かまいたち、和牛、天竺鼠 NSC大阪26期座談会|悔しさも喜びも共にした15年

面白い人はちゃんとマナーも守ってる

──NSCに入って自分自身が変わったことは?

瀬下 順番を守らないといけないとか、本当にそういうことを知らなかったんですよ。行列があっても睨んで入ればいいとマジで思っていて。

一同 あははははは!(笑)

瀬下 先に来た人からホワイトボードにコンビ名を書いて、その順番でネタ見せするっていう、基本的なことを学びました。

水田 順番抜かしとか、面白い人はしないからな(笑)。面白い人はちゃんとマナーも守ってる。

瀬下 憧れている面白い人たちがちゃんとやっているんだから自分も、というふうに行動を正していきました。なのでNSCは更生施設やと思ってます(笑)。

──濱家さんは「俺が一番面白い」というような自信を持って入学したということでしたが、何か変わりましたか?

かまいたち濱家(左)

濱家 いや、僕は4年くらい前までずっとイタかったんで……。

──けっこう最近まで(笑)。

濱家 でも、確かに「こんなおもろい奴がいるんや」っていうのはNSCでいろんな人に出会わなければわからなかったですね。学生の頃はフレーズとかニュアンスのお笑いを知らなくて。NSCに入って天竺とか当時ピンだったトキのネタを見て、「こういうお笑いもあるんやな」って発見がありました。

──笑いの幅が広がった。

濱家 はい。同期がいたおかげで勉強になったというのはあると思います。

──NSCを卒業して最初の仕事がなんだったか覚えていますか?

水田 バスツアーかな?

川西 あー、まだインディーズのときの。

水田 インディーズの芸人に振られるバスツアーの仕事があって。逆に劇場メンバーには回ってこないから、みんなはやってないと思う。

川西 観光バスがヒルトン大阪の前からお客さんを乗せて、新世界のほうまでずーっと回る。30分ぐらいですかね、その車内に法被着た芸人が乗り込んで盛り上げる「まいど1号」っていうバスがあったんですよ。でもうれしかったよな、ちゃんとお笑いの仕事でけっこうええお金もらえて。

和牛

山内 千日前のでっかい広告ビジョンがあって、そこに選ばれた芸人のネタが流れるんですよ。街中でガヤガヤしてるところだからまあ誰も見てないんですけど、それに出るって決まったときは「売れた!」と思いましたね。

瀬下 あはははは(笑)。いや、めちゃくちゃうれしかったよな。

濱家 うれしかった。当時の彼女と、ビジョンで自分たちが映るまで立って待ってたもん。

川西 かわいいなー(笑)。

──それがみなさんの「芸人になれた」と感じた瞬間。

山内 あとは、プレステージっていう劇場メンバー入りを懸けたお客さんを入れてのオーディションがあって、それに受かったときにやっと芸人のスタートラインに立てた気がしました。

水田 一度に60組、70組が受けて、1組か2組しか受からん日もあるんです。

濱家 「今回合格者なしです」っていう場合もあったもんな。

瀬下 プレステージが一番手が届かん感じがした。どうやったら受かるのか、途方に暮れてた。

水田 めっちゃ高い壁で受かる気せんかったよな。受かったら「あいつ受かったらしいで」って噂になるくらい。

山内 プレステージに受かったときはもう……「売れた!」と思った。

川西 さっきからすぐ売れたと思うやん(笑)。

──そう思ってしまうくらい難しかった、と。

川原 僕ら1回も受かったことないですもん。

水田 え、そうなん? じゃあどうやって劇場メンバー入ったん?

川原 笑い飯さん、千鳥さんのライブに呼んでもらっていて、「オーディション1回も受かったことないです」って話をしたら、その当時の支配人に「おかしいやろ」「審査員誰がしてんねん」みたいなことを言ってくれて。でも実際、お客さんにはウケてなかったので仕方なかったんですよ。でっかい冬瓜を持って漫才して、お客さんをポカンとさせていたし。そんな感じだったんですけど、1カ月だけお客さんを入れずに支配人だけの審査でオーディションをするっていう謎の期間があって。それで合格になりました。

濱家 裏口入学みたいやな(笑)。

川原 だから、通常ルールでは1回も受かってない。

水田 そうなんや。

かまいたち、和牛、天竺鼠。

藤崎マーケットの優勝に瀬下、水田、河井で泣いた

──NSCの特徴の1つとして、切磋琢磨できる同期がたくさんいることが挙げられます。特にこの大阪26期はみなさん早くからご活躍で、たくさんの刺激を受けてきたと思うのですが、改めて同期の存在とはどういうものでしょうか。

左から、かまいたち濱家、天竺鼠・川原。

川原 まあでも、あれやんな! いい仲間、いいライバルっていう感じですね!!

濱家 なんやねん、急に(笑)。

水田 この時間になったらこうするって決めてたん?

