音楽ナタリー Power Push - UMI☆KUUN

メジャーシーンに現れた愛すべき“ウザやか”男

昨年4月、ニコニコ動画に初投稿した「Let It Go ~ありのままで~」の“歌ってみた”動画がカテゴリーランキング2位を獲得し、一躍注目を集めた男性シンガーソングライター・UMI☆KUUN。自然豊かな愛媛県で生まれ育った彼は、名門音楽大学入学を機に上京するも、ほどなくして引きこもり生活に突入。曲作りやゲームに没頭する日々の中で、自分が表現したい音楽や世界観を追求していったという。

そんな一風変わった経歴を持つ彼が、今回、アニメ「ヤング ブラック・ジャック」のオープニングテーマである「I am Just Feeling Alive」を冠したシングルでメジャーデビュー。幼少期からのヒストリー、楽曲について聞いた今回のインタビューでは、愛すべき“ウザやかキャラ”全開のトークが展開された。

取材・文 / 川倉由起子 撮影 / 福岡諒祠

一番影響を受けたのは「もののけ姫」

──UMI☆KUUNはこれまでどんな音楽を好み、どんな影響を受けてきたんですか?

UMI☆KUUN

人生で一番影響を受けたなと思うのは、小学生のときに観た映画「もののけ姫」です。美しい音楽と映像の融合がすごいなと思って、初めてアニメに感動して泣くという体験をしたんですよ。特に印象的だったのは、クライマックスのアシタカが旅立つシーン。あの壮大な世界観に本当に心をつかまれました。それで母親に「もののけ姫」のピアノの楽譜を買ってもらって、自分でも演奏して楽しむようになったんです。

──資料によると、ピアノは3歳から習っていたそうですね。

はい。でも自主的に弾くようになったのは、「もののけ姫」に出会ってからだと思います。その後は「聖剣伝説」というゲームを好きになって、またしてもグラフィックとシンフォニックな音楽がマッチングした世界観に感動しまして。

──映像か音楽のどちらか一方だけでなく、両方が融合したものが好きなんですね。

そうなんです! 単体で楽しむよさもあると思うんですけど、その2つがマッチした相互的な作用に昔からつい惹かれてしまうんですよ。小、中学校時代は友達が放課後にサッカーとかして遊ぶ中、僕は早く帰ってゲームしたいな、ピアノ弾きたいなーみたいな。大人数で遊ぶより1人で没頭するのが好きでしたね。

──高校卒業後は東京音楽大学へ入学したそうですね。愛媛出身のUMI☆KUUNが、なぜ東京行きと音大を選んだんですか?

ジブリやゲームの音楽に限らず、J-POPやヴィジュアル系などいろんなジャンルを聴いていたので、進路を決めるときに漠然と「音楽やりたいな」って思って。あと、とにかく東京に行ったらワンチャンスあるかなっていう(笑)。

──あはははは(笑)。私もそうですが、やっぱり地方出身者は夢見ますよね。

ね(笑)。で、親に相談したところ、教員の父から「東京で音楽をやるなら大学で教員免許は取ってほしい」と言われまして。本当は専門学校とかでギターとかDTMも学びたかったんですけど、親を説得するには音大しか選択肢がなかったんです(笑)。

引きこもり生活で本当にやりたいことを再確認

──やむを得ず音大を選んだとはいえ、それで入学できてしまうとはすごいですよね。専攻はやっぱりピアノだったんですか?

いや、それが声楽なんです。小さい頃からやっていたピアノで最初は受けようと思ったんですが、愛媛で有名なピアノの先生に見てもらったら「お前には絶対無理だ!」と言われてしまって。しかも、それにしょげていたら、翌日なんと体育で指を骨折してしまって……。

──わー、それは災難でしたね。

UMI☆KUUN

はい。でも、同情した高校の先生から「声楽なら1~2年死ぬ気でがんばればどこかの音大に入れるかも」と提案があって。今度は声楽が専門の先生のところへ行ってみたらいきなり「君は才能があるよ!」と言われたんです。

──まさかの展開!

はい(笑)。で、スパッと声楽に方向転換し、本気でクラシックやオペラなどを学んで、どうにかこうにか東京に出てくることができたという次第です。

──音大ではどんな学生生活を送っていたんですか?

意気揚々と上京してきたところまではいいんですけど、入学後、すぐに引きこもり状態になってしまって……。

──何があったんでしょう?

東京!音楽!っていうミーハー心満載で出てきて、その後のビジョンがなかったのも悪いんですけど、周りとレベルが違いすぎたんです。幼稚園からバイオリンを1日何時間もやってた……みたいな人ばかりで、「モーツァルトのあの旋律がいいよね」みたいな話をするんですよ。もうカルチャーショックに陥って。

──リアルに「のだめカンタービレ」の世界ですね。

そんな感じです。9割が女性で、みんな服装もきっちりしてて。僕なんてサンダルに短パンで行ってたので、「何あの小汚い子」みたいな感じですよ(笑)。で、これはもう学校行けないなーって感じになってしまったのがきっかけですね。大学1年の7~8割はずっと家にいました。

──引きこもり中、家では何をしていたんですか?

パソコンで音楽を作るソフトや機材に没頭したり、アニメを観まくったり、オンラインゲームで遊んだり。眠くなったら寝て、起きたくなったら起きて……っていう腐りかけた生活でした(笑)。ただ、そんな中で深夜アニメやその音楽に心救われることが多々ありまして。そのたびに「やっぱり自分は音楽と映像が融合した世界が好きだな」って、初めて「もののけ姫」を観たときの感動がよみがえってきて、その分野でがんばりたい、そういうものを生み出す側の人になってみたいという気持ちが湧いてきたんです。

──作品を受け取って楽しむ側から発信する側に回りたいと。

はい。昔からずっとあった気持ちではあるんですが、年齢を重ねるうちにその思いがだんだん強くなっていきました。

メジャーデビューシングル「I am Just Feeling Alive」 / 2015年10月28日発売 / Being
初回限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / JBCZ-6031
通常盤 [CD] / 1000円 / JBCZ-6032
CD収録曲
  1. I am Just Feeling Alive
  2. HELLO BABY
初回限定盤DVD収録内容
  • 「I am Just Feeling Alive」MUSIC VIDEO
UMI☆KUUN(ウミクゥン)

UMI☆KUUN

愛媛県出身の男性シンガーソングライター。2014年4月、ニコニコ動画に初投稿した動画がカテゴリーランキング2位を獲得する。同時期にYouTubeにも自作動画のアップを始め、YouTuberとしても認知度が急上昇した。2015年7月にフランスで行われた文化イベント「JAPAN EXPO 2015」でオフィシャルレポーターを務め、8月にタイで行われたイベント「Tokyo Crazy kawaii」の広報宣伝部長に就任するなど海外からの注目度も高い。同年10月、アニメ「ヤング ブラック・ジャック」のオープニングテーマ「I am Just Feeling Alive」をシングルとしてリリースしCDデビューを飾った。