VaVa×令和ロマンくるま、初対談で意気投合「仲のよさって演じられない」

プロデューサー / ラッパーのVaVaとお笑いコンビ・令和ロマンの髙比良くるまの初対談が行われた。この対談は、くるまが自身の出演するYouTubeチャンネルでVaVaのツアーTシャツを着ていたことをきっかけに企画されたもの(参考:鳥のガーリックポン酢丼で黙れん。)。くるまは言わずと知れた「M-1」王者であり、VaVaも新曲「Rolling Stone」のリリースを控えて多忙な時期だったが、それぞれオファーを快諾し、和やかなムードでトークが始まった。異業種で活躍する東京出身で同世代の2人は、それぞれの表現活動や混沌とした時代観への向き合い方と葛藤について意見交換。また友達と活動することの意義など興味深いトピックも語られた。

取材・文 / 宮崎敬太撮影 / 寺沢美遊

人生で初めて行ったライブがVaVa出演イベント

VaVa こんにちは。はじめましてです!

髙比良くるま はじめましてでございます。……直接お会いするのは初めてなんですけど、実は1回だけお話ししたことあって。BIMさんがサーヤ(ラランド)の家にいらっしゃってたときに僕もいたんですよ。

左から髙比良くるま、VaVa。

左から髙比良くるま、VaVa。

VaVa もしかしたらあのLINE電話ですか? 確か夜中の……。

くるま そうそうそう! サーヤの家からBIMさんがテレビ電話でVaVaさんにつないでくれたんです(笑)。その場にいた僕も一瞬だけご挨拶させていただきました。

VaVa  深夜帯のあの電話はとても印象的でした(笑)。

くるま あのとき、後輩の赤坂って芸人も一緒にいたんですね。そいつのコンビ名は「ボニータ」。もちろん由来はVaVaさんがプロデュースしたBIMさんの「Bonita」で。そいつはNSCの直属の後輩なんです。僕らが一緒に飲んでたら、たまたまサーヤと合流することになって、BIMさんにも会えることになったという。「お前、こんな最短で夢叶って大丈夫か」って言っちゃいましたもん(笑)。しかも赤坂はBIMさんに出囃子まで作ってもらってましたよね。

VaVa そうなんですよね! BIMと話してて「じゃあ出囃子作ろうか」って話になりました。それで何秒くらいがいいのかBIMとオンラインで話しながら作った記憶があります。

くるま 「漫才なんで、袖から出やすいようにちょっとイントロを短くしてもらおう」とかお話しされてましたよね。それでBIMさんがVaVaさんに電話して、自分は一瞬ご挨拶させてもらったんです。

VaVa とてもうれしいです。まさかお笑い芸人さんに自分の携わった楽曲からコンビ名として使っていただけるくらい曲が広がっていたなんて思ってもいなかったです。とても光栄です。「Bonita」は自分がBIMにビートを送るときに付けていたビートの名前だったんです。だからあの電話はすごく印象に残ってました。そういえば、以前くるまさんは「VVARP」(VaVaが2022年6月にリリースした3rdアルバム)のツアーTシャツを着てくれていましたよね?

くるま はい。ツアーには行けなかったので、友達に買ってきてもらいました。というかライブ自体ほとんど行ったことなくて。人生で初めて行ったライブがVaVaさんが出演されたWWWのイベントなんです(笑)。

VaVa 人生初めてのライブが僕ですか! めちゃくちゃ光栄です。とてもうれしい……。

くるま 僕は全然音楽詳しくないんですけど、TaiTan(Dos Monos)さんと親交があるので、KANDYTOWNの武道館とかOZROSAURUSの横浜アリーナのような大きい会場のライブにはたまに連れて行ってもらってます。

VaVa そうだったんですね。ちなみにくるまさんはどのような道筋、文脈でSUMMITの音源を聞いていただいてくれていたのでしょうか?

くるま Apple Musicとか使ってると、曲を聴き終わったところで次のアーティストをオススメされるじゃないですか。KANDYTOWNを聴いてたからかもしれないけど、どこかのタイミングでBIMさんとかPUNPEEさん、OMSBさんとかに自然とたどり着きました。

VaVa なるほど、そういう流れだったのですね。最近は自分やBIMが所属してるCreativeDrugStoreのin-dがRed Bullの「RASEN」というサイファー企画に参加して、「平成生まれでも求めるロマン」ってラインで令和ロマンのお二人に言及していて。くるまさんはin-dともつながりがあるんですよね?