瀬下 (笑)。でも本当に、何にも代えがたい存在だと思います。同期の活躍って特別うれしいんですよ。藤崎マーケットが賞レースで優勝したとき、めちゃくちゃうれしくて先に水田と(アインシュタイン)河井と3人でお祝いしていて、トキが合流したあとはもう4人でずっと泣きながら飲んでました。カラオケ行って。

水田 行ったなあ(笑)。僕ら和牛からしたら、天竺とかまいたちと藤崎が先に劇場メンバー入りしたり、テレビに出だしたりっていうのがあったから、あかん腐り方せずにがんばれた。1組だけだったら「あいつらは別格や」って逃げ道作っていたかもしれないけど、3組6人が結果出してるから言い訳ができない。追いつきたいっていう気持ちで続けられたと思います。

──また、みなさんがデビューしてからずっと挑戦してきた「M-1グランプリ」についても聞かせてください。この期は昨年の「M-1グランプリ」がラストイヤーでした。まだ出場権のある和牛のお二人もこれが最後だと決めて臨んだ大会だったわけですが、大会を終えてどんな心境でしょうか。

濱家 いやもう、しんどかったなあ……っていう。

山内 プレステージのときからずっとバトル形式でやってきて、やっと戦うネタから卒業できるなっていう気持ちが大きかったですね。

濱家 結成15年以上の賞レースとか絶対できてほしくないよな(笑)。

──かまいたちさんは2019年大会は出場されないおつもりだったんですよね。

濱家 はい。

──エントリー受付最終日に出場を決めたということですが、やはり最後に挑戦したかった?

濱家 そうですね。やっぱり一番獲りたい賞レースだったので、山内に「出たい」と言いました。めちゃくちゃ嫌がられましたけど、そりゃそうやなとも思うんです。本当にしんどくて、気軽に出られるものじゃないので。まあでも、出られてよかったですね。

かまいたち

──お二組も「やり切った」というお気持ちですか?

水田 1年前から「次で最後にする」って2人で決めていたので、今回はもうリサイタルみたいな感じでやろうと言っていて。気持ちよくやれましたね。決勝にも出られたし、「面白いネタいっぱいやったな、もういいな」って思えました。

瀬下 僕は、敗者復活戦で自分たちの敗退が確定した時点で切り替えて、5位までに残っていた同期の和牛かアインシュタイン(河井が26期生)に行ってほしいという気持ちでした。ほんまはかまいたち、和牛とか昔からずっと戦ってきたメンバーで、「M-1」決勝っていう最高の場所でまた戦いたかったですけど。で、和牛の名前が呼ばれて、決勝のスタジオではかまいたちが待っているわけじゃないですか。きっといい戦いするんやろうなって、「行けー!」って送り出しました。

川原 僕はまだ諦めてなかったですね。

濱家 え、「敗者復活は和牛!」ってなったときまだ諦めてなかったん?(笑)

山内 どうなると思ってた?

川原 決勝2本目が終わって最後のジャッジのときに、オール巨人師匠がゴールドの「天竺鼠」を出してくれたら優勝するんじゃないかって思ってた。だから最後までドキドキしてましたよ。で、まだ諦めてませんしね。

川西 今も?(笑)

かまいたち、和牛、天竺鼠。

15年間の一番の思い出は?

──最後に、せっかくこのメンバーにお集まりいただいたので同期とのもっとも印象深いエピソードを教えてください。

濱家 NSC時代、水田と八十島とけっこうな頻度な遊んでいたんですよ。朝方、髙島屋の前で八十島が水田に「信二、お前それずっと何やってんの?」って聞いたら、上唇を鼻につけるっていうのを……。

水田 これ?(上唇を鼻につける)

濱家 そう、それそれ。ずっとやってて。

水田 うふふふふ(笑)。

濱家 そのとき水田が「ヒヤッとするのが気持ちええねん」って言っていたのが、この15年で一番の思い出です。

左から和牛・水田、川西。

一同 あははははは(笑)。

水田 それまで誰にも指摘されたことがなかったから、怒られるんかな?ってドキドキした(笑)。

瀬下 それが15年で一番?(笑)

水田 まあでも、俺もそれかなあ。

──(笑)。ほかのみなさんはどうでしょうか?

瀬下 子供が生まれて嫁が実家に帰っているとき、水田が「最近ちゃんと飯食ってんの?」って連絡くれて、「コンビニ弁当しか食べてない」って言ったら「じゃあ俺、作りに行くわ」ってぶり大根とエビチリを作ってくれました。今まで食べたことないくらいめちゃくちゃうまいごはんで。優しいし、めっちゃ料理うまいんやなって思いましたね。

山内 僕も水田の話で、和牛と一緒の営業帰りの新幹線で水田の斜め横の席だったんですよ。水田が寝ちゃってて、降りる駅に着きそうになってもまったく起きる気配なかったから、「ここやで」って起こしてあげた。そしたらパッと目を開けて、「ありがとう」とかもなく淡々と自分の荷物をまとめてホームに消えていって……。

一同 あははははは!(笑)

川西 なんか言わんと!

濱家 「起きてましたよ」の顔や。

水田 恥ずかしかったんだと思います(笑)。

山内 これが15年で一番。

──たわいない瞬間のことのほうが印象深いものなのでしょうか(笑)。川西さんはいかがですか?

川西 僕はバイク川崎バイクと同じクラスだったんですが、NSCに入学して一発目の授業で、バイクが講師の先生に「おい、君! なんやサングラスして」って注意されて「でも度入ってるんです」ってしょうもない言い訳してたことですね。そんな奴がまさか今の相方を紹介してくれるキーマンになるとは思ってもなかった(笑)。

──では最後に川原さんお願いします。

川原 僕はやっぱり「今」、ですかね。

濱家 なんやねんそれ。

川原 一番印象強かったのは、濱家がさっきしゃべった水田のエピソードで、上唇に鼻をつけるっていう話です。

──その話を今、濱家さんがしたということが印象的?

川原 はい。それが15年で一番印象深いですね。

濱家 なんでやねん!(笑)

かまいたち、和牛、天竺鼠。

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2020年3月12日更新