吉本芸人が参加したさまざまな企画を4種類のアングルで楽しめるマルチアングル動画が配信されている。企画テーマは漫才、コント、グルメ、人生相談、ラップ、ボクシング、メイクなど多種多様だ。これらの動画は、映像、音楽、電子書籍、5G向けコンテンツなどを提供しているKDDIのサービス「auスマートパスプレミアム」の「マルチアングル動画プレイヤー」で視聴できる。
お笑いナタリーでは「ボケツッコミ逆転漫才」に挑戦した銀シャリにインタビューを実施。漫才での役割を入れ替えた感想、マルチアングル動画の魅力などを聞いた。
取材・文 / 塚越嵩大 撮影 / 辺見真也
ツッコまれてるときに待ってる時間ハズない?
──普段の役割を逆転させる「ボケツッコミ逆転漫才」に挑戦した感想はいかがですか?
鰻和弘 いつもの漫才もボケ・ツッコミ関係なく自由にやってるほうですけど、僕が橋本の担当部分をここまでガッツリやるのは初めてでした。単純に新鮮で楽しかったです。意図せず橋本っぽい言い方になっちゃいました。でも普段の相方ばりにできているわけでもなくて……やっぱり橋本ってすごいですもん(笑)。高音でガーンとツッコむ感じを見様見真似でやってみました。
橋本直 僕とのズレを楽しんでほしいです。
──逆に橋本さんは鰻さんのボケを担当してみて感じたことはありましたか?
橋本 僕はツッコミのほうが楽しかったです(笑)。
鰻 正直やな!
橋本 ツッコミって相手の言ったことを受けてのカウンターじゃないですか。それに慣れてるからボケをやってみると「なんもないところからボケるのすげえな!」と思います。担ってみて難しさがわかるし、ようこんなことを恥ずかしげもなくできるなと。
鰻 ははははは!(笑)
橋本 動画でも僕がめちゃめちゃ照れてるのがわかると思います。変な気分というか、ずっとヘラヘラしてしまいました。
──普段の漫才でも橋本さんがボケっぽくなる瞬間がありますが、そのときとは違う感覚なんですか?
橋本 あの部分は台本には書いてないんです。僕が本番で勝手にテンション上がってやってることがほとんど。だからまた違う感覚です。
──そうなんですね。アドリブだとは知らなかったです。
橋本 ツッコミがヒートアップしていくと意図せずボケになっていくというか、自然発生的というか。僕のボケはツッコミの延長線なんです。
鰻 台本に書かれたボケとアドリブのボケってジャンルが全然違いますもんね。「ボケツッコミ逆転漫才」では橋本が普段とまったく違うことをやっているので、その恥ずかしさはあるでしょうね。「間違ったこと言わんとあかん!」みたいな(笑)。
橋本 あとボケを担当して思ったんですけど……ツッコまれてるときに待ってる時間ハズない?(笑)
鰻 そうかな?(笑)
──確かにツッコミの人にとってはいつもと違う感覚かもしれないですね。実際に完成したものをマルチアングル動画プレイヤーで見た印象は?
橋本 めちゃめちゃ面白いです。メインのアングルが大きく表示されている下に、別のアングルも映っている漫才の映像なんて見たことないので楽しいです。意外に違和感ないなあ。
鰻 どちらかがボケたりツッコんだりしているときの、もう片方の表情もじっくり見られます。
橋本 “待ちの顔”な。
鰻 “待ちの顔”がここまでハッキリ映されてることなんてないですよ(笑)。
橋本 何度も楽しめるのがいいですよね。アングルが「ボケてる鰻」「ツッコんでる鰻」「ボケてる橋本」「ツッコんでる橋本」の4種類なんです。つまりアングル切り替えを駆使すれば「ボケてる橋本」と「ツッコんでる橋本」の漫才も見られるんです。今後、マルチアングル動画が普及したら“1人漫才師”が現れるかもしれない。逆に人数を増やして4人漫才をやっても面白そうです。
ボケの1000本ノックで“ツッコミーズハイ”になりたい
──銀シャリさんのボケ・ツッコミの役割はどの段階で固まったんですか?
鰻 お互いにコンビを組むのが何組目かだったので、すでに僕がボケで橋本がツッコミでそれぞれ固まっていたんです。
橋本 もともと鰻がツッコミを探していて、僕がすでにツッコミをやっていたので、特に役割を考えることもなく自然とこうなりました。僕は昔こそボケだったんですけど、途中からツッコミにシフトしていたんです。
──なぜツッコミに転身したんですか?
橋本 ボケんのハズいなあって(笑)。
──そんな理由で……。
橋本 ジャンケンで負けたのもありました。銀シャリを組む前の2000年代前半って今ほどツッコミブームっぽい感じになっていなかったので、みんなボケをやりたがっていたんです。そんなときにたまたまボケとボケで組むことになって、僕がジャンケンで負けてしまって。そしたら僕にはツッコミのほうが合っていたみたいで、そこからはずっとツッコミです。
──お二人がそれぞれ「ボケっていいな」「ツッコミっていいな」と思う瞬間はありますか?
鰻 今まで考えたことなかったなあ……。ボケたいときにボケられるのって実はツッコミのほうで、それはマジで羨ましいかも。「ここで絶対にボケをしなければいけない」という状況で打席に立つのってボケ担当の芸人じゃないですか。ボケ担当だからこそ逆に自由にボケられない状況が結構あって。
橋本 ツッコミ担当としては「もっとボケてくれてええよ」と思うことはあります。まだ足りない。僕はもっとボケを浴びたいんです。野球でいうとずっと手元に来たボールを捕球してる感じなので、もっといろんなところに放たれたボールを縦横無尽に飛び回ってキャッチしたい。真正面に来なくてもジャンピングキャッチとかダイビングキャッチできますから。1000本ノックを全部処理して“ツッコミーズハイ”になりたいです。
──その動画もマルチアングルで撮ったら面白そうです。
橋本 ぜひやりたいです。最近はツッコミが足りないから、何もないところでも「いや、しゃべらへんのかい!」とかツッコんでいます。ツッコミの行き着く先は“無からのツッコミ”です。
──究極ですね(笑)。「ボケツッコミ逆転漫才」には銀シャリさんとニューヨークさんが参加しましたが、ほかにボケツッコミが逆転した状態で見てみたい芸人さんはいますか?
橋本 おいでやすこがさん。おいでやす小田さんが静かになったらどうなるのか興味があるし、こがけんさんの大声ツッコミも気になるし、絶対に面白いと思います。
鰻 僕はコロコロチキチキペッパーズを見てみたいです。西野がどうやってナダル役をやんねやろ。
橋本 男女逆にしても面白いんじゃないですか? ゆにばーすとか。漫才じゃなくてコントでもできそう。空気階段みたいなビジュアルがまったく違う2人に入れ替わってほしいです。
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原付に乗っているところをドローンで空撮してほしい