プラス・マイナスは一度解散していた
──当時のNSCではどんな授業があったのでしょうか。
後藤 僕らのときは教えてくれるって感じではなくて、基本的にネタ見せしてダメ出しされて、の繰り返しでしたね。あとは発声練習とか。
福徳 発声はデカいよな。ほんまに必要な授業。あと10月頃に急に始まった“姿勢の授業”って覚えてる? 若い頃は尖ってるから「姿勢なんかいらんわ!」って思ってたけど、今思うとめっちゃ大事。
──ネタ見せの授業では毎回新ネタを求められるんですか?
福徳 これもまた自分次第のところで。ずっと同じネタやる奴もおるんですよ。
兼光 先生が3人くらいいるので、それぞれ違うことを言ってくれるんじゃないかっていうのもあるとは思うんですけど。
福徳 でもやっぱり(ネタを)変えてくるな、優等生たちは。
後藤 夏頃まで1回もネタ見せない奴とかいたよな。
福徳 チョコボール高橋な! 伝説や。
後藤 チョコボール高橋っていうピンの奴がいて、ずっと授業は来ているのに1回もネタを見せていなかったんです。で、夏のある日、授業が始まる前にそいつがいきなり腕立て伏せを始めて。「今日のあいつ、雰囲気ちゃうぞ」ってクラスがざわついていて、(ネタ見せ希望者が記入する)ホワイトボードを見たら「チョコボール高橋」の名前が。「ついにネタやるんや!」ってみんながめっちゃワクワクしてる中、そのネタの第一声「う~ん、キューピーマヨネーズ」だったんです。
岩橋 あはははは!(笑)
後藤 むちゃくちゃ下ネタで、むちゃくちゃおもんないんですけど、それがもう面白くて。「なんで夏までこれ置いてたん!?」みたいな(笑)。腕立てしてたのも謎やったなあ。
──(笑)。ほかにもNSC時代の思い出を教えてください。
福徳 ネタ見せの授業が終わって、帰りになんばウォークっていう地下商店街を歩いていたらプラマイがめちゃくちゃネタ合わせしてた。それ見たときに、「あ、やばい! ここまでせなアカン」って思いました。
後藤 噴水前の、めちゃくちゃ人がいっぱいおるところでな。「どこでやってんねん!」と同時に焦りを感じました(笑)。
岩橋 当時は高島屋のルイ・ヴィトンの隙間みたいなところでやってましたね。
福徳 その頃、そういう感覚がバカになってたよな。ブリーフ一丁でビデオ撮りながら、図書館の前でネタ合わせしてたし。恥ずかしいって感覚なかったわ。
岩橋 僕ら、NSC入ったあとに1回解散してるんです。僕の遅刻が原因で。違うコンビを組んで、お互い別の相方とのネタを同じクラスで見せるんですけど、それがまあおもんない!
福徳 え、それ知らんわ! どっちもおもんなかったん?
岩橋 どっちも! それぞれの味みたいなものを一応は取り入れていて、ある程度はできているんですけど。自分もやっていて面白くないし、兼光も煮詰まってるし、「もっかいやろか」って言ったら、こいつも困っていたんでしょうね。もう即「うん」って。
兼光 僕は就職を蹴って入っているので、切羽詰まってたんだと思います(笑)。
「M-1」の舞台裏にあった同期の絆
──NSCに入ってよかったと思うことは?
後藤 ネタを作って見せるという習慣がつきました。NSCに入っていなかったらこのペースでは作れていないと思います。
岩橋 自分のお笑い力を試せる。同期がたくさんいるので「俺らは今この辺におるな」って自分のポジションがはっきりするんです。フリーのままオーディション受け続けていたらわからなかったんじゃないかな。
福徳 あとはやっぱり同期がいるってことですよね。
兼光 同期でも、NSCに行ってない芸人とはちょっと違うもんな。ほんまに一緒にやってきた仲間感というか。
福徳 絆がな! NSCのときから組んでる同期って、俺らとクロスバー直撃だけやねん。
岩橋 そうか。3組だけか。
福徳 だからクロスバー直撃にもすごい熱い気持ちがあります。
兼光 え、あいつらも在学中からクロスバー直撃やったっけ? 前野は最初ピンやったよな。
福徳 あれ? ちゃうんか? 一方的に熱い気持ちだっただけ?
