ロックバンド・My Hair is Badが11月7日に約1年ぶりの新作CD「hadaka e.p.」をリリースした。彼らは12月より、アリーナ会場を含めた大規模ツアー「ファンタスティックホームランツアー」に臨む注目のアーティストだ。

ボーカルの椎木知仁は、かねてよりウーマンラッシュアワー村本のファンを公言している。そこでナタリーはこのたび村本と椎木の対談をセッティング。2人に互いの印象を話してもらったほか、村本が自身の漫才への思いや海外での仕事、そして相方・中川パラダイスについて語った。 なお、音楽ナタリーにも2人の対談が掲載されている。そちらも併せてチェックしてほしい。

取材・文 / TAISHI IWAMI 撮影 / 西槇太一

村本に感じる覚悟

左から椎木知仁、村本大輔。

──椎木さんから村本さんに声をかけて初めて直接話された2017年11月以来、お二人はプライベートで交流があるとお聞きしました。そもそも椎木さんは村本さんのどういうところを好きになったんですか?

椎木知仁 今のスタイル、政治のことをネタにしたり独演会をしたり海外に行ったりするようになる前、”ゲスの村本”みたいなことをやってた時期から一貫して覚悟を感じるんです。捨て身じゃなくて、自分が信じるお笑いをやっていくうえでの覚悟。そこがカッコいいと思って、どんどん好きになっていきました。

──ということは、ウーマンラッシュアワーが出てきた頃から、お好きだったんですね。

椎木 島田紳助さんがテレビで紹介してたじゃないですか。そのときからですね。

村本大輔 まだ世の中に出たばかりの頃だ。

椎木 当時のMy Hair is Badは、ライブをやってもお客さんが入らなかったし、ライブハウスに持っていくのは、僕が村本さんに感じた覚悟だけでした。それ以外には何もいらないし、何もなかった。他のバンドのお客さんに、どれだけ僕らのことを知ってもらえるか。ヒールになってでも、じゃないですけど、そういうところで共感したのが大きかったですね。

椎木知仁

村本 そこからMy Hair is Badの存在感が増していったことについて、椎木くんに聞きたいことがあって。徐々に絡む人も増えてくるし、いろんな声も耳に入ってくる。その中で、椎木くん自身はどう変わってきたのか。もしくは変わらないままなのか。お笑いでいうと、視聴率とか視聴者の印象を考えて、ネタにめちゃくちゃ手を入れられるテレビ番組も実際にあるんだけど、音楽にもそういうことはあるのかなって。椎木くんは本質的にピュアだし潔癖なところもあると思うから、そこでどうやってブレずにいられるのか。

椎木 僕にはMy Hair is Badという居場所がある。それをそのままにしておくのはもったいないと思ってるんです。ただ同じことを続けるというより、進化のために変化したい。物事をずっと同じ距離感でとらえるんじゃなくて、別のところから見てみたり、そういうことは常にやっていきたいです。だから今回出す「hadaka e.p.」は意識的に、これまで見てきたものに対して、フォーカスを変えている部分もあります。

村本 漫才でもそうかも。昔作ったネタは確かに面白いけど、時が経つと鮮度は落ちるし、自分の中でも「それ前にやったしなあ」って思いながらやるのは、楽してる感じもしていて。

漫才はすべて実体験における怒りから

──バイトリーダーのネタも、最近話題になった政治を題材にした漫才も、言ってることは全然違うんですけど、変わらない純度を感じるんです。椎木さんのおっしゃった“覚悟”ということだと思います。

村本 実はずっと一貫してる部分があるんです。バイトリーダーのネタは、僕がバイトしてた頃の話を膨らませたもの。年下の大学生で僕より先に働いていた嫌な奴がいたんですよ。若い女の子のバイトの前で、わざと僕にできないことをやらせて「なにやってんすか~、村本さん」みたいに、よくダシに使われてました。そのストレスがどこで愚痴っても消化できないレベルにまできて。そこで相方にも協力してもらってネタにしたらめちゃくちゃウケて、紳助さんの目にも留まったんです。

──そういう流れがあったんですね。

村本大輔

村本 「THE MANZAI」で優勝したネタもそう。キングコングとテレビで一緒になったときに、嫌なこと言われてスベったんです。好きな女の子のタレントも目の前にいて、すごく恥ずかしかった。じゃあ、次に同じような状況になったらどう返そうかと考えて、「目先の笑いのために平気で同期をくさす最低な芸人を紹介します。キングコングです」ってフレーズを作りました。それがきっかけになって、いつかちゃんと漫才として披露するために作り込んだネタで優勝。去年、政治的なことを漫才にしたのも、沖縄に行って、米軍基地の問題について、現地の人から悔しい話をいっぱい聞いたことがきっかけです。そこからムカつきが連鎖していって、世界の話や国民の問題意識にまで発展していった漫才。すべて自分の実体験における怒りが元になっています。

──なるほど。腹を括って振り切ったパフォーマンス。そういうところでお二人の姿勢が合うんでしょうね。

椎木 僕が寄せにいってる可能性はありますけど(笑)。

旅行記みたいな話はしたくない

──村本さんは(取材日の)まさに今、海外から日本に戻られたばかりです。そもそもなぜ海外へ行かれているのでしょうか?

左から椎木知仁、村本大輔。

村本 芸人がコメンテーターをやったりするじゃないですか。それは別にいいんですけど、ものの見方に違和感を感じることもあって。コメンテーターって正論を語るでしょ? でも芸人は「それをそこから見るの?」っていう部分での進化が必要。なのに、各々がずっと同じ立ち位置からああだこうだ言ってるだけ。自分自身も「25歳のときと一緒やん」っていう悲しさがあったんです。それで、海外に出ていろんな物事を見て感じてこようと思いました。

──そんな心境があったんですね。

村本 だから、旅に出て、いろいろと回って帰ってきて、そこで得たことをどうやって外に出すか。単にいつどこに行ってどう思ったとか、旅行記みたいな話はしたくないんですよ。自分とは考え方も価値観も違う人たちのいる世界に触れて、今まで見ていたものが、新たにどういう角度から見られるようになっているのか。それをネタとかライブで発信していきたいです。

──常にアンテナを張って、ご自身の個性と向き合われているんですね。

村本 Twitterで甲本ヒロトの名言集みたいなアカウントがあって、そこにアップされたヒロトさんの発言にハッとしたんです。ヒロトさんが大好きなザ・クラッシュというバンドのジョー・ストラマーのどこを真似たか。そのファッションや音楽、いわゆるロジックではなく、誰の真似もしないことを真似した、みたいな話。そういう本質的な部分で、常に自分の襟を正して、言いたいことを言っていきたいと思ってます。