河邑ミクの強さの根源、インタビューで辿る「揺るがなかった芸人への憧れ」 (2/2)

ウケてもスベっても全部自分の責任

──養成所時代の印象に残っている授業は?

賞レースの時期と重なったりして、出席している生徒の人数が少ない日があったんですけど、講師の先生が「今日はネタ見せじゃなくて芸人の裏話をしようと思います」と言ってロケバスで盛り上がる話は何かとか、ロケの合間にごはんを食べるときはこれを頼んだほうがいいとか、めちゃくちゃ実践的なことを教えてくれたんです。

河邑ミク

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──ピンポイントですけど、いずれ必ず役立ちそうなことですね。

「ロケバスで盛り上がるのは恋バナとお金の話」と聞いたので、芸人になってから実際に使わせていただきました(笑)。

──養成所卒業後は思い通りのスタートが切れましたか?

養成所のときからコンビを組んでいたんですが、デビューして1年後に解散してしまって。それからピンでライブに出るようになって、満足のいくウケが取れない日々が続きました。ただ、ピンって「ウケてもスベっても全部自分の責任」じゃないですか。そのときくらいから「私、芸人やってるな」と実感するようになりましたね。

スベって、立ち直って、を何度も繰り返してきた

──河邑さんが芸人として「これだけはやらない」と決めていることはありますか?

基本的にはウケればなんでもいいと思っているんですけど、私みたいな見た目だとウケないことがあるというのは養成所の頃に学びました。昔は身体を張ってみたり、下世話なことを言ったりするのが正義だとテレビを見ただけで思い込んでいて。「下ネタ言うのが芸人でっしゃろ!」みたいな(笑)。でも、それを使いこなすのがプロの技なんですよね。もちろん最初は理解するまでには至っていなくて、芸歴を重ねていろんな経験をしていく中で「このフレーズ、私が言ってもウケないんや!」と気づいていきました。

河邑ミク

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──養成所で教わったことを実際に現場で経験して身につけていくわけですね。河邑さんは「ウケたい」というのが常に原動力になっているように思いますが、これまで挫折しそうになったことはありませんでしたか?

私、精神がみんなより強いほうで、気付いたら嫌なことが過ぎてることが多いんです(笑)。もちろんむちゃくちゃスベったこともあって、そのときはつらいんですけど。養成所の頃からスベって、立ち直って、を何度も繰り返してきたから強くなったのかもしれません。

──近年、松竹芸能の芸人さんは多方面で才能を発揮して注目されていますよね。河邑さんは今後どんな道に進んでいきたいですか?

そうですね……。きれいな自分でいたいです(笑)。「芸人は汚れてなんぼ」みたいに思っていたこともあったんですけど、そうじゃない道もあるっていうのを自分で示せたらいいですね。あとは、芸人として、やっぱり賞レースでも認めてもらいたいです。

──ちなみに、憧れだった南海キャンディーズにはお会いできましたか?

山里さんにお会いできました。でもお仕事現場だったので、心の中では「やったー! 山里さんや!」と思っていたんですけど、それを押し殺して「お疲れさまです(スン)」みたいな感じを取り繕いました(笑)。あと、憧れている方がもう1人いまして。

──どなたですか?

藤井隆さんです。ピンになってから藤井さんをよく見させてもらっていて、ずっと大好きで。朝ドラ(2017年放送「わろてんか」)でご一緒することができたんですが、撮影中は山里さんのときみたいにずっと平静を装っていたんです。でも、もう二度と会えないかもしれないと思って最後の最後に「本当はとてもとても憧れてます」というのを伝えさせてもらいました。そしたら感情があふれちゃって、涙も出てしまって。すごい恥ずかしかったです(笑)。そのあとにお会いできたのが、「歌ネタ王」の決勝で。藤井さんは審査員だったので事前にご挨拶はしないようにしていたら、後日会社に「面白かったよ」とわざわざご連絡をくださったんです。それが本当にうれしかったです。

河邑ミク
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プロフィール

河邑ミク(カワムラミク)

1994年8月8日生まれ、大阪府出身。高校を卒業した18歳で松竹芸能タレントスクール大阪校(現・松竹芸能養成所大阪校)に入所。2014年にデビューした。ピン芸人となって間もなく「おはようコールABC」(ABCテレビ)ほかでレポーターを担当。2017年度下期放送の連続テレビ小説「わろてんか」(NHK総合)でお楽役を務める。2018年、2019年「R-1ぐらんぷり」、2022年「女芸人No.1決定戦 THE W」ファイナリスト。2021年には「歌ネタ王決定戦」で森本サイダーとのユニット・ミクミクサイダーで決勝進出した。モノマネも得意とし、「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」(フジテレビ)、「ものまねグランプリ」(日本テレビ)などに出演。現在は東京を拠点に活動中。