ナタリー PowerPush - 嘘つきバービー
アルバム「ニニニニ」でメジャー進出 異色スタイルの裏側を明かす
現実と妄想を行ったり来たりする、どこか演劇的な歌詞世界、そして、ロックのフォーマットを破壊しながら、どこまでも自由に展開していくバンドアンサンブルによって、きわめて独創的な音楽世界を描いてきた3ピースバンド、嘘つきバービー。彼らがニューアルバム「ニニニニ」でついにメジャーシーンへと進出する。「音楽を好きにならないようにしたい」「楽曲を作るときは、まず登場人物を決める」など独自のスタイルを持つ彼らに、バンドの成り立ちと新作について訊いた。
取材・文/森朋之 インタビュー撮影/平沼久奈
メンバー間で週に1回の“すり合わせ”
──メジャー移籍第1弾アルバムということで、かなり取材も増えてるんじゃないですか?
岩下優介(Vo, B) うーん、どうですかねえ。
千布寿也(G) そうでもないような気もしますけど。
──インタビューって好きですか?
岩下 最近は好きです。前はあんまり好きじゃなかったけど「どんなこと訊かれるか」っていう面白さもあるじゃないですか。
──何を訊けばいいかわかんないところがありますからね、嘘つきバービー。
岩下 はい(笑)。
──えーと、前作「化学の新作」のころは、ライブも含めて「もっと余裕をなくして、緊張感を高めたい」というコメントをしてたと思うのですが。
岩下 うん、そうですね。
──そのモードって、このアルバムにもつながってます?
岩下 はい。緊張感と爆発っていうのは、意識してます。例えば……あ、いや、やめておきます。そこをバラしちゃうのはアレかなって思うので。ライブについては、そこにかける思いが強ければ、1時間くらい緊張感は保てると思いますけどね。
──確かにライブの緊張感、爆発力はすごいですよね。そういう打ち合わせってあるんですか?
岩下 うん、よく話はしますね、よう飲みに行きますし。週1くらいはみんなで集まって、すり合わせっていうか、音楽の話はするようにしてます。
──音楽性について?
岩下 うーんと、1人1人が考えちゃうと、まとまらなくなってくるので。週1くらいのペースで「あれが面白かった」とか。好きなテレビ番組とかでもいいんですけど。
千布 感覚を合わせるっていう感じですよね。
岩下 「このページの中で、付き合うとしたらどいつ?」とか。
──それ、何の雑誌見てるんですか?
岩下 「Zipper」とか。「え、これがいいの?」みたいな。
千布 「お前、そういうところあるもんな」って。
豊田茂(Dr) ハハハハハハ。
音楽の聴き方がわからないんですよ
──(笑)。そういうトークもけっこう大事だったり?
豊田 と、思いますけどね。
岩下 大喜利大会とか。
──落語好きなんですよね。落語家と“対バン”したり。
岩下 そうっすね。お笑いが好きなんで。
──じゃあ、音楽の話は……?
岩下 音楽、ほとんど聴かないですから。
──え?
岩下 音楽を始めるときのとっかかりとして、ゆらゆら帝国とたまを聴いたくらいで。それ以外はほとんど聴いてないですね。あ、あと、対バンした人にもらったCDは持ってますけど。音楽って聴くんですよね……皆さん。
──聴きますね。
岩下 僕ね、聴き方がわからないんですよ。いつ聴いていいのか? とか。あの、音楽を聴くのが嫌いなんです。……いや、嫌いっていうと語弊があるかもしれないですけど。
千布 どっちや。
──(笑)。じゃあ、フェスとか出ても、観たいバンドはないわけですね。
岩下 お祭り感は楽しんでますけどね。フェスはあんま出たことないんですよ。ライジングに出たときは、小さい小屋みたいなところでお笑い的なことをやってて、それは観たかった。
──千布さんと豊田さんは音楽聴きます?
千布 まあ、気になったものを聴く感じですけどね。どこかで流れてて「あ、いいな」って思うこともあるし。
豊田 僕はわりとなんでも聴きます、多種多様に。ロックだけじゃなくて、テクノとかも好きだし。それは自分の趣味ですけどね。
──でも、バンドで音楽の話はしない、と。小説とか演劇のほうが刺激的ですか?
岩下 そうですね。って言っても、そんなに読んでるわけじゃないんですけどね。さっきもほかのインタビューで「どんなのが好きなんですか」って訊かれたんですけど、「え、いや、そんなに……」ってなっちゃったので。
嘘つきバービー(うそつきばーびー)
2002年に長崎県佐世保市で岩下優介(Vo, B)、千布寿也(G)、豊田茂(Dr)の3人が結成した「ロック」バンド。地元・佐世保を中心にライブ活動を繰り広げ、2007年3月に初音源となるミニアルバム「子供の含みぐせ」をタワーレコード限定でリリース。2008年より活動拠点を東京に移し、同年11月に初のフルアルバム「問題のセカンド」を発表する。2009年には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2009 in EZO」に出演し、入場規制がかかるほどの盛況となった。2010年10月には東京と大阪で、落語家をオープニングアクトに迎えた異色のワンマンライブを敢行し、大きな注目を集めた。2011年4月、メジャーデビュー作となるフルアルバム「ニニニニ」をリリース。