渡會将士インタビュー|とめどない創作意欲のまま第3章へ、「Third eye」で描く人間と音楽の関係性 (2/2)

音楽になるための「0 to 1」

──まさに「Third eye」は、「音楽は本来どうあるべきか」という歌ですよね。歌詞をじっくり読むと、強いメッセージ性が込められているのがわかります。

むちゃくちゃシンプルなことを言っているだけなんですけどね。昔、ブルースについて調べたことがあって、悲しみを表すBLUEの複数形だからBLUESだという説明を聞いたときに、どおりでしみったれた曲が多いなと思ったんですよ(笑)。去っていった女の子のことばかり歌ったり。でも、そのしみったれた感じをちゃんと音楽に昇華させて、悲しみや苦痛を連呼して、そこにリズムが生まれれば音楽になるという、そこがすごく原始的でいいなと思っていて。「NO MUSIC, NO LIFE」というのもカッコいいですけど、そこまでかしこまったものではなくて、音楽と人との関係性はもっとプリミティブな気がするんですね。

──そうですね。

普通に生活している中で、愚痴ばかり言っている人もいるけど、それも1つのブルースじゃないですか。だから実は、生活の中の悲しみや苦痛、あるいは喜びにせよ、ありとあらゆる感情をその場で消費せずに、次の形にグレードアップさせるのが音楽の面白いところなのかな?と思うんですね。それがわかってきたあたりから、否定的な音楽や、悲しい音楽も全然ありだなと思えるようになりました。Adoちゃんの「うっせぇわ」がウケたのも、誰かの怒りや苦痛の代弁になったからだろうなと思いますし、それも1つのブルースなのかもしれないですよね。

──「Third eye」の歌詞は「人間とBlues」で始まって、次のセクションでは「Like jazz」になり、その次が「人間とGroove」になる。人間と音楽との関係性を詩的につづった深い歌詞だなと思います。そして、フックとして何回も連呼される「0(zero) to one, beyond hundred」という印象的なフレーズ。ここにはどんな意味を込めていますか?

英語の文法的に正しいものではないと思うんですけど、フィーリングは英語圏の人にも伝わるだろうなと思います。さっき、生きていくことと音楽はすごく近いという意味の話をしましたけど、感情が胸にある時点では音楽じゃないんですよね。音楽になるための「0 to 1」というものが常にどこかにある。感情を言葉にして、リピートして、リズムが生まれて、そこにメロディが乗ったらすべては音楽だ、とは言いつつも、それを実現するためには技術や努力がめちゃくちゃ必要だなということを経験してきたのが、この20年間だったので。

──なるほど。

でも「0 to 1」さえ踏み出せば、それは100につながっていくし、100を超えていく。実はこの「0 to one, beyond hundred」という歌詞だけを曲を作り始めた頃にメモっていたんです。「これを書こう」と思い、それに合うリフを作って、あとはもう雪崩のようにダーッと全部できていきました。僕はもともと、歌詞を作ったあとにメロディを乗せたり、またはその逆だったり、そういう作り方をなるべくしないようにしていて、同時進行で曲を作るのが一番いいと思っているんです。2曲目の「moonrise」も、The Policeみたいなアルペジオのギターフレーズの曲を作ろうとしていくうちに、「当然歌い出しはああいう感じになるよな」「じゃあそこに乗っけたい言葉はなんだろうな」と考えたら「moonrise」という言葉が出てきて、そこから歌と詞を同時に作っていきました。

──EG & his Drawersとの演奏は、どんな経験でしたか?

ギターのEGくんが非常に献身的なアイデアマンで、「こんなのどうですか?」って、楽しみながらいろいろと提案してくれました。ドラムの脇山(広介)さんはわりとクールな印象がありましたが、レコーディング当日に「ちょっと試してみていい?」と、ラストのサビ前のドラムにトライし始めたんです。かなり難しいフレーズなんですけど、「こんなのやろうと思うんだけど、どうかな?」って。それでめちゃくちゃ盛り上がったり、みんなが出してくれる意見を受けて曲に花が咲いていくような、すごくいいレコーディングでした。

渡會将士

「ライブで聴きたいな」と思ってもらえるシングル

──シングルの2曲目「moonrise」は、渡會さんがプログラミングと演奏をすべて手がけたソロレコーディング作です。イントロのフレーズからまさにThe Policeですね。

