうえでちゃんと現在形の新しい物語に仕上げているところが、個人的には好きですね。もちろん影響の受け方っていろいろなので。元となる作品のある部分を少しずつ切り出してコラージュするようなやり方も、私はいいと思うんです。ただ今回の「シン・ゴジラ」は、それとは違っていて……。マンガで喩えるなら古い図版を、最新用具を駆使して新しい紙にトレースしている感じかな。

──確かに「文明が造りだしてしまった怪物に対し、人がどう始末を付けるか」というテーマは、1954年の「ゴジラ」にそのまま繋がっていますね。と同時に、東日本大震災以降の世相を巧みに取り込んでいたり、設定はすべてアップデートされている。

一番うれしかったのはね、私、今回の「シン・ゴジラ」は観た後で元気になれる映画じゃないかと思ったんです。膨大な登場人物たちがみんな、各自のポジションでやるべきことをやってる感じがしません?

──ああ、すごくします。

ラッシュを見せてもらいながら、「もし現実にこんな事態が起こって、自分があの立ち位置にいたらどうするだろう」ってリアルに思ったし。そこが作品の魅力になってるんじゃないかなって。

──魅力的な“働きマン”がいっぱい出てくる映画。

映画「シン・ゴジラ」より。多くの登場人物が、日本を守ろうと奮闘する。©2016 TOHO CO., LTD.

ですかね(笑)。市川実日子ちゃんが演じてた女性の若手官僚なんて、どの職場にもいそうだもんね。あそこまで極端なキャラじゃなくても、自分の専門領域を強烈なプライドでもって遂行していく人。石原さとみさんが、劇中の色気と華やかさを一手に引き受けていたのと見事な対になっていて、どちらも大好きでした。あとはやっぱり、長谷川博己さん演じる若手官僚! めっちゃベタですけど、「こういう人が現実にいてくれたらいいなあ」って何度も思いました。

「昨日はこのシーン撮ったよ」とか、食卓でフツーに会話してる

──ちなみに「シン・ゴジラ」を撮影中の庵野監督は、お家ではどんな様子でした?

私が見るかぎり楽しそうでしたよ。時間には常に追われてる感じでしたけれど。毎朝、私が誕生日に買ってあげた黒いリュックをしょって、割と元気いっぱいに出かけてましたから。

──制作期間中、夫婦でけっこうお仕事の話もされるんですか?

うちはね、普段からめちゃくちゃ話すんですよ。「昨日はこのシーン撮ったよ」とか「今日はこういう作業をするんだ」とか、食卓でフツーに会話してる。私も自分の仕事のことすごく話すし……。それは昔から変わらないです。実は「シン・ゴジラ」の脚本も、監督から割と早い段階で手渡されてました。時間があるとき読んどいてください、って。

──庵野監督、きっとモヨコさんの意見が聞きたかったんですね。

映画「シン・ゴジラ」より、石原さとみ扮するカヨコ・アン・パタースン。米国から派遣された女性エージェントという役どころだ。©2016 TOHO CO., LTD.

残念ながらその時期、自分の単行本作業が忙しくて。実際はほとんど読めなかったんですけどね。ただ監督から、細かい質問はけっこうされました。主に石原さんが演じていた女性に関してですけど。リサーチ用のラッシュ試写を観たら私の受け答えがそのまま採用されていて驚いちゃった(笑)。

──なるほど。そういえばエンドロールには「オチビサン」の名前もありました。どこに出ていたのか、不覚にも気付かなかったんですが……。

「監督不行届」より。愛猫のジャックをかわいがるカントクくん。©Moyoco Anno / Cork

あれはわかんなかった! 監督、けっこうそういう遊びが好きなんですよ。確か「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」でも、(葛城)ミサトさんの枕元にさりげなく「週刊JIDAI」(注:「働きマン」の主人公・松方が編集部に属している雑誌)が置いてあったり……。お弁当箱にオチビサンの図案が入ってたり。あと階段のところにいる猫が、私が原画を描いたうちのジャックの似顔絵だったっていうのもありました。