後藤 組んでたと思うで。ネタ見せのホワイトボード見て「何? このコンビ名」って思った気がする。
──同期の中でも、お二組のようにNSC入学前からずっと同じコンビというのは珍しい存在ですよね。
福徳 確かにそういうコンビは僕らだけなんで、プラマイには特別な思いがあります。今年の「M-1」の敗者復活戦でプラマイが上がってこなかったとき、ほんまに泣くの我慢してたんですよ。
岩橋 あはははは!(笑) そんなん言うてくれるのが泣けてくるわ。
福徳 裏で、必死にこらえてた。「アカン、泣いてまう」って。
岩橋 逆に「よっしゃ、プラマイの分までやったらあ!」ってなったやろ?
福徳 なった! そこでほんまにスイッチ入った。プラマイはNSC在学中、「M-1」3回戦まで行ったんですよ。同期で1組だけ。
後藤 紙で張り出されてたよな。
岩橋 あのときは調子乗ったなあ(笑)。NSC卒業したあと、ジャルジャルと銀シャリは背中が見えないくらい遠いところに行っちゃってずっと劣等感を持っていたんです。大阪の番組でMCを任されて、劇場を引っ張っていく存在になっていて。僕らはそういうメンバーに入れず、だけどNGKの出番だけは入ってる、みたいな謎のポジションやったんですよ。プレステージ(劇場メンバー入りを懸けたオーディションライブ)に落ちたその足でNGKの出番に行ったりとか(笑)。
福徳 それはもう売れてるやん!(笑)
岩橋 だからジャルジャルと銀シャリが最終決戦に残った2015年の「M-1」は複雑な気持ちで観ていました。めっちゃ悔しいけど応援したい気持ちも強くて、直前まで福徳と「俺のツッコミのパワー送ったる!」「わかった、お先に優勝してくるわ」みたいな、サブいLINEのやり取りもしていて。でもいざ始まって、結果発表になったら全力でトレンディエンジェルを応援している自分がいましたね。トレンディエンジェルの優勝が決まった瞬間、「よっしゃあー!」って雄叫び上げてました。
兼光 俺も(笑)。
後藤 「ほっとした」とかならまだわかるけど、「よっしゃー!」は行き過ぎちゃう?(笑)
福徳 その年はラストイヤーじゃなかったから。優勝しちゃったら一緒に出られなくなるのが寂しいってことやんな?
岩橋 そうそう! それもある。「もうちょっと一緒におってくれ!」って。
──複雑な気持ちですね。ではラストイヤーとなった「M-1グランプリ2018」は改めてどんな大会でしたか?
岩橋 やりきりました。決勝に行ってジャルジャルと一緒に終わりたいっていう希望は叶わなかったですけど、後悔はないです。今までで一番、決勝を近くに感じられたので。だいぶ周りには惑わされましたけどね。準決勝終わって「絶対行ったで!」って言われてダメで、蓋を開けてみれば次点でもなく4位で。敗者復活でもみんなに「行った」って言われたけど、結局ミキだったじゃないですか。誰や、「行く」って言うた奴!(笑)
──兼光さんはどうですか?
兼光 僕もまったく一緒です。やりきった感はすごくあります。もっと前から本気で取り組んでいれば違ったのかなとか、考えたらキリないですけど。
岩橋 でもジャルジャルのほうが悔しかったんじゃない? 最終決戦まで行って。
福徳 俺はダサいけど、優勝できなかった悔しさよりプラマイがそこにおらんかった悔しさのほうがデカいわ。
岩橋 ちょっともう……。
福徳 これマジやねん! それくらい悔しかったんです。
岩橋 泣かせ屋ですわ(笑)。
後藤 岩橋ってすぐ泣くんですよ(笑)。泣かすの簡単。「俺ら、ほんまにここまで切磋琢磨して残ってきたよな」みたいなニセの熱い言葉を投げかけたら泣いてましたよ。5、6年目くらいで。
岩橋 ニセで投げかけんなよ!
──熱い言葉に弱いんですね。
岩橋 でも「プラス・マイナスよかった」って人生で一番注目してもらえましたし、あれがベストやったと思っているので、前向きに次の目標を探していきたいです。
福徳 プラマイは今年絶対「上方(漫才大賞)」あるで。
後藤 もうそれあんま言わんほうがええって!(笑)
兼光 「誰や、上方漫才大賞獲れる言うた奴!」ってなるよ、また(笑)。
2019年2月19日更新