「見つめていたい」です(笑)。コロナのときにどこかのDJが、あの曲のギターフレーズを引っこ抜いてダンストラックにして、Instagramでめちゃくちゃ流行ったんですよ。それを聴いて改めていい曲だなと思ったのと、ほかにもトラックは丸々別のアーティストで、歌だけ載せ替えたみたいな曲があって。これって法的に大丈夫なのか?とか思っていたら、実は元の曲のさらにもっと前に同じトラックが存在していて、ずっとコピーをし続けているんですね。

──もはやフリー素材のように。

そうそう。その行為を擁護するつもりはないんですけど、魂的な部分で音楽の引き継ぎをやっていくのは大事なことだし、大人になって改めて曲を聴いて「スティングもThe Policeもカッコいいな」と思うようになったので、もうバレバレのバージョンで、一瞬で伝わる曲を作ろうと(笑)。コードの並びとかアルペジオは完全に別物で、同じように聴こえるものを意図的に作りました。すごく楽しかったです。

──3曲目「Let's get down」も、EG & his Drawersとの演奏です。こちらはあえて言うなら、brainchild'sにも近いグラマラスなロックンロールですね。

この曲に関しては、ベースに何かやってもらおうと想像しながら作った部分が大きいです。菅野くんはどちらかというと控えめで、前に出ないことを信条にしているプレイヤーなんですけど、「君はFoZZtoneのメンバーですから。無理やりでもベースソロを弾いてもらいます」と言ったら、笑ってました。そういう一連の作業が楽しかったです。

──ファズをブリブリに効かせたベースソロ、カッコいいです。結果、バンド演奏が2曲、打ち込みを駆使したソロ録音が1曲。面白いEPになりましたね。

完全に2月からのツアーを想定して曲を作ったので、メンバーにも「この曲はこうで」って、ライブの中での立ち位置も含めて説明済みです。聴いてもらえば、「これライブで聴きたいな」と思ってもらえる作品になったと思います。

──ライブのお誘い、招待状としてのシングルだと。

まさにそんな感じですね。

渡會将士

やっぱり対バンが楽しい

──インストアイベントを経て、2月22日に名古屋で「Third eye Tour」がスタートします。どんなツアーにしようか、今考えていることは?

実はもうセットリストを組んで、メンバーにも投げています。菅野くんが参加してくれることもあって、FoZZtoneの曲もちょっとやろうと思ったんですけど、とはいえ特殊な曲が多いので、メンバーの得手不得手も加味して「この曲だったらできますか?」と事前に提案したんです。そうしたらメンバーのほうから「サブスクで聴き直したんですけど、この曲めっちゃいいっすね。やりたいです」みたいな感じで、けっこう難しい曲が上がってきて。メンバーもすごく楽しんで準備をしてくれているので、期待してほしいです。対バンも本当に仲がいい人たちが集まってくれたので。

──2月22日のCLUB UPSET公演のゲストは、LUNKHEADとHalf time Oldです。

LUNKHEADは年齢がちょっと上ですけど、下北沢GARAGEという今はもうないライブハウスで苦楽をともにしてきた仲間です。あっちはずっとバンドをがんばっていますよね。Half time Oldは名古屋のバンドで、FoZZtoneのファンだと公言してくれていて、何度か一緒にライブをやったことがあります。ボーカルが本当にいい声なんですよ。

──また2月23日のShangri-La公演と、3月6日のHEAVEN'S ROCKさいたま新都心 VJ-3公演は、鶴が対バン相手です。

鶴は同じ埼玉県民として、同じバンドマンとして思うんですけど、異常なところに突入し始めていますね(笑)。だって、日本全都道府県ツアー5周目ですよ? それをやってもバンド仲が悪くならないのは、本当に3人とも人間性が素晴らしくて、そして音楽的な体力があるからだと思います。ボーカルの秋野くんは「曲はいくらでも作れる」と言っていて、カッコいいですよね。

──そして3月13日のenn2ndの対バンには、yolufaが来てくれます。

ボーカルの菊池くんがやっていたyolufaの前身バンド・the quiet roomの登場SEがFoZZtoneの曲だったんです。ボーカルの菊池くんとは一緒に飲みに行く仲だし、一番かわいい後輩(笑)。新しくバンドを立ち上げてがんばっているし、お互いに境遇も近いし、対バンで呼んだらエモい日になるんじゃないかなと思って声をかけたら、速攻で「出ます!」と言ってくれました。

