「本当に大事なものは目には見えない」w.o.d.は“悩みながら踊るロック”で「BLEACH」へのシンパシー示す (2/2)

成長したけど、やってることは変わってない

──「STARS」の発売日には、2018年に発表された1stアルバム「webbing off duckling」が、発売5周年を記念してアナログ盤でリリースされます。

サイトウ 俺らは具体的な結成時期がよくわからないから、いわゆる周年企画ができないんですけど、1stアルバムなら発売したタイミングがわかるし、「このタイミングで何かできたらいいんじゃないか?」という話になって。あのアルバムだけアナログ盤がなかったので、このタイミングでリリースすることになりました。

──w.o.d.を略さない読み方、webbing off ducklingをタイトルに冠したアルバムですが、今聴いてみるとどう感じますか?

Ken 「俺、めっちゃ若いな」と思いましたね。

サイトウ そうね(笑)。エネルギーが出すぎて制御できていないんですが、それがうらやましくもあるんですよ。今はもっとクオリティが上がってますけど、パンクには別にそんなの必要ないじゃないですか。音が汚いほうがカッコいい。

Ken 俺は1stアルバムをレコーディングする直前にプレイスタイルを変えたんですよ。それまでは指でベースを弾いていたんだけど、レコーディングの数カ月前からピック弾きに変えたので、まだ慣れていなくて。

Ken Mackay(B)

Ken Mackay(B)

サイトウ だから余計に荒々しいのかも。

──元良さんは1stアルバムのレコーディングには参加していないんですよね?

元良 はい。レコーディングが終わって、発売される前に加入したので。今聴いても印象はそんなに変わらないですね。もちろん「若いな」とは思いますけど。特にサイトウの歌い方は今と違うし。

サイトウ まあね。声や歌い方が変わるのはしょうがない。

──楽曲制作、レコーディングを含めて確かにクオリティは上がっていると思いますが、アルバム「webbing off duckling」と新曲「STARS」を続けて聴いても、まったく違和感がなくて。基本的なスタイルは一貫しているんだな、と。

サイトウ よかった。初期は俺が1人で音源を作っていたんですよ。1stアルバムに入っている「丸い真理を蹴り上げて、マリー。」はその頃の曲なんですけど、「STARS」もまず俺がデモを作って、そのあとバンドで練っていったので、作り方が初期と近いんですよね。

Ken 確かに似てるかも。やってることが変わってない(笑)。

サイトウ ホンマにそう(笑)。

Ken いいことや。

「なんでもやりたい」から「今しかできないことをやる」へ

──バンド結成当初、音楽的にはどんなスタイルを目指していたんですか?

サイトウ 最初は「なんでもやりたい」でしたね。

Ken けっこういろんな曲があったんですよ。さわやかな曲とか。

サイトウ めちゃくちゃクリーンな曲もやったし、超サイケな曲をやったり。

Ken レッチリ(Red Hot Chili Peppers)みたいな曲もね。

サイトウ そうそう、ファンクっぽい感じ。あと、オールドロックにドはまりしてた時期はCreamやジミ・ヘンドリックスのカバーをやって、そのままオリジナル曲につなげたりしてました。高校の文化祭では、ブレイクコア系のビートとそれに合わせて動く映像を作ったんですよ。体育館の壁に映像を映しながら、Kenとアドリブで演奏し続けるっていう。歌はゼロでね。

元良 すごいな(笑)。

サイトウ よくも悪くも散らかってたんですよ。1stアルバムを制作するタイミングで、当時のプロデューサーから「1stでしかできないことをやろう」みたいなことを言われて、「確かにそうやな」と思って。そこから勢いや衝動、パワーを重視するようになったのかなと。うまい下手ではなく、あのときにしかできないことをやった、という感じですね。

サイトウタクヤ(Vo, G)

サイトウタクヤ(Vo, G)

──なるほど。でも、今は演奏もうまくなっちゃってますよね。

サイトウ まあね。

Ken元良 (笑)。

サイトウ いや、まだまだ全然なんですけどね。ただ、今も「そのときにしかできないことをやってる」という感覚はあるんですよ。「My Generation」も「STARS」もそうだし。

元良 なるほど。

サイトウ 作り方は変化したけど、「今しかできないことをやる」というのは同じ。

──元良さんがw.o.d.に加入してから5年経ちましたが、バンドのテンションは変わっていないですか?

元良 いや、変わってきてるとは思います。加入してすぐの頃のライブは超ハードだったんですよ。持ち時間30分でもあまりにキツすぎて、終わったあと吐くこともあって。

サイトウ めっちゃ本数やってたからな。全国いろんな場所を回って、その挙句に毎日酒を飲んで、ボロボロになりながら「ウオーッ!」って。その後だんだんと「こういうやり方だけじゃないよな」と思い始めました。

元良 2022年の2月にZepp SapporoでThe Birthdayと対バンしたとき、「気合いだけのライブでもいい勝負ができるんじゃないか」と思っていたんだけど、完敗だったんですよね。わざわざ札幌まで観に来てくれた家族から「The Birthdayの音は強くてカッコよかったけど、w.o.d.はよくわからなかった」と言われて。そのライブをきっかけに「もっと大人なライブをやれるようになりたい」と思うようになったんですよね。

サイトウ チバさん(チバユウスケ / The Birthday)には少年のようなきらめきが残っているんだけど、バンドはすごく熟練されていて、勢いや気合いだけでは勝てへんことがハッキリわかりましたね。ほかには今年2月に観たレッチリのライブも刺激になりました。若いときの暴れ回る感じはまったくなくて、ジョン・フルシアンテ(G)なんて全然動かないんです。インイヤーモニターをして、ただただギターを弾いてるだけだけど、死ぬほどカッコよくて。

──w.o.d.もそういう変化の過程にあるのかも。「STARS」でw.o.d.のことを知った音楽ファンも多いと思うのですが、「STARS」の次に聴いてほしい曲を挙げるとすると?

