VaVa×令和ロマンくるま、初対談で意気投合「仲のよさって演じられない」 (2/3)

相手を変えるって普通に無理なんだ

VaVa ネタはどんなふうに作られてるんですか?

くるま まったく計算してないわけじゃないですけど、ほかのコンビに比べるとケムリの作り込みは少ないと思います。ネタだけじゃなくて、声色や声量、目線も音楽のようにある程度チューニングが必要なんです。でもケムリの場合は、あれがマックス。だから無理にいじらないことにしました。最初は怖かったですけど、もう慣れましたね。

VaVa ちょっとケムリさんの気持ちがわかるかも……です。昔はライブのMCで「ここは俺がしゃべらなきゃ」みたく気を使ってたんだけど、全然うまいこと言えなくて、さらにがんばってしゃべろうとすると、途中で何言ってるかどんどんわけわかんない感じになっちゃって自分もお客さんも?みたいな(笑)。だからもう最近は自由にやらせていただいています。変な感じになっちゃったらCDSのライブのときはほかのメンバーがうまいことフォローしてくれますし(笑)。くるまさんは今のような関係性に行き着くまでが大変だったりしませんでしたか?

VaVa

VaVa

くるま 最初の3年くらいはしんどかったですね。コンビとして「もっと向上しなきゃ」「もっとできる」と思ってたんです。だから「このパターンで仕掛けてみよう」「こういうネタだったらもっとケムリが面白くなるかな」とか。ケムリを変えようとしてたんです。でも24、5歳の大人の個性を変えるって普通に無理なんだということにあるときに気付いたんです。ふと周りを見ても、相方を無理に変化させようとしてるコンビはあんまうまくいってないことにも気付いて。たぶん大人が成長する場合って、根本的に変わるというより、その人の個性を延長していく以外ないなという気がしたんです。もちろん自分も含めて。実際僕も変わろうと思って苦労した時期もありましたし。

VaVa とてもわかります……。ケンカとかはありましたでしょうか?

くるま ケンカにならないんです。向こうがまったく怒らないんで。金持ちケンカせずって格言あるじゃないですか。あれ本当です。真のお金持ちは常におおらか(笑)。プロになる前はケムリのそういうとこが好きだったけど、一緒にやってくんだったらケンカしながら切磋琢磨してお互いに向上していくもんだ、という固定観念もあって。お笑いっていじり合ったりとかするじゃないですか。だから俺の悪口を言ってほしいとお願いしても「ない」って言うんです。最初はサボってると思いました。見つけようとしてないんじゃないかって。それに普通の人間だったら内面を掘っていくとなんらかの怒りやほつれがあるじゃないですか。でも「ない」と。そういうことはやりたくないって。

VaVa すごいです(笑)。なんでくるまさんはケムリさんの個性を受け止められるようになったんですか?

くるま コロナになって芸人は一気に仕事がなくなったんですね。YouTubeを始めたり、ネタ作りに集中したり、みんなそれぞれいろんなアプローチを試してたんです。でもどこか不安で下に下に気持ちが向いてました。うちは相方から全然連絡がなかったんです。緊急事態宣言が出て1カ月くらい経ってからかな。何気なくSNSを見たら、ひさしぶりに相方が更新してて。そしたら自分の部屋にジムを作って、鍛えて、プチ断食して、20kgくらい痩せてシュッとなってたんです(笑)。

VaVa 自分磨きをしておられたんですね!(笑)

くるま そう。普通の人はあの時期に気持ちをそっちに持っていけない。なのに相方は筋トレして栄養を摂ってたんですよ。もうポジティブとかそういうレベルじゃない(笑)。「あ、この人は自分と根本的に違うんだ」って思えたんです。そこからですね。ケムリをあのまま生かしていこうと思ったのは。お互い直さなきゃいけないところはたくさんあるので、そこはがんばってますけど、今はすごくいい感じにやれてると思います。

髙比良くるま

髙比良くるま

粗があったほうがいい

VaVa 令和ロマンのお二人は今とてもお忙しいかと思われますが、YouTubeのコンテンツもたくさん更新されてますよね? 企画はお二人で考えているのでしょうか?

