橋口洋平(wacci)×松下洸平対談|10年来の友が語り合う「恋だろ」の話、これからのこと (3/3)

これは洸平くんの歌なんじゃないか?

橋口 洸平くんにはこの間、wacciのライブにゲスト出演してもらってね(「wacci Live House Tour 2022 ~Reboot!~」EX THEATER ROPPONGI公演)。出会った頃に洸平くんのライブで歌わせてもらって、そこからお互いに別のフィールドでがんばってきて、9年という時間を経て同じステージで……しかも同じ作品に携わった演者と挿入歌担当として「恋だろ」を一緒に歌えたっていうのは、すごく幸せなことだなと思いました。

松下 僕もうれしかったです。YouTubeやTikTokで公開した、そのときのライブ映像にたくさんの反響が集まっているのを見て、僕、なんだか「恋だろ」を自分の曲みたいに思っちゃって……。

橋口 いや、僕も「これは洸平くんの歌なんじゃないか?」と思ったくらいだから(笑)。

松下 映像を観た方から「『恋だろ』聴きました!」って、すごいたくさん感想をもらうの。そういうときに「ありがとうございます!……ん、ありがとうございます?」みたいな(笑)。

橋口 あはは。でも本当にそれくらい曲が似合ってるってことだから。それこそ健太として生きてきた洸平くんが歌うからこその部分もあると思う。絶対、気持ちが歌に乗ると思うし。

松下 そう、健太として歌うとね、ホントに涙が出そうになるくらい。一緒に歌うことができてすごく楽しかった。ライブでは僕の大好きな「羽田空港」も歌わせてもらったけど、出会いからの月日の経過を考えるとすごく感慨深いものがあったし……。

橋口 あったねえ。

松下 こうして一緒に歌えていることが本当にうれしいし、なんだか今、自分はwacciのメンバーになったような錯覚を覚えています(笑)。

橋口 それはもう、wacciとしてはものすごい新メンバーが“加入”してくれて、こんなにうれしいことはないですけど(笑)。コメント欄にもね、「2人の声質が合ってる」みたいな声があったりして。そういうことを考えたことはあまりなかったけど、うれしいですね。

松下 そうだね。

橋口 同じステージで歌ってみて自分が感じたことは、洸平くんの歌って、曲の主人公を演じつつも、しっかりと自分のパーソナルな部分もにじませた歌だなって。それは自分にはなかなかできないことだから、すごく感動しました。隣で歌っている声に聴き惚れてしまうような感覚だった。

松下 うれしいな。ありがとうございます。

自分の中に“wacciイズム”がすごくあるから

橋口 そう、洸平くんの新曲(「Way You Are」)、聴いたよ。

松下 えっ、聴いたの?

橋口 今日の対談のために用意していただいたので、皆さんよりちょっと先に聴かせてもらいました。いや、めちゃくちゃカッコよかった。洸平くんのさわやかさが、そのまんま曲に乗っかって耳に届いてくる感じ。朝、出勤前とかに聴きたくなるような心地よさだなあと思った。サウンドもおしゃれで。

橋口洋平(wacci / Vo, G)

橋口洋平(wacci / Vo, G)

松下 うわあ、ありがとう。

橋口 でさ、思ったのがね。この曲から受け取る前向きさって、背中を押すようなポジティブ感というよりは、「そのままでいいよ」と、ありのままを肯定してくれる感じというか。「今日をいい1日にするために、今の自分を認めてあげよう。それだけできっと、すごく素晴らしい日になるよ」というメッセージじゃない。なんだかそれが、すごく洸平くんらしいなって。押し付けがましくなくてさ。そういう意味でも、すごく素敵な応援歌だなと感じましたね。

松下 うれしい。この曲は完成したばかりだから、まっさらな状態で聴いてくれた人から感想をもらうのは今が初めてだったんだけど、めちゃくちゃうれしい感想をいただいてしまった感じ。歌詞は、まさに「そのままでいいよ」という思いを込めて書き進めたんです。それこそ自分は橋口くんの作った曲をずっと聴いてきて、そこからいつも学びを得ているわけですよ。その中で、闇雲に背中を押し続けるのはすごく無責任なことなんだっていうことも学んできたので……。

橋口 いやいや(笑)。

松下 自分の中に、そういう“wacciイズム”みたいなものがすごくあるから(笑)。そこはやっぱり、歌詞を書きながら気を付けたことでしたね。今を大切にしながら1日1日を生きてほしいという思いをしっかり込めたかったから、何度も何度も書き直して。最初のうちは「第1稿」「第2稿」「第3稿」ってちゃんとナンバリングしてたんだけど、途中からもう、第何稿なのかわからなくなっちゃって(笑)。

橋口 あるある、わからなくなるよね(笑)。

松下 「(仮)」みたいな、雑な書き方になっていってさ(笑)。それくらいたくさん……一緒に書いてくださったAKIRAさんのお力も借りて、何度もやりとりしながら作り上げていって。

橋口 英語のフレーズのハマりもめっちゃいいよね。「Way You Are」のようなさわやかな曲って、歌と音のハマりが聴いていて気持ちいいかどうかもすごく大事なポイントになると思うから。そういう部分のよさが前提にあるうえで歌詞の内容がいいから、すごく素敵だなと思いました。

