ナタリー PowerPush - たりふた SUMMER JAM '12

山里亮太&若林正恭Wインタビュー

若林正恭インタビュー(後編)

業を背負ってる男

──1日目の話って山里さんとしました?

若林 1日目の話! あれね、語り草ですよ。サトミツ(どきどきキャンプ佐藤)と安島さんと山ちゃんとの間で。

──山里さんが「1日目俺できてなかったー」って思っていたことは、わかりましたか?

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

若林 もう、わかるし、様子がおかしかったですもん。1日目の緊急会議のとき、会場からちょっと離れたいつも行くところに行こうって安島さんが誘ったら、山ちゃんが「そうなんすか?」みたいな顔したんですよ。すぐ家に戻りたいはずなの、あの男はね。で、僕が「じゃあ車乗って行きますか?」って言ったの。そしたら安島さんが「いや、俺と山ちゃんはタクシーで」って言うんですよ。いや、同じカフェに4人で行くのに、なんでタクシーと僕の車の2・2なんだろうと思って、ベラベラ喋りながら行ったら空気が重いんですよ。あとあと聞いたら、タクシーの中で「いやー……」みたいな話を深刻にしてたみたいですね。

──そのカフェで口火を切った話題ってなんですか?

若林 安島さんがね、ナシゴレンを頼んでたんです。山ちゃんがもうナーバスになってたから、誰もメシ頼まなくて。で、安島さんが「これナシゴレン食う空気じゃねえな」って、もうダーって1分40秒くらいでナシゴレンかき込んでましたね(笑)。食べ終わって、「いや、明日なんだけど……」ってシリアスに入ってきて(笑)。あとで山ちゃん言ってたんですけど、僕が次の日サンプラザの楽屋で、足を椅子の上に上げて、全然ライブと関係ない昨今の教育論について語ってたんですって。その語りがすっごい腹立ったらしいです(笑)。「俺がこんなに追い込まれてるのに」「お前も『明日の妄想恋愛が1ミリもできてない』って言ってたくせに」「何を教育論語ってんだ」と思って、アッタマきてたんですって。

──サマージャムを終えると若林さんはもちろんオードリーに帰るわけですが、ネタを作る機会は今どれくらいあるんですか?

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

若林 まあ年末なんで、オードリーの新しいネタを2本くらい書いたんですけど、非常にたりふた臭が入り込んでるんですよね。

──山里さんも言ってました。「あの男はそれをオードリーに持ち帰れる、常に芸人としていられるのがでかい」って。

若林 そうなんですか。山ちゃんからこの前珍しくメール来て。「北野演芸館」で漫才やったのを見たみたいで、「俺好きなタイプのネタだわ」みたいなこと言ってくれて。

──「たりふた」がオードリーに生かされていることが羨ましそうでした。

若林 でもあの男は天才だってことに気づかないところが天才たるゆえんでしょうからね。自分がどんだけ返せてるかっていうことが、永遠にわからないでしょうね。もう業を背負ってる男ですよ。そういうもんなんでしょうね、天才の人って。だからすごく母性の強い女の子がね、山ちゃんと付き合って毎日言ってあげなよって。

──あはははは(笑)。「天才だよ」って。

若林 「天才だよ」って(笑)。で、またけっこう年下が好きだから女子大生ですよね。女子大生でちょっと少女っぽく見える子で、母性。それしかないでしょあの男の孤独を埋められるのは(笑)。

「返し」っていう畑は諦めた

──若林さんは、山里さんがそれに気づいたら、さらに良くなるって思ってることですか? 天才に溺れることもなく。

若林 もちろん。だって、全然「まだまだやんなきゃ」と思っちゃってる人だから。僕は山里さんと接して、「返し」っていう畑は諦めましたもんね。あのボキャブラリーの豊富さを目の当たりにして、ちょっと自分っていうものがわかりました。

──そういう影響があるんですね。

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

若林 だから、いかに頭の中からワードを引っ張ってくるというよりは、もう「冗談じゃないよ!」っていう言葉をいかに面白く言うかっていう方向に行くしかない。天才と接して、それはすごく僕にとってよかったと思ってて。

──若林さんとしては次の「たりないふたり」の理想みたいなものってあったりしますか?

若林 でも、やっぱ夏が終わったときは、出し尽くしたと思ったから、もう無理かなと思ったけど、やっぱ時間空くと、出てきますよね。「これ『たりないふたり』で言おう」っていうものが。あとは、ツッコミを重ねていくっていう漫才を「たりないふたり」が始まったとき1番最初にやったんですけど、「もう1回あれ作ってみたいね」って山ちゃんと言ってて。

──昨日山里さんは、次の「たりないふたり」のタイミングが全然見えないという感じだったんですけど、若林さんは安島さんとよく一緒にいるわけですから、安島さんの中できっと見えてくるわけですよね、「若林くんもう行けるな」みたいなタイミングが。

若林 ああ、でしょうね。

──山里さんはそれこそいつなんどきでもできる天才っていう安心感もあるでしょうし。

若林 そうそうそう(笑)。山ちゃんは時期とか演出に絶対口出さないから。

──若林さんと安島さんの関係性の中で安島さんが「ここだ」って思ったときに「やるよ」っていうのがきっと出てくるんですね。次にお2人に会えるのはそのときだ、と。

若林 そうそうそうそう。

──では、ファンの人は、またお2人に会えるのをこのDVDを見ながら楽しみにしてくださいというところですね。

若林 はい。よろしくお願いします。

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。
収録内容

2012年8月20日、21日に中野サンプラザで行われたライブ「たりないふたり-山里亮太と若林正恭-presents たりふた SUMMER JAM '12 -We wanna be a human ASAP!-」を2枚組DVDに収録。2人が“戦場”と呼ぶスタジオ風と居酒屋風のセットで生き延びる術を実演した「サバイバル体験記」、たりふた名物「妄想ラブストーリー」、「こんな鬼に気をつけろ」と「理想の結婚相手」のプロフィール作成コーナー、ステージの大きさを生かして派手なアクションも盛り込んだ漫才など、見どころ盛りだくさん。(収録時間:本編240分+特典映像)

山里亮太(南海キャンディーズ)
  • 生年月日:1977年4月14日
  • 出身地:千葉県
  • 所属:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
若林正恭(オードリー)
  • 生年月日:1978年9月20日
  • 出身地:東京都
  • 所属:ケイダッシュステージ