ナタリー PowerPush - たりふた SUMMER JAM '12

山里亮太&若林正恭Wインタビュー

若林正恭インタビュー(前編)

芸人始めてから、あんなにネタ書いてたときがない

若林 山ちゃん昨日取材したんですよね? 喋ってました?

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

──すごく喋ってました。

若林 あ、喋ってました? 喋るからなあ、あのデブは(笑)。

──「たりないふたり」のない生活はどうですか?

若林 芸人始めてから、あんなにネタ書いてたときがないですね。本来若手のときこそやるべきことなんですけどね。

──オードリーとして、ネタをストイックに作った時期はなかったんですか?

若林 あっても、1本を練りあげていくんですよね。M-1があるから、2本あったらいいみたいな感じで、ネタの数を出すっていうのはなかったです。「たりないふたり」は1週間に1本新作作るっていうペースで、3カ月だから12本。で、安島さん(日本テレビ安島隆・「たりないふたり」演出)がノッてくると13本目をやるとか言って。「もういいよ」って言ったんですよ。そしたら、ちょっとムッとするんですよね(笑)。

──だって安島さんが作るわけじゃないですもんね。

若林 そうそうそう(笑)。僕、けっこう1本のネタに対して、スベったところを引いて、ほかを足していって、隙をなくしていくのが好きなんですよ。だから、「たりふた」のサマージャムも、2日間同じネタでいいと思って。1日目終わったらその作業をして、2日間来る人がどれだけいるかわかりませんが、それで笑いの量が下がっても、DVDになることを考えても、漫才としてはそのほうがいいと思ってたのに、もうなんか2本って決めてきた。

──あははははは(笑)。

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

若林 僕と山ちゃんがいる会議室に、腹くくってから来てたから。「もちろん違うネタでしょ?」みたいな。「もちろん違うネタでしょ」って入れば、こっちが「そうですか」っていくと思ってんなって思ったから、「え、そうなんすか?」ってわざと返して、ちょっとピリついて(笑)。その間山ちゃんは、ケータイでアイドル情報とか見てね、ほとぼり冷めるまで待ってる(笑)。で、最後にポソっと「そっちだね」って言うみたいな。僕と、安島さんがそれぞれの土俵をバーっと作って、どっちに山ちゃんが乗るかなんですよ。もっと揉めたことあったんですよね、確か。番組になって、「たりない」ってことでいろんなことやってきて、いろんなことがわかって、「意外と社交できるようになっちゃってんじゃねえか」みたいになってて。されど、「たりない」っていうことで、この2人が成長していくのか、それとも基本に帰る、原点回帰を目指すのか。で、揉めて揉めて、そしたら山ちゃんがね、鶴の一声で「そんなことよりも、1個1個のコーナーの精度を上げていかないと、間に合わないだろう」みたいなことを言ってくれたんです。確かにそうだなと思って、「じゃあ企画をまず考えるところから積み重ねていこう」と。そしたらサマージャムっていうでっかいジャムになったっていう。

100発100中拾える男

──ライブ中、ウケてるな、スベってるなって思った瞬間はありました?

若林 そんな余裕ないです。それは山ちゃんと僕の大きな差なんですけど、それが気にできる余裕がないんですよ、僕はもう。

──その差は大きいですね。山里さんの昨日の話はそれがすべてです。

若林 あ、本当ですか? そうそうそう。

──若林さんにとって、ライブでのゴールというのは、決めたことをやりきるという感じですか?

若林 そうそう。だからアマチュアなんですよね。山ちゃんと仕事して、すごく自分で感じたのはそこ。

──でも途中すごく遊び入れてますよね?

若林 はい(笑)。「たりないふたり」ではね。

──自分でブレーキをかけないこともひっくるめて、決めたことだけは絶対やりきるっていうのがゴールと?

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

若林 そうですね。でも、それができるのは山里さんがすごいからなんですよ。自分が本筋を外したいって思ってるわけじゃないんです。山里さんという男が、100発100中拾える男だから、そこまで全部見てもらいたいんですよ、お客さんに。だって、そんなこと言うわけないってことまで僕が言うわけじゃないですか。それでどう拾うんだっていったら、ちゃんと拾うじゃないですか、あの男は。あんまり言うとハードル上がるんですけど、それがたぶんお笑い業界で、もうトップクラス。だから、漫才の間にも遊びを入れることによって、「たりないふたり」っぽくなると思ってる部分があって。ただ、意外と山ちゃんと安島さんは好きじゃないんですね、本筋から外れることが(笑)。

──はははは(笑)。山里さんが「返せてないなあ」って思った瞬間はありますか?

若林 山ちゃん返せなかったときってあったかなあ。いや、でも、返せなかったときの返しも持ってるじゃないですか、あの男は。それも1つの芸になってるから。僕が1回おしりをボレーシュートみたいに蹴ったとき、山里さんは「ゴールポストに弾かれた!」って言ったんですけど、楽屋に帰ってきてから「『クロスバー直撃!』だったなー」って反省してた。異常だなと思いましたね(笑)。

収録内容

2012年8月20日、21日に中野サンプラザで行われたライブ「たりないふたり-山里亮太と若林正恭-presents たりふた SUMMER JAM '12 -We wanna be a human ASAP!-」を2枚組DVDに収録。2人が“戦場”と呼ぶスタジオ風と居酒屋風のセットで生き延びる術を実演した「サバイバル体験記」、たりふた名物「妄想ラブストーリー」、「こんな鬼に気をつけろ」と「理想の結婚相手」のプロフィール作成コーナー、ステージの大きさを生かして派手なアクションも盛り込んだ漫才など、見どころ盛りだくさん。(収録時間:本編240分+特典映像)

山里亮太(南海キャンディーズ)
  • 生年月日:1977年4月14日
  • 出身地:千葉県
  • 所属:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
若林正恭(オードリー)
  • 生年月日:1978年9月20日
  • 出身地:東京都
  • 所属:ケイダッシュステージ