内気な緑化委員の山田と、陸上部エースで学校の人気者・加瀬さんの女子高生2人によるきらめく青春を高嶋ひろみが描いた「あさがおと加瀬さん。」。5月初旬、佐藤卓哉が監督、坂井久太がキャラクターデザインと作画監督を手がけたアニメーションクリップがYouTubeにて公開された。7月25日には原作コミックス「加瀬さん」シリーズの最新作「エプロンと加瀬さん。」が発売。さらにアニメーションクリップを収録したBlu-ray付きの特装版も制作されることが、つい先日発表された。
コミックナタリーではアニメーションクリップの制作を記念し、原作者の高嶋と、佐藤監督を招いた特集を実施。「映像を作るのは運命だった」という発言が飛び出るなか、アニメーションクリップ企画の始まりや映像へのこだわりについて語ってもらった。
取材・文 / 西村萌
作品紹介
夏休みの少し前、あさがおをきっかけに2人のきらめく恋と青春は動き出す──
-
内気で控えめな高校2年生。
緑化委員の活動に対する熱意は強く、草花の手入れは夏休みでも毎日欠かさない。
-
陸上部のエースで学校の人気者。
ボーイッシュな美人。初めて言葉を交わす前から、真面目に緑化委員の仕事をこなす山田のことを知っていた。
出会いは一目惚れ
──「あさがおと加瀬さん。」のアニメ映像を奥華子さんの楽曲に乗せたクリップがYouTubeで公開されました。まずは佐藤監督と坂井久太さんという、「STEINS;GATE」「苺ましまろ」のコンビがタッグを組んだこの企画の始まりを教えていただけますか?
佐藤卓哉 もともと僕が原作のファンだったんです。去年の春ぐらいに作品に出会ったのかな。「加瀬さん」シリーズ3冊を一気に読んだんですけど、そのときに「これをアニメでやりたい」ってピンときて。
高嶋ひろみ ありがとうございます……!
佐藤 もう一目惚れでした。
高嶋 ありがとうございます。読んでいただけただけでうれしいです……ありがとうございます!
佐藤 そんなに感謝していただけるなんて(笑)。山田と加瀬さんを見て、「この2人、なんだかいいなあ」って漠然と感じたんですよね。生き生きとして、いつも幸せそうな姿に心動かされたんだと思います。
秘密にしていた、一番好きなマンガ
佐藤 その後、今回キャラクターデザインと作画監督をやってくれた坂井さんに「『あさがおと加瀬さん。』ってマンガがすごくいいんですよ」ってオススメしたんです。そしたら坂井さんは当然のように存在を知っていて、「知ってるも何も、一番好きなマンガです」って。
高嶋 本当でしょうか……? 恐れ多いです。
佐藤 でも今までいろんなアニメの企画を提案してきた坂井さんが、「あさがおと加瀬さん。」の名前だけは出さなかったみたいなんですよ。あまりにも好きすぎるから、ずっと誰にも話してなかったらしいです。
高嶋 えっ、それは光栄です……!
佐藤 ビックリですよね。そこで僕から坂井さんに、「本当にアニメ化へ動いてみないか?」と持ちかけたんです。そしたら「佐藤さんがやるなら」と言ってくれて。半ばその場の勢いのような感じだったんですけど。
高嶋 そういう経緯で始まったのですね、驚きました。
幸せそうな2人を見るのは気持ちいい
佐藤 坂井さんは基本的にかわいい百合ものが好きなので、この作品を好きだって言うのも納得ですよ。
──ちなみに高嶋さんは、こういった百合ものを描くのは?
