音楽ナタリー PowerPush - YOJI BIOMEHANIKA×小室哲哉
レジェンド同士の初対談
僕に国民栄誉賞を!
──YOJIさんは活動当初から海外での活躍が目立っていますよね。
YOJI 別に「海外に殴り込むぞ!」って気持ちで臨んでいたのではないですし、海外を拠点にしたこともない。どちらかと言うと、海外に行くのが嫌いだし、まったく興味がない。大阪で飲んだくれて、好きなときにスタジオに入って音楽作っているほうが楽しい(笑)。海外に行ってもね、空港着いて会場入って、ホテルで寝るだけの繰り返しですから(笑)。
小室 でも呼ばれるからには、何かきっかけがあったわけですよね?
YOJI きっかけは海外でのリリース。自分の音楽を自分で発信したくてイギリスでレーベルを立ち上げたら、ヨーロッパの人たちが興味を持ってくれて、DJたちに愛してもらいプレイされて。チャートに入って、「YOJIって誰やねん?」ってことになっていろんなパーティに呼ばれたという。ラッキーと言えばラッキーですね。
小室 ラッキーというより実力じゃないですか。
YOJI こんなこと言うと夢がなくなりますけど、しんどいですよ。一時期は2週間に1回はツアーしていたほどで……。それにしても、日本って音楽家のステイタスが低いですよね。僕だって過去に世界のDJチャートのランキングに何度もランクインしているんだから国民栄誉賞とかくれよーって感じ(笑)。海外だと、Tiesto(オランダ出身のDJ)は、アテネ五輪でパフォーマンスしていたりするのに、僕はまったく声が掛からない! このキャラがあかんのか? ちゃんとやっているのにな(笑)。
小室 25年もDJやり続けているのって、すごいと思いますけどね。
YOJI 日本を代表しようって気持ちはないんです。ただ自分との戦いだけで。
──小室さんも、プロデューサーとして25年以上活動を続けられています。
小室 はい、今日もスタジオから来ました。
YOJI 作りたい欲求が強いんですよね?
小室 そうですね。1週間何もしなかったら作りたくなるし。一度リスナーに認めてもらえたという安心感があるので、「こんな曲でいいのかな?」という不安な気持ちになることなく突き進めるところはあります。
──YOJIさんも、世界で多くのファンが待っていることがわかるからこそ、楽曲を発信し続けられるところはあるのでしょうか?
YOJI そういう感じでもなくてね。洋楽を聴いて育っていく中で「何くそ、俺のほうがカッコいいもの作れる」っていうところから制作をスタートさせて、いざそういう海外からも注目される立場になると、今では世界から売られたケンカを買わないわけにはいかないという状態になっていますね。途中で尻込みしてしまうと、今までやってきたことが台無しになってしまう気がして。そこがある種の原動力になっています。
小室 僕はいまだにキックの音1つだけでも海外の音にかなわないって思っています。
YOJI 「何でこんな音になるねん!」って思う音ありますからね。
小室 ありますね。よくリスナーから海外と日本の違いについて聞かれるんですけど。そのときは「例えばロンドンへ行ってドライヤーを付けてみたら大変なことになるでしょ」って電圧の違いを説明しています。
日本では音楽のトレンドが“点”でしかない
──コンスタントに活動し続けているお2人には、日本のダンスミュージックってどう映っているのでしょう?
YOJI 日本って海外と違って、音楽のトレンドが“点”でしかないんですよね。サウンドのタイプが変わっていくと同時にジェネレーションも変わっていく。だからいつまでも世代を超えたアンセムが育たないところがありますね。なので、同じ質問をされるといつも「毎回がリスタートしているみたい」と答えてしまいます。
小室 例えばバブルの象徴としてジュリアナが取り上げられたり、「この年はトランスがブームでした」みたいな感じで文化を振り返るだけのものになっていますよね。楽曲の中身の話はゼロですから。
YOJI ジュリアナ時代の楽曲でもカッコいいものはあったけど、そこは注目されていないですからね。
──ただ最近は、昨年の「ULTRA JAPAN 2014」の開催をきっかけに、EDMというムーブメントが台頭しています。
YOJI 確かに規模の大きなものがスタートしましたけど、新しいジェネレーションの始まりって感じですよね。今後、次のジェネレーションにつながるか、注目しています。
小室 100万人規模のものもありますし、海外では勢いが止まらない印象です。
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- YOJI BIOMEHANIKA ニューアルバム「Chapter X」2015年6月5日発売 / 2916円 / avex trax / AVCD-93060 / Amazon.co.jp
- 「Chapter X」
収録曲
- THE PLACE FOR FREEDOM
- DIE IN THE MORNING
- BLAZING
- MORE THAN WORDS
- CLOUD BURST
- RECOVERY
- LOOK @ THE HEAVEN (2015 OWN REWORK)
- WAKE UP TO REALITY
- GOT A FEELING
- THE PLACE FOR FREEDOM (HDM EXTENDED MIX)
- LOOK @ THE HEAVEN (BASSJACKERS RMX)
- NEEDS (2015 HOUSE REWORK)
- RECOVERY (REPRISE)
YOJI BIOMEHANIKA(ヨージビオメハニカ)
兵庫県神戸市出身のダンスミュージックプロデューサー。日本のみならず全世界で人気を博し、デヴィッド・ゲッタやカルヴィン・ハリスなどそうそうたる顔ぶれが並ぶイギリスのクラブ系専門誌「DJ MAG」のDJランキングの上位に名を連ねる。2008年からYOJI名義で活動をしていたが、2015年6月に約11年ぶりにYOJI BIOMEHANIKA名義のアルバム「Chapter X」をリリースした。
小室哲哉(コムロテツヤ)
1958年11月27日東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。1983年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成し、翌年「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、早くからその音楽的才能を開花させた。1993年にtrfを手がけたことがきっかけで、一気にプロデューサーとしてブレイク。以後、篠原涼子、安室奈美恵、華原朋美、H Jungle With t、globeなど、自身が手がけたアーティストが次々にミリオンヒットを記録した。2010年に作曲家としての活動を再開し、AAA、森進一、北乃きい、超新星、SMAP、浜崎あゆみなど幅広いアーティストに楽曲を提供する。2014年はTM NETWORKのデビュー30周年プロジェクトを精力的に展開。そして2015年、20周年を迎えるglobeをはじめ、さまざまなプロジェクトを進行させている。