UNISON SQUARE GARDEN「kaleido proud fiesta」インタビュー|フィナーレから8年、再び始まる「TIGER & BUNNY」とのストーリー (2/2)

気楽にできる要素がないとバンドは続かない

──カップリング曲についても聞かせてください。「ナノサイズスカイウォーク」、これはタイバニとは関係はない、書き下ろしの曲ですか?

田淵 そうです。書き下ろしというのか、日々作っている曲の中から今回のシングルに適したものを選んだ感じですね。

──これがまた表題曲とはまた全然違う、ソリッドでシンプルで、スリーピースの迫力が剥き出しのロックチューンですね。

田淵 こういう、楽に作れる曲がカップリングには許されるというか、逆にこれが許されないとロックバンドとしては大変なんですよね。僕も全部が全部、めちゃくちゃコードに凝りまくった曲を作りたいわけではない(笑)。「普通にギターを弾いてたらできますよ」ぐらいの曲が許されないとロックバンドとして楽しくないので。カップリングには、今後そういう曲が増えていくんじゃないかな?と思いますけどね。

──いいと思います。表題曲との対比もより鮮やかになるし。

田淵 それと、この手の曲を好きな層も当然いるんですね。我々はただ3人でステージに立って演奏するだけのバンドなので、もともとこういう曲が好きでやっていたし、今もそれが許される場所があって、恵まれているなと思います。

──歪みまくりの、リフ一発でぐいぐい行くギターがカッコいい。斎藤さん、こういう曲は?

斎藤 好物です(笑)。さっき言った「肩の力を抜こう」の極みみたいな曲ですね。僕はいつも、ライブで使っている機材はレコーディングでほとんど使わないんですけど、これはライブで使っている白のストラトキャスターのATELIER Zで、あまり神経質にならずに弾きました。ギターソロもすごく適当にやったんですけど、そういうときに限って、田淵がすごい気に入ってくれるんです。

田淵 いいギターソロなんですよ。大好き。音色も含めて。

UNISON SQUARE GARDEN(Photo by Viola Kam[V'z Twinkle)])

UNISON SQUARE GARDEN(Photo by Viola Kam[V'z Twinkle)])

斎藤 やっぱり、根を詰めすぎてもいいことないなと思うんですね。詰めたほうがいいときもあるんですけど、それだけだと視野が狭まっちゃうなということに最近は気を付けているんです。

田淵 本気を出すと根を詰めちゃうんですね。実際カッコよくなるし、形式通りの「いい曲」はできるんですよ、メロディにしても演奏にしても。でもそういうことばかりやるのは、ロックバンドが本来やることとはあんまり思ってないし。僕らが大事にしているのは、ライブのステージに立ったときに目の前にいる客で、一緒にライブを楽しむ人たちなので。それと、凝った曲とか形式通りのいい曲を作ることとは、別問題なんですよ。

──わかります。

田淵 だけど、リード曲になるとか、アニメのタイアップ曲を作りますとか、そういうときは「根を詰めないとカッコつかないよな」という方向にスイッチが入るんですね。そういう、いろんな顔を持ちながらやれているのが、いいバランスだなと思います。

──それは理想的だと思いますね。それと、「ナノサイズスカイウォーク」の歌詞って、サイエンスやヒストリーや、学術的な言葉が多くちりばめられているじゃないですか。ナノサイズ、電子、大気圏、次元とか。不思議にマニアックな世界観で、面白いなあと思ってます。

田淵 知識的に披露したいものは全然なくて、これは本当に、さらさらっと出てきた言葉で作ったものです。僕の中に世界観や絵はあるんですけど、それを明文化することは音楽の中では必要ないと思っているし、そういう、外から見るとよくわからない要素で成り立っている曲が、僕は非常に好きなので。

──なるほど。

田淵 でもこういう曲をいまだに書き続けられることが、すごく気楽です。気楽にできる要素がないとバンドが続かないと思うし、使命感を持ってやればやるほど、バンドって寿命が縮まるんじゃないの?と思うところもあるので。そもそも我々が最初に何がやりたかったのか?と言うと、ステージででっかい音を出してライブができればOKということで。でもその最初の目的がなくなっていくほど、使命感の割合が大きくなるほど、疲れちゃうと思うんですよね。そうならないためにどうするの?ということを、わりと考え続けている十何年なので。そういうときにこういう曲を何も考えずに書き、ライブでやると楽しいという、これって大事なんですよね。