くるま そうなんです。大学の先輩がin-dさんとつながってて。僕がin-dさんとお会いしたのは2年くらい前かな。

VaVa もしかしてその方って僕らのグループのCreativeDrugStoreのHeiyuuとBIMが監督したSTUTSさんの「夜を使いはたして」のMVに出演もしている……?

くるま そうです! その先輩経由でいろんな方と知り合いました。in-dさんとchelmicoのまみ(鈴木真海子)ちゃんと5、6人で遊んだり、少人数で飲み行ったりとかっていうのがけっこうありました。なので実はVaVaさんと僕はわりと近い関係性ではあったんですよ。ライブにも誘っていただけるんですけど、自分のライブと同じ時間帯なので……。午前中にライブしてくれたらいいのに(笑)。

VaVa その気持ち、とてもわかります(笑)。

お互い通じる感覚があるのかもしれない

VaVa 今お話しをしていただいた電話の段階では僕はまだ令和ロマンのお二人をしっかりと認識できておらずでして。優勝された去年の「M-1グランプリ」がきっかけで認識したんです。もうヒゲさわるところのファーストインプレッションから「好き……」って感じでした。くるまさんと(松井)ケムリさんってとても仲がよさそうですよね。

左から髙比良くるま、VaVa。

左から髙比良くるま、VaVa。

くるま 実際仲いいっすねえ。

VaVa そこが画面越しからとても伝わってきてグッときてしまいました。「Bonita」もBIMと大ゲンカしたあと、仲直りしていく過程でできた曲だったりするので。最近はクルーとして続けていくことの尊さを実感しているんですよね。仲のよさって演じられない。限界があるというか。仲良しな空気がにじみ出ちゃってるのが令和ロマンさんに惹き付けられた理由ですね。

くるま (「M-1」決勝で)ケムリのヒゲ触っといてよかったあー(笑)。

VaVa (笑)。

VaVa これはご本人を前にして言うのは大変恐縮なことなのですが、お客さんの前で自分をさらけ出すという意味では、失礼かもしれませんが、お笑い芸人さんとラッパーって共通点があるのかなって勝手に思わせていただいておりました。表情や動き、マイク一本での勝負。SUMMITやCDSのクルーとよくそういう流れでお笑い芸人さんの話を勝手にさせていただいておりました。

くるま それは確かにありますね。僕ら芸人はお客さんに話を聞いてもらうことが第一。お客さんと、その反応とがセットなんですよね。

VaVa なるほどです……。でも、アーティストはエゴだけのマスターベーションとしても成立できてしまうのが自分は怖いなって思っているので、ライブをする際は気を付けています。楽屋とステージが延長にあるといいますか。本当に芸人さんへの憧れが自分にはありますね。

くるま 僕らは舞台上でもキャラや関係性はあんまりというか、ほぼ作ってませんね。でも意図的にそうしてるというより、漫才しかできないんですよね。以前コントを作って一緒に練習してみたけど、ケムリは自分じゃない何かになるのが嫌すぎるようで(笑)。あの人は何不自由ない幸せな人生を送っているから、別の何かに化けたり、演じたりする必要がないんです。だから今のような芸風になった。今VaVaさんにおっしゃっていただけたことを、よくほかのアーティストの方にも言っていただけるんですよ。でもこっちからすると、ちゃんと練習して、楽器を弾いたり、歌ったりできる皆さんのほうが全然すごい。そう思ってる芸人はかなり多いと思います。千鳥さんやかまいたちさんとお話ししてても、芸人はどこまで行っても俳優やミュージシャンの下って感覚があるようですし。僕らはプロと名乗るには荷物が少なすぎる(笑)。

左から髙比良くるま、VaVa。

左から髙比良くるま、VaVa。

VaVa 僕はその思想そのものがとてもヒップホップだなあ……と勝手に思っておりました。僕はお笑い芸人さんのそういうところをものすごくリスペクトしています。

くるま 一昨日、飲みの席で同じニュアンスのことを言ってもらいました。僕らはお客さんにチケット代の元を取ってほしいと思ってやってるんですよ。でも盛らない。僕らはこういうのしかできないだけなんですけど、「その姿勢がいい。フェアだ」って。言われたときはピンとこなかったけど、今VaVaさんに言われてスッと入ってきました(笑)。こうやってお話ししてると、僕とVaVaさんはお互い通じる感覚があるのかもしれない。