高嶋 BLは別名義で以前少し描いていましたが、女の子同士の恋愛ものは初めてです。
佐藤 へえ、BLを描いていたとは。
高嶋 「あさがおと加瀬さん。」は「ピュア百合アンソロジー ひらり、」(新書館)というアンソロジーが立ち上がるとき、編集さんから「女の子同士の恋愛に限らず、友情やその他……テーマはなんでもいいので気軽にやってみませんか?」と声をかけていただいたのが始まりです。気軽に描いてもいいなら友情ものかな?と思ってスタートしたんですが、そしたら意外と恋愛してるものができて。それまであまり1対1の恋愛ものは描いていなかったので、「あれ? 珍しく恋愛ものが描けたな」と当時思ったのを覚えています。
佐藤 そうだったんですか。
高嶋 アンソロジーなので最初は読み切りだったんですが、2人のキャラクターがとても動かしやすかったので、その後も「加瀬さん」シリーズとして読み切りを続けさせていただきました。恋愛を中心にしっかり2人の関係を描いていこうと思いまして。
佐藤 個人的にこの作品は百合ものである以前に、まず青春ものだと思っているんです。何より「加瀬さん」シリーズの何が好きかっていうと、たぶん僕も坂井さんも具体的なシーンというよりキャラクターなんですよ。幸せそうな2人を見ているのがうれしい……というか気持ちがいい。
──高嶋さんは、執筆にあたって重要視しているポイントはありますか?
高嶋 恋愛に関わるところは丁寧に描くようにしています。あと私はコメディが好きなので、小ネタなどのちょっとコミカルなシーンはできるだけ入れたいなと思っています。
佐藤 例えば山田と親友の三河っちの会話とか、山田の家に訪れた加瀬さんが山田の布団の匂いを嗅ぐ描写はコミカルですよね。
高嶋 そうですね。この作品で大切にしているのは恋愛描写とコミカルな描写……あとは青春描写でしょうか?
佐藤 それって、このマンガの要素全部じゃないですか(笑)。
次のページ »
加瀬さんだってあくまで女の子
「加瀬さん」シリーズ最新作
- 高嶋ひろみ「エプロンと加瀬さん。」
- 2017年7月25日発売 / 新書館
-
コミック 918円
-
特装版 コミック 2376円
- 特装版付属内容
-
・Blu-rayディスク
- アニメーションクリップ「キミノヒカリ」
- アニメーションクリップ「キミノヒカリ」ライカリール
・特製36Pアニメブックレット
- キャラクター設定
- 本編美術ボード
- 原画集
- スペシャル対談(高嶋ひろみ×佐藤卓哉×担当編集×プロデューサー)ほか
・高嶋ひろみ描き下ろし小冊子「アントキノ加瀬サン。」
・高嶋ひろみ描き下ろし特製BOX
これまでのシリーズ
- 高嶋ひろみ「あさがおと加瀬さん。」
- 発売中 / 新書館
隣のクラスの加瀬さんは陸上部のエースで美人の女の子。内気な緑化委員の山田は夏休みの少し前、育てているあさがおの前で加瀬さんに声をかけられて仲良くなった。知れば知るほど加瀬さんを大好きになっていく──そんな山田の思いは──!?
- 高嶋ひろみ「おべんとうと加瀬さん。」
- 発売中 / 新書館
- 高嶋ひろみ「ショートケーキと加瀬さん。」
- 発売中 / 新書館
- 高嶋ひろみ(タカシマヒロミ)
- 12月26日生まれの北海道出身。血液型はAB型。主な作品として「未満れんあい」(双葉社)、「はれたら明日! 」(新書館)などがある。また「加瀬さん」シリーズを「ピュア百合アンソロジー ひらり、」にて発表し、同誌の休刊後はウェブマガジンウィングス(いずれも新書館)にて連載中。「あさがおと加瀬さん。」「おべんとうと加瀬さん。」「ショートケーキと加瀬さん。」とシリーズ展開されており、7月25日には最新作「エプロンと加瀬さん。」が発売される。
- 佐藤卓哉(サトウタクヤ)
- 4月生まれのA型で、宮城県栗原市出身。音楽が好き。再放送で観たテレビアニメ「宝島」「母をたずねて三千里」などに衝撃を受け、アニメ界に入る。監督作品に「selector」シリーズのテレビアニメと劇場版のほか、「STEINS;GATE」「苺ましまろ」「好きっていいなよ。」「NieA_7」など。シリーズ構成としてテレビアニメ「Fate/stay night」第1作や「舟を編む」も手がけている。
- イメージソング「君の笑顔(album ver.)」収録
奥華子 アルバム「good-bye」 - 発売中 / ポニーキャニオン
- 奥華子 最新アルバム
「遥か遠くに見えていた今日」 - 発売中 / ポニーキャニオン
-
初回限定盤 [CD+DVD]
3500円 / PCCA-04535 -
通常盤 [CD]
3000円 / PCCA-04536
2017年8月1日更新