──なるほどなあ。すごくいい話。参考にします。

斎藤 ふふふふ。

──いや真面目な話、どんな仕事にもその考え方は通じることだと思うので。使命感と肩の力を抜くときのバランスですね。いい話、聞けました。ちなみに「ナノサイズスカイウォーク」の歌詞のテーマは、僕的な解釈だと、電子レベルでは君も僕も同じだよという、大きなラブソングだと勝手に思ってます。

田淵 いいですねえ。どんどん深読みしてください(笑)。

UNISON SQUARE GARDEN

UNISON SQUARE GARDEN

「うわー楽しい」はバンドとして一番大事にしなきゃいけないこと

──そして今年はこのあと、どんな予定でバンドは動いていきますか。

田淵 4月に「fun time HOLIDAY 8」をやって、夏にシングルのツアーをやります。毎年一緒ですけど、曲を作ってツアーをやるだけなので、今年もそれがメインになるんじゃないかな。今回みたいに「アニメのタイアップでシングルを出します」ということが、ここ数年ではむしろイレギュラーなことなので、そこに関しては1年前から一生懸命準備をしていましたけど。それ以外は普通にライブで全国を回って、「今年も楽しかったな」で終わっていくのが、通例通りかなと思っています。

──バンドはいい状態ですね。

斎藤 そうですね。いい感じなんですけど、波がある中のいいところと言うよりは、ずっといい感じでムラがない。特にライブは、3人そろって音を出すとそれぞれの気持ちに多少ムラがあったとしてもチャンネルが合う感じがあって「うわー楽しい」ってなれるから。それはバンドとして一番大事にしなきゃいけないことだし、今も存在していることが強いなあと思います。

──あえて先走って聞くと、次のアルバムの構想などはもうあったりするんですか?

田淵 「Patrick Vegee」のツアーをやっている間にだいたい次の構想はできたので、そのうちできるんじゃないかなと思います。それも別に急いではいないというか、これだけキャリアのあるロックバンドには、ライブに新曲が絶対に必要ともそんなに思っていないので、気が向いたら書けばいいかなと思っていて。気が向いたから今回のシングルを書いたので、アルバムも気が向いたときにレコーディングしてリリースするのではないでしょうか(笑)。

UNISON SQUARE GARDEN(Photo by Viola Kam[V'z Twinkle)])

UNISON SQUARE GARDEN(Photo by Viola Kam[V'z Twinkle)])

ツアー情報

UNISON SQUARE GARDEN「TOUR 2022『kaleido proud fiesta』」

  • 2022年7月8日(金)千葉県 市川市文化会館
  • 2022年7月10日(日)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール
  • 2022年7月15日(金)岡山県 岡山市民会館
  • 2022年7月16日(土)鳥取県 米子市公会堂
  • 2022年7月18日(月・祝)山口県 スターピアくだまつ
  • 2022年7月24日(日)東京都 NHKホール
  • 2022年7月26日(火)大阪府 フェスティバルホール
  • 2022年7月27日(水)大阪府 フェスティバルホール
  • 2022年7月30日(土)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
  • 2022年8月5日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2022年8月6日(土)奈良県 なら100年会館
  • 2022年8月10日(水)群馬県 高崎芸術劇場
  • 2022年8月11日(木・祝)新潟県 新潟県民会館
  • 2022年8月20日(土)岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
  • 2022年8月27日(土)岐阜県 長良川国際会議場
  • 2022年8月28日(日)愛知県 センチュリーホール
  • 2022年8月31日(水)埼玉県 川口総合文化センターリリア
  • 2022年9月3日(土)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2022年9月4日(日)広島県 JMSアステールプラザ
  • 2022年9月10日(土)長野県 ホクト文化ホール 中ホール
  • 2022年9月14日(水)宮城県 トークネットホール仙台
  • 2022年9月17日(土)愛媛県 松山市総合コミュニティセンター
  • 2022年9月20日(火)東京都 府中の森芸術劇場 どりーむホール
  • 2022年9月23日(金・祝)茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)
  • 2022年9月27日(火)東京都 東京ガーデンシアター

プロフィール

UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)

斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビュー。2015年7月に結成10周年アルバム「DUGOUT ACCIDENT」をリリースし、東京・日本武道館で初の単独公演を成功させた。2019年7月にはカップリングベストアルバムとトリビュートアルバムを同時リリース。さらに大阪・舞洲スポーツアイランド 太陽の広場で結成15周年ライブ「プログラム15th」を開催した。2020年9月には8枚目のオリジナルアルバム「Patrick Vegee」を発表。2022年4月にNetflilxアニメ「TIGER & BUNNY 2」のオープニングテーマとなるニューシングル「kaleido proud fiesta」をリリースした。