オーイシ対ペンギンは「遊戯王」!?
──先ほど堀江さんがされた“リスク”のお話を、もう少しお聞きしたいのですが。
堀江 リスクっていう表現が正しいかわからないですけど、ウチは楽器と歌が好きすぎてしょうがないやつらの集まりなんですよ。もともとそういうメンツを集めたし、みんな練習が好きだし。で、さっきオーイシさんも言っていた通りスキルがすべてだとは思ってないけど、一方で「うますぎて損はない」っていうのもあって。
オーイシ それはそうだね。
堀江 往年のハードロックしかりメタルしかり、スキルによって生じるマッスル感って、それはそれでカッコいいじゃんって。そこにバンドとしてのアイデンティティを感じてる部分はあるんですよ。「いまどき珍しいくらい弾いたろか」って。それはボーカル含めて。そう考えると、いまどき珍しいくらい歌える人が相手だから。
オーイシ そうかな? いや、うん、まあいいでしょう。続けてください。
堀江 オーイシさんがどう思ってるかは置いといて、俺らからすると、純粋な技術と技術のぶつかり合いと言うか、物理攻撃で押し負けるのが一番悔しいんです。
オーイシ なるほどね。そうだ、僕、今回バックバンドを付けるんですよ。
堀江 あ、もうメンバーは全員決まっちゃってます?
オーイシ うん。
堀江 そっか。いや、僕らがやってもよかったなって。
オーイシ マジか!? いや、日程的にちょうどツアー(「オーイシマサヨシ 仮歌ワンマンツアー 2018」)が終わってるタイミングだから、そのままツアーバンドで。堀江くんもよく仕事してるLiSAちゃん関連で言うと、キーボードの白井アキトくんとか。
堀江 おお! 白井さんはヨーヨー(柴﨑)も面識あるよね?
柴﨑 共演したこともありますし、尊敬する先輩です。
オーイシ ドラムは、よく一緒にやってもらってるまっしょい(山内優)くん。
新保 えっ! まっしょいさん!? それこそ物理で殴り合ったらヤバイですよ。
オーイシ よーしよし、ウチもいいメンツそろってるから。なんか、「遊戯王」とかやってるような気分になるね。「俺のターン!」みたいな。
堀江 まっしょいさんは俺が最も信頼するドラマーの1人で、ペンギン以外のレコーディングではいつも発注してる人だから。
オーイシ じゃあ、まっしょいくんをめちゃくちゃ使うようなシチュエーションをたくさん作ればいいんだ。1曲ごとにドラムソロ入れようかな。
堀江 まっしょいさんて、ドラム叩くときはいつも同じドクターマーチンのブーツを履いてるんですよね。それじゃないと気持ちよくペダルを踏めないらしくて。だから本番前にこっそり楽屋に入って、そのブーツを……。
新保 隠すの?
堀江 あるいは若干ソールの厚さが違うブーツにすり替えたり。
オーイシ やめてよ(笑)。あとはギターの奈良(悠樹)くんと、ベースが工藤(嶺)くんだから、人数的にも5対5だ。
神田 マジで強力ですね。
両方好きになってくれたら一番ありがたい
生田 でも僕は、さっき晶太が言ったリスクも感じるんですけど、逆に燃えると言うか。だから対バンまでに自分らを高めるために……どうすればいいんだろう? やっぱもっとリハ入ったほうがいいかな?
オーイシ ほんまに練習好きなんやね。
生田 あと、まだライブでもやってない曲もあるので、それもちゃんと武器として使えるようにしとくとか。
オーイシ ちょっと、そういう秘密兵器みたいなの、やめてもらえます?(笑)
神田 僕ももともとバンドマンなんで、アーティスト同士がお互いの強みを把握しながら、個性と個性がぶつかり合うみたいな部分はすごいワクワクしますね。
新保 ペンギンって、バンドとして純粋なツーマンライブってあんまり経験がないんですよ。特に最近はまったくやってないんで、どういう空気感になるのかっていうのはすごい楽しみだし。あと、お客さんのノリもワンマンのときは違うと思う。
オーイシ そうですよね。僕のファンの方たちは、やっぱりアニソン好きと言うか、それこそペンギンがタイアップ曲とか歌おうものなら、一斉に「キター!」ってなる子が多いでしょうし。
神田 そういう意味でははっきりしてるんで、そこに対して、僕らがどんだけぶつかっていけるか。ただ、客層は違えどシーンとしてはほぼ同じだと思うので、両方好きになってくれたら一番ありがたいなと。ペンギンは「お客さんを選ばない」っていうのを最初っから決めているので、例えば僕らのライブでサイリウムが振られてても何もおかしくないし、僕らだって全然嫌じゃないし。それが、僕らがいつも言ってる「好きに楽しめ」ってことだと思うんです。
オーイシ その姿勢、ホントに大事。
堀江 あの、最近、俺がよく行く駅前のスナックがあってですね。
オーイシ 何、そのめっちゃ面白そうな話。
堀江 もう何十年も前から同じママがやってる店なんですけど、それが、俺が思うエンタメの理想像なんですよ。要するに、二十代の俺が一見で入って1人でカウンターで飲んでてもいいし、友達を連れてってワイワイしてもいい。一方で、横のテーブルには何十年も通ってる常連さんもいて。でも、その間には壁もなければ上下関係もなくて、ママもどんなお客さんに対しても同じように接してくれる。
オーイシ そのスナックのママに教わることいっぱいありそう。エンタメの1つの頂点かもしれないね。
堀江 ホントそうなんですよ。冷やかしで1杯だけ飲んでもいいし、どっぷりボトルキープしてもいいっていう。こっちが深く掘ろうと思えばいくらでもディープな輪に入っていけるみたいな感じがあって。まあ、バンドは接客業ではないけど、お客さんを相手にやってるところは同じだから。