サイトウ 「イカロス」ですね。スリーピースバンドとしてのw.o.d.らしさがより深く出ている曲なので。「STARS」は音をかなり重ねているし、開けた感じもあるけど、「イカロス」はそういうことをまったくしてなくて。

Ken 中野さんも「イカロス」が一番好きって言ってました。「バニラ・スカイ」「オレンジ」のようにメロウでエモーショナルな曲もいいと思うんだけど、俺は「楽園」かな。これもw.o.d.にしかできない曲。レコーディングは完全に一発録りで、ボーカルトラックもまったく編集していないんですよ。

──ストリーミングでも上位に入っている曲ですね。

元良 俺も「楽園」を挙げようと思ってた(笑)。別の曲だったら「THE CHAIR」かも。自分が加入して最初に作った曲なんですけど、もう二度と作れないというか、奇跡が起きている感じがあって。まあ、ほかの曲にもそういう部分はあるんですけどね。

中島元良(Dr)

中島元良(Dr)

ワンマン中、「俺もロックバンドのライブに行きてえな」って思いました

──11月にはワンマンツアー「バック・トゥー・ザ・フューチャーVI」がスタートします。ワンマンツアーのタイトルを「バック・トゥー・ザ・フューチャー」に統一しているのはどうしてなんですか?

サイトウ 同名の映画が好きで、最初の頃は告知ビジュアルも映画に寄せたデザインにしていました。映画は3作目までなので、とっくに本家のシリーズ数を超えちゃったんですけどね(笑)。あとは古いものを参考にして、新しいものを生み出す……みたいな四字熟語があるじゃないですか。

──温故知新?

サイトウ それですね。「バック・トゥー・ザ・フューチャー」というタイトルには、そういう雰囲気もあるのかなと。今度のツアーもめちゃ楽しみですね。8月のワンマンは東京と大阪だけだったんですけど、すごくよかったんですよ。コロナ禍の規制がなくなってから初めてのワンマンで、めちゃくちゃお客さんの声が聞こえてきて。

元良 東京公演ではサイトウのギターの音だけになったとき、歓声がすごすぎて音が聞こえなくなった瞬間もあったんですよ。「1000人以上集まるとこんなにすごいのか」ってビックリしました。

──秋のツアーでは、それが全国で繰り広げられるわけですよね。

元良 そうですね。そういえばこの前、KALMAと対バンしたんですけど、若い子がすごく多くて。観ているときの様子から、「コロナ禍に入る前、ロックバンドのライブがどんな盛り上がり方をしていたのか、知らない子も多いんだろうな」と感じたんです。次のツアーで初めてw.o.d.のワンマンライブを観る人もいると思うんですが、俺らのお客さんはコロナ禍以前の盛り上がり方を知っている人も多いので、ロックのライブの楽しさを体感してもらえるんじゃないかと。

サイトウ まあ、静かに観てもらっても全然いいんですけどね(笑)。いろんなスタイルのバンドがいる中で、w.o.d.らしいライブをやるだけなので。コントロールされていなくて、みんな好きに遊んでる、というのかな。そういうライブにしかない高揚感って絶対あると思うし、それを伝えられたらいいですね。

──ロックバンドのライブは、自由な解放感を体感するためのものですからね。

サイトウ そうですよね。8月のワンマンはすごく手応えがあったし、自分で演奏してて「俺もロックバンドのライブに行きてえな」と思いましたから(笑)。秋のツアー、ぜひ遊びに来てほしいです。

w.o.d.

w.o.d.

ライブ情報

w.o.d.「ONE MAN TOUR “バック・トゥー・ザ・フューチャーVI”」

  • 2023年11月7日(火)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2023年11月8日(水)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2023年11月10日(金)福岡県 DRUM Be-1
  • 2023年11月11日(土)広島県 SIX ONE Live STAR
  • 2023年11月16日(木)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2023年11月18日(土)北海道 cube garden
  • 2023年11月25日(土)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2023年11月26日(日)石川県 Kanazawa AZ
  • 2023年12月1日(金)大阪府 BIGCAT
  • 2023年12月2日(土)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)

プロフィール

w.o.d.(ダブリューオーディー)

兵庫県出身のロックバンド。中学生の頃同級生だったサイトウタクヤ(Vo, G)とKen Mackay(B)によって結成され、2017年9月に神戸から東京に活動拠点を移動。2018年の初フルアルバム「webbing off duckling」リリース直前に中島元良(Dr)が加入し、現在の3人体制になった。2022年には4枚目のフルアルバム「感情」を発表し、2023年7月にはテレビアニメ「BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-」のオープニングテーマに「STARS」を提供。同楽曲を収めたシングルCDを9月にリリースした。