──かなりFoZZtone色の濃いツアーになりそうですね。そしてツアーファイナルは3月21日に渋谷CLUB QUATTROで行われます。「渡會将士 ONEMAN LIVE『MW QUATTRO』」と題し、EG & his Drawersとともに臨むワンマンライブ。いい日になりそうですね。

ツアーの集大成になればいいなと思います。渋谷CLUB QUATTROは、FoZZtoneが「音楽」という曲を出したあと、初めて披露した思い出深い場所でもあるので、菅野くんと「なんかエモいよね」とか言ってます。

──第3幕の開幕を意識しながら、ここから始まる2026年。どんな1年にしたいですか?

全編バンド編成でツアーをやりますが、ツアーが終わったからといってそれをやめることはなく、続けていこうとは思っています。それと同時に、弾き語りもずいぶん長いことやってきて、ルーパーの技術とかも上がっているので、そっちも引き続きやりたいですね。あとは「Third eye Tour」もそうですけど、やっぱり対バンが楽しいなと思うんですよ。バンドがいっぱい出るんじゃなくてツーマンぐらいで、しかも鶴とか、勝手知ったる仲間たちと改めて一緒にやることが、今はすごく楽しい。

──なるほど。

2025年にも鶴とツーマンをやらせてもらったんですけど、異様にお客さんが入ってくれたんですよ。2組の関係性も踏まえて期待してもらったんだなと思います。最近だとモノブライトが復活して、そのドラマーがbrainchild'sで一緒にやっている岩中(英明)くんで。もういい歳のはずだけど、この界隈がものすごく元気になってきていて、去年の8月に自分のトークイベントで中田裕二くんと鶴を引き合わせたときも、尋常じゃない盛り上がり方をしていました(笑)。20代のときだったらお互いにピリついて、ツンツンしていただろうやつらが、40代になってニコニコしながら全力で握手できるみたいな感じなんですよね。そういうことも含めて、改めて対バンの面白さをお客さんにも感じてほしいし、2026年は弾き語りはもちろん、いい人に出会ったら「対バンしません?」と誘ってみるとか、そういう出会いも広げていきたいなと思っています。

渡會将士

公演情報

渡會将士「Third eye Tour」

  • 2026年2月22日(日)愛知県 CLUB UPSET
    <出演者>
    渡會将士 / LUNKHEAD / Half time Old
  • 2026年2月23日(月・祝)大阪府 Shangri-La
    <出演者>
    渡會将士 / 鶴
  • 2026年3月6日(金)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
    <出演者>
    渡會将士 / 鶴
  • 2026年3月13日(金)宮城県 enn 2nd
    <出演者>
    渡會将士 / yolufa

渡會将士 ONEMAN LIVE「MW QUATTRO」

2026年3月21日(土)東京都 渋谷CLUB QUATTRO

プロフィール

渡會将士(ワタライマサシ)

1981年4月6日生まれ、埼玉県出身。アコースティックギターとルーパーを駆使してパフォーマンスするシンガーソングライター。2002年にバンドFoZZtoneを結成し、2007年にEMIミュージック・ジャパンよりメジャーデビューした。全作品のアートワークと歌詞を手がけ、数多くの楽曲を作曲。さまざまなアプローチで活動を展開するも、2015年にバンド活動を休止した。2016年にソロとして初のフルアルバム「マスターオブライフ」を発表し、以降ハイペースで作品のリリースやライブの開催を重ねている。また、THE YELLOW MONKEYのギタリスト・菊地“EMMA”英昭によるソロプロジェクトbrainchild'sに参加している。2024年9月にはキャリア20周年を記念したアルバム「MorroW SoundS」を発売し、11月に東京・Veats Shibuyaでワンマンライブ「渡會将士20周年音楽會」を開催。2026年1月21日にニューシングル「Third eye」をリリースする。2月より本作を携えて対バンツアーを行い、3月21日にはソロ活動では過去最大規模の会場となる東京・渋谷CLUB QUATTROにてワンマンライブ「MW QUATTRO」を行う。