WOWOWオリジナルドラマ「殺意の道程」|バカリズム脚本、井浦新とW主演のサスペンスコメディ「重々しい雰囲気は全部フリです」|第1話を無料公開

バカリズム インタビュー

第1話「打ち合わせ」からの進まなさが見どころ

──ここからはバカリズムさんお一人に話をお伺いしていきます。この記事の公開時には第1話の無料視聴がスタートしていますので、より第1話の見どころを詳しく教えてください。

第1話は「打ち合わせ」です。「そこからかよ!」って(笑)。画面に「打ち合わせ」って出るのが個人的にすごく面白くて。そこから第2回が「買い出し」。話がなかなか進まないんですよね。もちろん本当に完全犯罪をする場合に必要なことなんでしょうけど、たぶん普通のドラマだと1話を全部使って打ち合わせはしないじゃないですか。この進まなさが見どころじゃないでしょうか。1個1個ちゃんとやっていく。「そこに1話割くのかよ」ってことの連続で、そこが面白がれる部分だし、だからこそ生まれるものもある。第1話「打ち合わせ」って出たときに「これは長い道のりだな!」っていう感じの「殺意の道程」なので。あくまでもこの道のりを見せていくドラマ。ちゃんとゴールには向かっているんですけど、この道のりを楽しんでいただければと思います。

「殺意の道程」

──打ち合わせの場所がファミレスになるのも面白いなと思います。

普通だったら家とかでやったほうがいいんだけど、ああいうときってそんな話を自分の家でしたくないというのが誰しも当たり前の感情としてあって。お互いになすりつけ合うというか。結局、折衷案でファミレス。どこかで2人とも、ちょっと“抜けてる”というか。人殺しの素人が計画を立てようとしても、何から始めればいいのかすらわからない。そんな2人だからこその打ち合わせだと思います。

──殺害を計画している2人ですが、いとこ同士だからなのか、ほのぼのとしたやりとりにも感じられます。

肉親だから、普通の友達や同僚とは違う空気感があると思うし、亡くなったのは一馬にとっての父親だけど、満にとってのおじで血がつながっている。普通の友達よりも説明不要な部分があるので、この物語を進めていく上ではいい関係性だと思います。

──一馬の心の声が出ているナレーションもすごく楽しいポイントだなと感じました。ナレーション部分への思い入れはあるでしょうか?

井浦さんのシリアスな口調で、どうでもいいことを心の声としてつぶやいたら面白いよねと。本当に重々しい、普通のサスペンスドラマとかで衝撃の事実が発覚したときのようなトーンと、つぶやくことの内容にギャップがあって。音楽も入ってくると、よりサスペンスっぽい雰囲気になると思います。撮り方もサスペンスっぽいですし。もともと住田さんとその空気感が面白くなりそうだよねってところから出発しているので。

バカリズム

──たしかに井浦さんは事前のコメントで「テストで2人の芝居を見た住田監督から『もっとシリアスに芝居をやってみましょう』と言われた」とおっしゃっていました。

僕が演じている満のキャラクターはちょっと軽めの設定にしていたんですよ。一馬と多少温度差があったほうが面白いと思って。もしかすると僕の軽めなところに井浦さんが若干引っ張られた部分があって、監督のほうから「一馬はずっとシリアスでいったほうがよりバカバカしさが際立つ」という演出があったのかもしれないです。終始シリアスな雰囲気でやってらっしゃいました。

──ちなみに「吾妻満」「窪田一馬」という2人の役名に何か由来はありますか?

いつも自分が脚本を書くときに困るのが名前なんですよ。正直、なんでもよかったんです。いとこ同士だから殺害計画の話をしているのに「ミッちゃん」「カズちゃん」って呼び合っていて、「ちゃん付け」って今ひとつ締まらない。その感じがいいなと思って。でもこれが「ミッちゃん」と「ヨッちゃん」だったら紛らわしいので、響きは違うけど「ちゃん付け」に、というくらいです。条件としては。あとは、なんとなく井浦さんは一馬っぽいなとか。満という名前も年下っぽい感じがします。

お笑い番組くらい間口の広い作品です

──ここまでバカリズムさんは主に脚本についてお伺いしてきましたが、俳優としてのご自身についてはどうお考えになっているでしょうか?

僕はこれといった特徴もクセもなく、だからといってまったくできなくもなく、ゲームのアバターを作るときに最初に出てくる“プレーン”というか(笑)。僕自身、演技は手段としか考えていないんです。コントをやる場合もそうなんですが、やりたいことがいかにスムーズに伝わるか、を考えていて。「役者としてこう見えてやろう」「今後こういう仕事を増やしてやろう」という欲がまったくない。無欲です。実際、役者としてオファーがすごく来るわけでもないし、ほかの芸人さんみたいにそこを取り上げられるわけでもない。だから「そんなにうまいって思われてないのかな?」って(笑)。「そんなにヘタでもないんだけどな」という気持ちです。

──お笑いナタリーとしての素朴な疑問なのですが、バカリズムさんが脚本を手がけるドラマなどの作品について、ほかの芸人さんと話をされることはありますか?

それがあんまりないんですよ。書いているという情報自体は耳に入るでしょうから「大変だねえ」とか言ってくれたり、ごくたまに「あれ観たよ」と言ってくれる人はいるんですけど。でも芸人さんにはすごく観てほしいんですよ。バラエティをやっている人には一番観てほしい。ドラマに関してもお笑いをやっていて、コントのつもりでもあるので。自分のライブを観てもらうのと同じように観てもらえたらうれしいです。ただ、あんまり観てくださいって言うのも、自分が逆の立場だったら嫌ですし。みんな自分のことで精一杯ですから。

──バラエティをやっている人に観てほしいということですが、一般的にはどのあたりの視聴者層をターゲットとして想定されているのでしょうか?

通常のサスペンスドラマよりも間口は広いと思うんです。言ってもお笑いですから。もともとサスペンスに詳しくない僕が書いているから、誰でも観られると思います。誰でもそんなに構えて観なくてもいいと思います。たぶんお笑い番組くらい間口の広い作品だと思います。

──「殺意の道程」というタイトルが一見すると重々しいですが……。

「殺意の道程」

それはあくまでもフリですからね。重ければ重いほど落としやすい。笑いが生み出しやすい。入り口は相当重いので、だからこそのちょっとした緩和がより楽しく感じると思います。とにかくくだらないと思います。

──これまで優れた脚本家に贈られる「向田邦子賞」などを受賞してきたバカリズムさんですが、この脚本についてはどんな部分を評価してほしいでしょうか?

「よくこの題材で7話分書いたな」と(笑)。僕が一番気に入っているのはドラマのタイトルが画面に出たあとの、その話ごとのタイトルが出る瞬間なんですよ。「打ち合わせ」とか「買い出し」とかがすごくバカバカしくて。それが一番やりたかったことなんですね。あとは、それを成立させなきゃいけない。どうでもいいちょっとした題材で広げる脚本力は評価されたいです(笑)。「今回これで1話行くの?」みたいなことの連続だし、ドラマの着地点、決着の付け方に関しては評価していただけたらなと思います。サスペンスドラマとしては、あんまりない終わり方をするので。僕の性格が出ています。7話までちゃんと観てほしいです。

第1話を無料公開

第1話が公式サイトおよびYouTubeで配信中。期間は2020年12月25日(金)正午まで。