ナタリー PowerPush - 映画「オー!ファーザー」

佐野史郎×河原雅彦×宮川大輔×村上淳 座談会 4人が語る岡田将生と父親の愛

現場ではリラックスできました (宮川)

──宮川さんはこのメンバーの中でお1人だけ芸人さんですが、この3人の俳優さんたちとの共演はいかがでしたか?

河原 ベテランの佐野さんを前にしてこう言っちゃなんですけど、一番俳優らしかったですね、アプローチとか現場での過ごし方とか。

宮川大輔

宮川 そんなことないですよ(笑)。

佐野 演技プランがあったりね。ノート持って来たりして。

宮川 ちょっと! そんなもんないですよ!

河原 “勲ノート”つけてました。

宮川 ないですよ! 勲ノートって何!?

佐野 6冊くらい。

宮川 ギャハハハ! やっぱり、みなさん錚々たるメンバーじゃないですか。そりゃもう緊張でしたから。ただ河原さんと家が近くて、車で一緒に移動させていただいたというのが大きかったです。おかげで現場ではリラックスできました。僕は河原さんの舞台を観させていただいたこともあったりして、すごい方やなと思ってたんですけど、車で移動しながら普通にしゃべっていただいて、「ああこういう方なんだな」と安心して、すーっと現場に馴染めました。

河原 移動中、いーっぱい役作りについて聞かれて。

宮川 聞いたことないですよ?

河原 「自分は今日こういうプランでいきたいんですけど」って。真顔で。

宮川 違います違います!

村上淳

村上 相手のセリフも変えたいんだよね。

佐野 「今回の監督は劇場公開第1作目だから、ちょっと信用できない」みたいな。

村上 ああ、そんな感じでしたね。

宮川 まったく言うてないですよ?

佐野 なので河原さんに言うと。

村上 後半「河原くん」って呼んでましたね。

宮川 ちょっとええ加減にしてください(笑)!

岡田くんは年の差を感じずに接することができる素敵な人 (河原)

──すでにチームワークのよさが出てますが(笑)。岡田(将生)さんの印象はいかがですか?

佐野 僕はここのところよく岡田くんと共演させていただいてたんですが、プレーンで純粋な、自然体の人。台本に対しても、「こうしてやろう、ああしてやろう」ということじゃなくて、非常にピュアな真っ白な状態で現場にいらっしゃるなあと思いました。

村上 以前ワンシーンですけど、映画の現場で演技を見たことがあって、完成した映画もスクリーンで観たんですけど、主演のできる子だと思いました。珍しい、貴重な方だなあという目で見ていて。生意気なことを言わせてもらいますけど、今回の仕事は脚本を読まずに引き受けたんですが、岡田将生が主演だから決めたんです。ほんとなら脚本を見て、納得のいく本だったら引き受けさせていただきますというのが本筋なんでしょうけど、今回岡田くんとがっつり共演できるというので、嬉しかったです。

河原 僕は今回が初めてです。シュッとしてるよね。

岡田将生

宮川 シュッとしてますよね。

河原 カッコいいなあ。

佐野 イケメンだよねー。

村上 全編通して、「オー!ファーザー」の主演俳優であるという範囲から揺るがず、かつ柔軟に、しなやかに、きれいな顔立ちもそうですけど、居方も美しい人だなあと思いましたね。

河原 でもなんかね、お酒を飲めばちゃんとヘロヘロに酔っぱらう感じにもなるし。あんまり年の差を感じずに接することができる素敵な人だなと。あの人が主役だったからこっちも楽にいられたという部分があります。しっかりしてかわいらしい人ですね。

宮川 僕も初めてで、カッコええ人って思ってたんですけど、しゃべったりお酒飲んだりすると、ほんまよう飲むし男らしいというか、その辺がなんかカッコつけてないねんなって。

佐野 岡田くんと共演したことある俳優仲間の間では“残念な二枚目”岡田将生(笑)。

宮川 へえー!