くるま 僕らもアイデアを出しますし、作家さんにも入ってもらってますね。でもがっつり会議をやることはないです。そこは決めてます。なんか仕事になっちゃうじゃないですか。

VaVa わ、それBIMもまったく同じこと言ってました。ラップを作るときに会議しても絶対にいいものは生まれないって。去年CDSでアルバムを出したんですけど、みんなで一丸となって歌詞を書いたり、「テーマどうしよう?」みたいな話し合いになった瞬間、BIMはいきなりラーメンを作り始めたりするんですよ(笑)。音楽って音を楽しむって書くくらいだから、まず自分がものすごく楽しまないと、聴き手の人たちはもちろん、ライブに毎回来てくれる人たちにも伝わらないと思うんです。自分もその意識のもと、音楽を日々作っていて、自分が200%楽しんで初めてようやく聴き手の人たちが80~100%楽しめるくらいの感覚でいますね。だからこそ音楽を好きになった初期衝動が一番大事っていう。

くるま 僕らが会議しないのも同じ理由です。VaVaさんはいつ頃からそう考えるようになったんですか?

VaVa 最近です。1年くらい前からでしょうか。

くるま それは聴いてる側も勝手にちょっと感じてました(笑)。

VaVa マジですか!

くるま いい意味で明るくなったなって。「VVORLD」(2019年リリースの2ndアルバム)から「VVARP」くらいまでの頃ってEPとかたくさんリリースされてたじゃないですか。1つひとつがソリッドで、それはそれですごく好きなんですけど、最近はピースな感じがする。新曲の「ベストテン」とか。映像も超かわいいし。

VaVa 自分は天気みたいにコロコロ気分が変わるタイプなので、例えば今日(SUMMITのA&Rの)増田さんとミーティングして「こういうのがいい」と話してても、次の日には「すみません、やっぱこういうのがいいです」となっちゃうんです(笑)。毎回同じような曲を作れないからこそ、そのときの自分が一番楽しいと思うことを信じて作ってるとこはありますね。

くるま 僕は音楽制作の詳しいことはわからないけど、ネタ作りでも技術的に突き詰められる部分ってあると思うんですよ。そこも大事ではあるんだけど、あくまで上澄みでしかないというか。作ってる側として技術的に突き詰めたほうが達成感はあるんですけど(笑)。技術1、楽しさ9のバランス。実際そういう動画のほうが再生されますし。

VaVa そうですよね。たぶん粗があったほうがいい気がするんですよね。それも個性と言いますか。粗が謎を生んで、相手に違和感として残る。

くるま たぶん全部理解できちゃったら……。

VaVa つまんないですよね。あと僕は今年の「ラップスタア」(ABEMAのオーディション番組)にビートを提供してるんですけど、年々ラップがうまい若い子たちが出てくるんです。参加者もどんどん増えてますし。そうするとジャンルが細分化されてるとはいえ、技術を突き詰めているだけだと、絶対に似たものができてくると僕は思っていまして。サウンドにしろ、ラップのトピックにしろ。そうなったとき、最終的にはその人の個性が大事になってくる。だからこそ自分が言いたいことを言える、自分がカッコいいと思う音楽を作れるようなスタンスでずっとありたいと思うんですよね。他人の意見がどうしても気になっちゃう世の中ではあると思うのですけれど。

左から髙比良くるま、VaVa。

左から髙比良くるま、VaVa。

くるま VaVaさんはさっき「粗があったほうがいい」っておっしゃったじゃないですか。すごくわかる。自分は当初ケムリをしっかりプロデュースして、同時にテレビではこういうコメントもできるようになりたいっていう足し算の思考でいたんです。でも全部うまくいかなくて。さっき話したコロナ禍での一件以降、ケムリとゆったり仕事をやるようになったら、いろいろうまくいくようになった。

VaVa そうだったんですね……!

くるま はい。それまでは真剣に仕事して、ゆったり趣味を楽しむものだと思ったんですよ。でも仕事をゆったりしてうまくいくようになったから、今は趣味と真剣に向き合ってます。でも僕のような人が多い気がするんだよな。音楽を好きな人もお笑いを好きな人もみんなすごく真剣だし、グッズも全部買うし。それがいわゆる推し活なんだと思います。