松下 いやあ、うれしい。

橋口 カップリングの「Only you」もいい曲だった。こちらは、“Michael Kaneko節”がすごいなあ!と。

松下 あはは、ありがとう。僕はいちファンとしてMichael Kanekoさんの曲をずっと聴いてきたし、Michaelさんの作る、ゆるりとしたソウルやさわやかなサーフミュージックも大好きで。だから今回曲を作ってくださることになって、デモをいただいたときは「うわあ、めっちゃMichaelさんだ!」ってうれしくなっちゃって。

橋口 いやあ、ホントにそうよ。

松下 Michaelさんが「ナナナ」で歌ってくれている仮歌だったんだけど、「もうこれでいいじゃん!」って思うくらい(笑)。だから、そこに歌詞を乗せていく作業はすっごくワクワクしたし、楽しかったです。もうね、「この曲は絶対ラブソングにしたい!」と思って。ラブソングは今までも何曲か書いてきましたけど、どれも叶わぬ恋や付かず離れずな距離感を歌うものだったから、今回はしっかり手と手をつないだ状態で「大好きだ」って気持ちを歌う曲にしようと。それこそ歌じゃなきゃ言えない、普段だったら絶対に言えないような言葉も、恥ずかしげもなく入れてみました。

松下洸平

松下洸平

橋口 いや、もうキュンキュンするよ。僕は「プライドが互いを追い越して 素直になれない朝」っていうフレーズがすごく心に残ってさ。“ぶつかり合い”をどう表現するかって、書き手によってすごく違いが出ると思うんだけど、すごくカッコよくて素敵な表現だなあと思いました。それと、「ラストシーン」「エンドロール」とか、洸平くんが実際に身を置いている場所にまつわるフレーズも出てくるじゃない。そういう言葉が、すごく説得力を持って伝わってくるの。これは洸平くんにしか歌えない歌詞だなあと思いながら聴いていました。

松下 うれしいー。ありがとう。

洸平くんに合う、一番いい曲を書く自信が僕にはある

橋口 今回、洸平くんの力を借りて、ありがたいことに「恋だろ」がすごく広がってくれていて……洸平くんに力強く背中を押してもらった感覚なので、ここからは自分たち自身のいいところや楽曲の魅力をしっかりと打ち出して、いい曲を届けていきたいなという思いがあるんです。洸平くんの名に恥じないようにね。

松下 いやいやいや。

橋口 なんというか、すごく自信をもらったんですよ。それがすごくうれしいから、この思いを無駄にしないようにがんばっていきたいなって。そういった思いが大前提としてある中で、これからの夢を1つ語らせてもらうなら……洸平くんに合う、一番いい曲を書く自信が僕にはあるので……。

松下 うわあ! (ボイスレコーダーを指差して)聞きましたね? 今!

橋口 いつか洸平くんのための曲を。ちょっとプレゼンしようかなと思います!

松下 いやいや、こちらこそです、本当に。僕はずっと待ってます。橋口くんに曲を書いてもらえたら、僕はもう……泣いちゃう。泣いちゃいます。あとは、2人で曲を作ったりするのも楽しそうだよね。

橋口 いいね、共作ね。

松下 きっとすごく楽しいと思う。もちろん、お互いにライブ活動も続けていきますし、またwacciのライブにお邪魔させていただけるような機会があれば、ぜひ呼んでいただきたいなとも思います。僕のライブにもぜひ登場してください! 本当に、これからもよろしくお願いします!

橋口 こちらこそ、よろしくお願いします!

左から橋口洋平(wacci / Vo, G) 、松下洸平。

左から橋口洋平(wacci / Vo, G) 、松下洸平。

プロフィール

wacci(ワッチ)

橋口洋平(Vo, G)、村中慧慈(G)、小野裕基(B)、横山祐介(Dr)、因幡始(Key)の5人からなるバンド。2009年12月に橋口が中心となって結成。2012年11月にミニアルバム「ウィークリー・ウィークデイ」でメジャーデビューを果たす。2018年8月に配信リリースしたシングル「別の人の彼女になったよ」が話題に。2020年10月には東京・日本武道館にて無観客配信ライブ「wacci Streaming Live at 日本武道館」を実施。2021年10月に「風」「東京24区」を2曲同時に配信リリースした。また11月には東京・日本武道館での初の有観客ワンマンライブ「wacci Live at 日本武道館 2021 ~YOUdience~」を開催した。2022年6月にシングル「恋だろ / 僕らの一歩」をリリース。

松下洸平(マツシタコウヘイ)

1987年3月6日生まれ、東京都出身。2008年に洸平名義でCDデビューした。翌2009年にミュージカル「GLORY DAYS」で初舞台を踏んで以降、俳優としても舞台や映像作品で活躍している。2018年には「第73回文化庁芸術祭」演劇部門で新人賞を受賞。2019年に放送されたNHKの連続テレビ小説「スカーレット」ではヒロインの夫・八郎役を演じて人気を博し、同年の「第26回読売演劇大賞」で杉村春子賞および優秀男優賞を受賞した。最近の主な出演作に、映画「燃えよ剣」、舞台「夜来香ラプソディ」、ドラマ「やんごとなき一族」など。2022年9月30日には映画「アイ・アム まきもと」が公開される。アーティストとしては、2021年8月にシングル「つよがり」で二度目のメジャーデビューを果たす。2022年8月に2ndシングル「Way You Are」をリリース。11月30日より、全国6箇所8公演のライブツアーが決まっている。

衣装協力
ジャケット 55000円、シャツ 29700円(共にネフォロジスト)
シューズ 38500円(パントフォラ・ドーロ)
パンツ スタイリスト私物
ネフォロジスト:https://nephologist.com
パントフォラ・ドーロ(問 アドナスト ミュージアム):03-5428-2458