「ペンギンじゃなきゃ」「オーイシマサヨシじゃなきゃ」
オーイシ 正直に言うと、僕はさ、対バンだからといってペンギンに対する戦意みたいなものはまったくないんですよ。なんならそれすらもエンタメかなって。要は、仮に僕が戦意を見せることでお客さんが楽しんでくれるなら、喜んでそのポーズは取りますよと。だからね、みんなの話を聞いて「わあ、こんな俺に、戦意を向けてくれるの?」みたいな。
一同 ははは(笑)。
オーイシ それって長いこと忘れてた感覚だから、すごいワクワクしたって言うか。昔はね、「俺が一番うめえし、才能あるし」って思ってたんですよ。でも今はもう、いろんなものに角が削ぎ落とされて。それこそTomくんとか、周りに天才がいっぱいいるから。そんな丸くなった石ころであるオーイシとの対バンに向けて、そういうギラついた感想をいただけるのは本当にうれしいなって。
堀江 と言っても、僕らはケンカが好きなわけじゃないですよ。
オーイシ わかってる。堀江くん、わかってるから。君らが陰キャだってことは。
堀江 ちょっとでも睨まれたりしたら「すいませんでした」ってなるので。だから、勝ち負けっていうとアレだな……例えば今回の企画で、オーイシさんと一緒にやるバンドが「ペンギンじゃなくてもよかったな」って思われるのだけは嫌なんですよ。
オーイシ ああー。
堀江 逆に言うと「対バンがペンギンじゃなかったらこうはならなかった」っていう状況を作れさえすればなんでもよくて。
オーイシ それが真の戦いだわ。確かに「ペンギンとオーイシでしか実現し得ないステージだった」と、お客さんや、ペンギンの皆さんや、イベントを支えてくれるスタッフさんに思わせられたら、これ以上の勝利はないですね。
堀江 その、ねえ、「君じゃなきゃダメみたい」じゃないけど、「ペンギンじゃなきゃ」「オーイシマサヨシじゃなきゃ」って……。
オーイシ お、急にうまいこと言おうとしてる?
堀江 そろそろ対談もまとめに入る頃かなって。だから、僕らも含めその場にいる人たち全員がそんなふうに思えるようなライブにしたいですね。
オーイシ 素晴らしい。
──実際、ぼちぼちお時間なのですが、当日はPENGUIN RESEARCHの演奏をバックにオーイシさんが歌うセッションもあるとかないとか。
オーイシ あります。と、僕もうっすら聞いています。
堀江 じゃあ、俺らもオーイシさんのバックで演奏できるんだ。あの、「ようこそジャパリパークへ」やりたいです。
生田・神田・新保・柴﨑 俺も俺も!
オーイシ えっ、いいのそれで? 君らロックバンドでしょ?
堀江 ちょうど僕らペンギンなんで。
オーイシ そうか! ペンギンのフレンズとしてね(笑)。まあ、具体的なことはまだ何も決まってないんでね、それは当日のお楽しみということで。でも、きっと何をやるにしても面白いことになる手応えはすでにあるんで、よろしくお願いします!
PENGUIN RESEARCH一同 よろしくお願いします!
- オーイシマサヨシ「Hands」
- 2018年7月18日発売 / ポニーキャニオン
-
[CD]
1350円 / PCCG-70431
- PENGUIN RESEARCH「WILD BLUE / 少年の僕へ」
- 2018年9月12日発売 / SACRA MUSIC
-
初回限定盤 [CD+DVD]
2000円 / VVCL-1290~1 -
通常盤 [CD]
1400円 / VVCL-1292 -
期間生産限定盤
[CD+DVD+グッズ]
2200円 / VVCL-1293~5
- 大石昌良 / オーイシマサヨシ
- 愛媛県宇和島市出身のシンガーソングライター。大学の軽音楽部の仲間である川原洋二、沖裕志と共に1999年に結成したSound Scheduleでボーカル&ギターを担当する。2006年にSound Scheduleが解散してから、2008年にシングル「ほのかてらす」でソロデビュー。2011年にはSound Scheduleの再結成でも話題を呼んだ。またアニメソングシンガー・オーイシマサヨシとしての評価も高く、オープニング主題歌を担当した人気アニメも多数。2015年にはTom-H@ckとのユニット・OxTを結成。2017年7月にはアニメ「けものフレンズ」オープニングテーマのセルフカバーなどを収めたニューアルバム「仮歌」をリリースした。2018年7月にシングル「Hands」を発表する。
- PENGUIN RESEARCH(ペンギンリサーチ)
- 生田鷹司(Vo)、堀江晶太(B)、神田ジョン(G)、新保恵大(Dr)、柴﨑洋輔(Key)からなるロックバンド。LiSA、茅原実里、ベイビーレイズJAPANらの楽曲の作編曲を手がける堀江が生田に声をかけ2015年に結成される。2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューを果たし、3月に1stミニアルバム「WILL」を発表。以降もコンスタントにリリースを重ね、2017年3月に1stフルアルバム「敗者復活戦自由形」をリリースした。2017年11月よりライブツアー「PENGUIN QUEST~お台場に導かれし者たち~」を開催。2018年1月に4曲入りCD「近日公開第二章」を発売し、7月に初の東京・日比谷野外大音楽堂ワンマンライブを行う。
2018年7月9日更新