WOWOWオリジナルドラマ「殺意の道程」|バカリズム脚本、井浦新とW主演のサスペンスコメディ「重々しい雰囲気は全部フリです」|第1話を無料公開

井浦さんはすごくはしゃいでくれた

──お二人はドラマで初共演とのことですが、それまで別の現場などでお会いしたことは?

バカリズム 僕の音楽番組に来てくださったゲストの方のお友達として、VTRでコメントしていただいた。バラエティでお会いしたこともあります。

井浦新

井浦 あと、4年くらい前にとあるテレビ局で1回だけお会いしたことがありました。お互いに「はじめまして」も言えてないときですね。番組収録の合間だったので、バカリズムさんは戦隊モノのような服を着ていて、僕はカチッとしたものを着ていて。そのときバカリズムさんはずっと考えごとをされていたようで、僕は「バカリズムさんだ」と思いながら、その時間を過ごしたことがありました。

──実際に初共演されて、お互いにどんな発見がありましたか?

バカリズム もっと寡黙な方かなと思っていました。VTRでコメントをいただいたときも、“俳優スイッチ”が入っていたのか、カッコいいんですよ。言葉数は少ないけど芯を食ったことをおっしゃっていた。会う前は緊張していたんですけど、同世代ということもあって話題も多いし、すごく話してくださった。印象としては「すごくしゃべる人だな」と。それが早めにわかったので現場もすごく楽しかったです。空き時間もずっとしゃべってました。

──井浦さんと会ってから、そのイメージで脚本を変えた部分は?

バカリズム セリフ自体は初稿の段階で井浦さんのイメージで当て書きしていて、撮影に入るときは完成していたので、あとから変えるというより、もともと井浦さんのイメージに沿って書き始めた感じです。もしかしたら、もう一回書いてくださいと言われたら、「井浦さんってこういう人だからこういうこともやってくれるんじゃないか。こういうのをやったら面白いんじゃないか」と思って、また違うものになるかもしれないです。会う前と会ったあとのイメージが変わって新しい情報が増えたので。「思ってたよりも普段はシリアスじゃないな」って(笑)。

──今、井浦さんに「こんなことさせてみたかったな」と思うことはありますか?

バカリズム サスペンスの設定じゃなくて、もっとふざけたことでもやってくれそう。カラオケのシーンとかでも、すごくはしゃいでくれたんですよ。

井浦 はしゃいでました。

バカリズム 台本を書いている段階ではそんなつもりはなかったんですけど。すごく踊ったりして「意外と明るい人なんだな」ってビックリして。そのシーンが実際にどれくらい使われているかはまだわからないんですけど。

井浦 現場で感じている「今すごく楽しいな」っていうのは要所要所で出ちゃってるんですよ。芝居を超えちゃうところが多々ありました。

──カラオケで歌ったりはされたんですか?

バカリズム ゆずき役の佐久間由衣さんが歌っている隣で手拍子して盛り上げている感じです。盛り上げるという範疇を超えて、自分が楽しんじゃってるところまで行ってて新鮮で面白かったです。そこが井浦さんのイメージになかった部分です。

「殺意の道程」

──ちなみに、このは(堀田真由)とゆずきはキャバクラ嬢の役です。バカリズムさんにあまりその印象がないのですが、ご自身がキャバクラに行かれたりするでしょうか?

バカリズム もうけっこう前ですし回数も行ってないですけど、行ったことはありますよ。なんなら女の子がいるから好きです(笑)。実際のキャバクラで撮影があったんですよ。そこにいるのは役柄になった女優さんやエキストラの方たちで、皆さん演技でやってるんですけど、それだけでも楽しかったです。普段なかなか行けないところだったので。

いとこ同士という設定がちょうどいい

──満と一馬の関係性がいとこ同士という設定なのは、どんな理由からでしょうか?

バカリズム まず、父を亡くして“かたき”となった室岡義之という男に復讐をしようと思ってる一馬に協力するとしたら、どれくらいの距離感の人間がいいんだろうと。「どれくらい信用できるのか」とか「赤の他人だと、そういう危ない話に協力しようとならないんじゃないか」とか。同じくらいの憎しみを一馬と共有できて、同じくらいの高いモチベーションで最後まで殺害計画を進められるとなると、いとこくらいがいいかなと。仮に僕が一馬の立場に立ったとして、誰か血の繋がりのない人間から「お父さん亡くなって許せないね」って言われても、どこかひねくれているので「俺ほどのダメージは受けてないよな」「君は他人だし」って思うんじゃないかなと思うんですよ。それで同じくらいの気持ちを持てて、でも兄弟も違う、となると、いとこがちょうどいい。さらにいとこの満のほうから殺害計画を持ちかける。この物語を続けていく上で、それくらいがちょうどよかったかなと思います。

──井浦さんはバカリズムさんといとこ同士を演じてみて、いかがだったでしょうか?

「殺意の道程」

井浦 いとこ同士だからこそ、切ないものが伝わってくるシーンもあるんです。僕はその関係性が心地よかったです。年に1回くらいしか会わなかったいとこ同士が、この機会にほぼ毎日くらいの勢いで会うようになっていく。そんな親戚との関係って、いいなって思います。たとえそれが父が殺されたというタイミングだったとしても、2人がしょっちゅう会いながらも復讐を企てていくのって、僕は物語として「ここはちょっとよくわからないな」ってことは一切なかったです。「1人じゃ無理だと思っていたところを、いとこのミッちゃんが声かけてくれたら動くなあ」って。ちゃんとキャラクター設定も振り分けてくれてるからこそ、一馬がミッちゃんに頼っているところもある。そういうバランスもしっかり見える脚本だったので、僕は演じていてものすごくやりやすかったです。

バカリズム 親友だったとしたら、どこかで他人事だというのが2人の溝になると思うんです。でも血がつながっているということは、どうしようもできない。どれだけ1年に1回しか会ってなくても、父親が死んだというのは他人事ではない部分が出てくるので、そこは少ない説明でも計画にすぐ乗っかれる。親友だったらまずどれだけ親友か、どれだけ満が裏切らないで信頼できる男なのかを描かなきゃいけない。それが大変なので、信用させるためにはいとこが一番手っ取り早いです。

井浦 満にも、一馬のお父さんとの思い出がちゃんとあるんです。そこが一瞬でもセリフの中であるから、「この2人は止められないんだな」「それぞれの復讐があるんだな」というのは感じやすかったです。