「伝えたいのに伝えられない思い」をちゃんと言葉にしたい

──アルバム「kotoba」は、まさにタイトル通りの作品だなと思いました。安田さんのいろいろな感情が、嘘のない言葉たちによってストレートに伝わってきます。

ありがとうございます。今回のアルバムでは「伝えたいのに伝えられない思い」をちゃんと言葉にして届けたいというのがあって、それは私が歌っている理由でもあるんです。そういう感情って、ぼやっとしていて相手にもうまく伝わらないじゃないですか。それをきっちりと言葉にして届けたいと思ったから、アルバムのタイトルも「kotoba」にしたんです。

──歌詞はどんな環境で書くんですか？

思いを溜めて溜めて書きたいタイプなので、人と会わなくなります。会うとどうしても直接しゃべって、そこで思いが発散されちゃうから（笑）。場所はいろいろです。部屋にこもることもあるし、外へ出ることもあるし。「雨フル ～悲しみはきっといつの日か」なんかは、雨の朝に書き始めて、その後、あえて雨の中を散歩したりした結果、ああいう歌詞になったんですよ。

──安田さんは前回のインタビューで「伝えたい1人を見つけて書いていくことが多い」とおっしゃっていましたが、今回の作品もそのように作詞されたんですか？

全曲に当てはまるわけではないんですが、今回もそういうふうに作詞しています。思いを伝えたい相手と情景を浮かべて、そこから生まれる感情にピッタリな言葉を探していく感じですね。

──ちなみに、思い浮かべる相手が複数ってこともあるんですか？

友達に関する曲だったらあるかもしれないけど、恋愛の曲で複数の相手をイメージするのはややこしいことになりそうですね（笑）。三角関係の曲だったら、3人もあるかもしれないですけど。でも今回のアルバムは、ほぼ自分の実体験なので、それはないです。思い返すと全部同じ人に向けて歌ってる（笑）。

──あ、そうだったんですね。それぞれバラバラの人かと思ってました。

過去のことばかり歌ってるんですよ。自分でも「そろそろ前に進めよ」って思います（笑）。

──あはははは（笑）。

でも今回こうして作品にしたことで、どこかその思いが浄化されたところもあって。制作過程でじっくり自分の感情と向き合えたから、2013年は前へ進んでいけるんじゃないかなって思ってます（笑）。

自分の感情を全部見せるのが怖かった

──今回のアルバムは4thシングル「こたえ」がオープニングナンバーになっていますが、この曲は安田さんの感情が包み隠さず表現された曲ですね。

サビの歌詞とか、今改めて読むと恥ずかしい（笑）。普段の自分だったら絶対言わない言葉なので。実は私、ずっと好きな人に「好き」って言えなかったんです。

──どうしてですか？

「重いとか思われるんじゃないか？」とビビって（笑）。でも好きな人にはやっぱり「好き」って言いたい。そう思って書いたのが「こたえ」なんです。冷静に歌詞を読み返すと重い気もしますが（笑）、私にとってはそれぐらい深い思いだったんです。

──なるほど。

この曲で気持ちを伝えたかった人と出会ったときに、「愛ってわかんないし、これからもきっとわかんないんだろうけど、これが愛なのかもしれない」って初めて思ったんです。

──その「愛」の感覚は具体的にどのようなものだったんですか？

それまでは自分の感情を全部見せるのが怖くて、男の人の前で泣いたり怒ったりすることもできなかったんですけど、その人の前では泣いて、怒れて。私は常に「本当の愛ってなんなんだろう？」って考えてたんですけど、自分の汚い部分や嫌いなところも含めて本当の自分を愛してほしかったんだってことに気付いたんです。

──それまでは、自分にフタをしてしまっていた？

そうですね。弱いのに強がったり、カッコつけて自分をだましたり……。いつもそうやって偽ってる自分がすごく嫌だったから、「こたえ」はそういう叫びを表現した歌です。