──へええ、さすが凝り性ですね。

どうやら「シン・ゴジラ」でも、街中にある動物病院の看板に、うちの猫の写真と名前を使ってるらしいんですけど……。画面に情報があり過ぎて。私はまったく気付きませんでした(笑)。

「24時間まるごと 祝!シン・ゴジラ」

「24時間まるごと 祝!シン・ゴジラ」

日本映画専門チャンネル
7月28日(木)19:00~29日(金)22:00

庵野秀明が総監督を務める「シン・ゴジラ」が7月29日に封切られる。その公開を記念し、庵野がこれまでに手がけた実写5作品を連続放送。また「シン・ゴジラ」主演の長谷川博己、石原さとみ、芸能界屈指のゴジラファンとして知られる佐野史郎らゲスト10名が初めて鑑賞したゴジラ作品と、当時の思い出やエピソードを語る特別トーク番組「ゴジラ ファーストインパクト」全8回も一挙放送する。さらにゴジラ作品8本も放映され、その中にはシリーズで初めて全編4Kデジタルリマスターで送る「『キングコング対ゴジラ』<完全版>4Kデジタルリマスター」も含まれる。

庵野秀明実写映画 放送作品

「巨神兵東京に現わる 劇場版」
「式日」
「ラブ&ポップ<R-15>」
「キューティーハニー」
「流星課長」

「ゴジラ ファーストインパクト」

日本映画専門チャンネル 毎週木曜 21:00~

8月までオンエアされる特別番組。ゴジラシリーズへの出演経験を持つ宇崎竜童、お笑いコンビ・ドランクドラゴンの塚地武雅ら計10名のゲストが初めて鑑賞したゴジラ作品と、鑑賞当時の思い出を語る。7月のゲストには元プロ野球選手の山本昌、「シン・ゴジラ」主演の長谷川博己、石原さとみらが並ぶ。

なお、抽選で555名に特製ゴジラTシャツが当たる「ゴジラ初体験記」投稿キャンペーンが7月31日まで特設サイトにて開催中だ。

「シン・ゴジラ」

「シン・ゴジラ」2016年7月29日より全国東宝系にて公開

東京湾アクアトンネルが、巨大な轟音とともに崩落する原因不明の事故が発生。首相官邸では閣僚たちによる緊急会議が開かれ「原因は地震や海底火山」という意見が多数を占める中、内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)だけが海中に棲む巨大生物による可能性を指摘する。内閣総理大臣補佐官の赤坂(竹野内豊)ら周囲の人間は矢口の意見を否定するも、その直後、海上に巨大不明生物の姿が露わになった。そして政府関係者が情報収集に追われる中、謎の巨大生物は鎌倉に上陸し、建造物を次々と破壊しながら街を進んでいく。この事態を受けて、政府は緊急対策本部を設置し自衛隊に防衛出動命令を発動し、米国国務省からは女性エージェントのカヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)が派遣された。そして川崎市街にて、“ゴジラ”と名付けられたこの巨大生物と自衛隊との一大決戦の火蓋が切られた。果たして、日本人はゴジラにどう立ち向かっていくのか……。

スタッフ

総監督・脚本:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣

キャスト

矢口蘭堂:長谷川博己
赤坂秀樹:竹野内豊
カヨコ・アン・パタースン:石原さとみ

©2016 TOHO CO., LTD.

安野モヨコ(アンノモヨコ)
安野モヨコ

1971年3月26日東京都杉並区生まれ。1989年に別冊少女フレンドDXジュリエット(講談社)にて「まったくイカしたやつらだぜ!」でデビュー。岡崎京子のアシスタントを経て、別冊フレンド(講談社)にて「TRUMPS!」の連載を開始。フィール・ヤング(祥伝社)での連載「ハッピーマニア」では、恋する女性の心理を大胆に描き多くの共感を得た。なかよし(講談社)での連載「シュガシュガルーン」は第29回講談社漫画賞受賞。夫はアニメ監督の庵野秀明で、著作に夫婦生活を題材とした「監督不行届」がある。そのほか著作に「働きマン」「さくらん」「ジェリー イン ザ メリィゴーラウンド」など。現在はAERA(朝日新聞出版)で「オチビサン」を、フィール・ヤングで「鼻下長紳士回顧録」を連載中。

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