佐野 見た目は超イケメン。でも中身は二枚目じゃないどころか残念(笑)。そんなかわいいところが愛されてるんじゃないですか。俺も何十年もやってますけど、こんなに現場で愛される俳優っていうのは、ほんとに指折り。先輩たちも含めてちょっといないですよ。どんなイケメンでも、主役張ってる人はみんなもうちょっと警戒したり、緊張したり、不安そうにするけど、女優さんから、下の子から、大先輩から考えてみても、ここまでの人はほんとにいなかったかもしれない。

村上 岡田くんの役って、どの父親に対しても接し方は一緒なんですけど、4者4様の父親のキャラクターがあるので、自然と岡田くんのいろんな顔が見られるんですよね。素晴らしい俳優と共演できたなと。勉強になりました。

どんな問題でも平和的解決がある (佐野)

──監督も岡田さん同様お若く、長編映画初チャレンジでしたが、撮影はいかがでしたか?

佐野 キャリアなんか関係ないですからね。そのときに何ができるか、どういうふうに見てるかってだけで。そうはいっても僕はアイデアというか、こうしたいっていうのは随分積極的に話しました。「じゃあここはこうしましょうよ」って。……うるさかったね、俺も。

左から佐野史郎、河原雅彦。

宮川 いやいやいや(笑)。

河原 それは本当に反省していただきたい。

宮川 えー!? いやうるさくなかったでしょ!

佐野 車のシーンとか、「これワンカットでいいんじゃない?」って言いました。

河原 そんなこと言ったんですか?

佐野 はい、言いました。そういうことって、意外と初めての監督には威圧的に聞こえてたりするのかなあ。気を付けなきゃ。

河原宮川 (爆笑)

河原 でも佐野さんとムラジュンさんがいろいろ監督さんと作品の話とか撮り方の話をしてるのを見てて。僕と大輔さんはもう、ただやるだけと言うか……ただただ生きました(笑)。

──それぞれご自身の意見として、この4人の父親がいるという状況をどう思いますか?

宮川 お父さんたちそれぞれ、ほかの3人のことも好きじゃないと一緒にいられないと思うんですよね。普通は1人の父親というところに対して、この4人で集まって1人の親父になる。由紀夫のことうらやましいなと思いますね。

佐野 映画自体はサスペンスコメディなんですけど、1人のお母さんに4人の父親がいるっていうのは異常な関係に違いないし、どんなに美しくて素晴らしいお母さんでも4股かけてた女っていうのは忘れちゃいけなくて。それを糾弾して、「俺の子だ!」って憎しみ合ったり修羅場になっていくのが普通だと思うんですけど、この映画の場合、どんな問題でも平和的解決がある。つまり、「どうしたらいいか」ってことの答えが、「息子を幸せに育てるために共存していこうよ」っていうところにあって、「お互い思いやって生きていきましょう」っていう平和的メッセージがあると思います。ただ、とんでもない女ですけどね(笑)。

河原 現実味はないですよね、ファンタジーだと思いますよ。とてもいい意味でご都合主義満載のエンターテインメント。1人くらい役立たずがいてもいいじゃないですか。でもどの父親もみんな役に立つのがすごい。普通オロオロするだけですよ。

村上 父親たちは息子だけじゃなくて、その親である母親を好きというのが前提にあるわけで、ライバルの3人がいるわけだけど、自分がそこまで惚れ込んでるから、周りもそこまで惚れ込む気持ちもわかるという。そこでどう均衡をとっていくかっていうバランスの問題で。息子を溺愛してましたけど、同じくらい母親を愛してるという気持ちで、そのバランスを保ったと。人類愛ほど大きくはないでしょうけど、自分の目が届く範囲、自分が歩いて行ける範囲くらいの愛がそこにあるんでしょうね。

左から宮川大輔、佐野史郎、村上淳、河原雅彦。
映画「オー!ファーザー」
監督・脚本:藤井道人
原作:伊坂幸太郎
キャスト:岡田将生 / 忽那汐里 / 佐野史郎 / 河原雅彦 / 宮川大輔 / 村上淳 / 柄本明
佐野史郎(サノシロウ)

1955年3月4日生まれ、島根県出身。

河原雅彦(カワハラマサヒコ)

1969年7月7日生まれ、福井県出身。

宮川大輔(ミヤガワダイスケ)

1972年9月16日生まれ、京都府出身。

村上淳(ムラカミジュン)

1973年7月23日生まれ、大阪府出身。